2000年にリリースした『Electric Treatment』で、ヒップホップというユニティの中では国境など存在しないことを証明してみせた鬼才、Ambivarence。広島在住のプロデューサー(音楽家)である彼は、日本のみならず、UKやUSのアーティスト、クリエーターたちとコネクトし、“Rebellion”を旗印にFive Man Armyなるニュー・プロジェクトを立ち上げた。

単なるインダストリーではなく、しかもパーマネント・メンバーのみで構成されるグループでもない、そのレーベル/アーティスト(・ユニット)の初アルバム『Five Man Army』に触れてみれば、筆者が何を言わんとしているか判って頂けるだろう。そこにある“共同体意識”、それを生んだAmbivarenceの大きな弧を描く“エモーション”…。EL-P、K-Bomb、Moochy、Rebel Familia、Aoki Takamasa、Numb、Buckshot、Cocoa Brovaz、Sora 3000、ここに終結したアーティストたちが見せる最高のパフォーマンスが決して見せかけではないことが全てを物語っている。ここにある未来の音響は、決して他人事ではない。

前作(アルバム)をリリースして改めて気付かされた事は何ですか?
Ambivarence(以下A):余裕じゃん、って思った。世界中で20カ国くらいなのかな。 ソニー・インターナショナルでのプロジェクトみたいだし、前例がないとか言われるし…。シャーデーと同じ所じゃんとか驚いたけど、僕の音がスウェーデンとかスイスとか香港、アメリカ…一番反響があったのが、パリとベルリン。東欧なんて行った事もない国から凄く理解してくれてるコメントや質問が届いてびっくりしたけど、「そうだよね、分かるよね」って凄く近い感じがした。マッドなエモーションだって言われるのは凄く分かるし、ドキッとするくらい本質を嗅ぎ取ってて「スゲーな、伝わるんだな」って思った。

Five Man Army(以下F.M.A.)のプロジェクトの元/源となったものは何ですか?
A:1997年にロンドンで始まったシナリオ通りです。凄くラフなシナリオだけど、ラフに進行中です。マルジェラがやってる事にシンパシーを感じてる。

F.M.A.は既に一つの大きな、そして本来的な“メディア”となっている思うのですが…。
A:アーティスト・サイドのレーベルですから、ほんとに好きな事だけやってられるレディーメイド(既製品)な物にはしたくないし、グラフィックや映像、ノベル、Mode、その時やりたい事を自由にやる。Eda、Delta、Kami、Rammellzee、Burn Stormerss、Tricky、Mad Proffessor、Prodigy Of Mobb、Ega、Mad Gungoose…空気を共有出来る人たちとやりたいようにやっていきます。

アルバムとしてのコンセプトはどう考えられましたか?
A:地球上で最新鋭のエモーション。

全体を通じて感じるのは、距離感の無さ、共同体としての意識の強さであり、これは珍しい例と思うのですが…。
A:そう言ってもらえると嬉しいです。意識の強さというのが、世界中のコアとの距離をなくしているんだと思います。柔らかな音にも鋭利なエモーションを感じる人たちがいる、無心で音を浴びれば、みんなに伝わるはず。確かにこれまでになかった出来事ですね。だから面白いし、センセーショナリズムを楽しんでるんです。マックイーンやマルジェラがよく使う言葉ですけど、彼等がやってる事はお茶の間にこびをうってるわけじゃない。形は全然違うけど、僕達もマーケットを無視したオリジナルな“乱”をやってる。

音楽を作り発信する上で、一番大切にする事は何ですか?
A:本能的にラフにやること。風通しのいい官能的な空気、マーケットに媚びない事、都市の痛みや第三世界の痛みだけがリアルじゃないって事。今世界中で起きているアンダー・カヴァー遺伝子操作による革命、25世紀に生きてるかもしれない僕達。今、凄くクレイジーな時代に生きてると生々しく感じる事を音に反映してる。

ここには、決して一方通行にならない真のコア・カルチャーの機能があると感じたのですが…。
A:ほんと嬉しいです。日本でそういう評価が連鎖していけば、何かが始まると思ってます。日本でのみ評価される音楽家なんて嫌だし、日本はホームなわけだから、面白くしていきたい。二木さんもレーベルを始めるくらい“動く”人だから、共鳴する所があるんだと思います。新しい事を動かせる勇気やビジョンを持った人が増えれば、僕も一人のリスナーとして楽しくなるはずだと思ってる。

F.M.A.にとっての次なる計画は何ですか?
A:F.M.A.のセカンドコモーションをやってます。EL-P Recloose辺りが始まってます。秘密ですけど、凄い面子が揃ってます。http://fivemanarmy.jpではいろんなアーティストのムービーが始まります。アーティストの生々しい言葉が聞けるはずです。

あと、Mad ProfessorやHorace Andyのリミックスをやったりしてますね。それからMad GungooseというAmbivalence +Sasanuma(Sly Mongoose)で新しいチームを始めてるので、近々、ネオ・ロッカーズのルーディーな音を届けられると思っています。それとマッシュルームとはマッシヴ・アタックを抜ける以前からですから、3年掛かってる新作の計画があります。彼とはよく話しますが、やばいムードが凄くかっこいい人で、今やってるビートはほんとやばいです。いつも時間が掛かっちゃうけど、期待してて下さい。






"Five Man Army"
Five Man Army
[Five Man Army / FMAR-001]