2003年6月号


Lee "Scratch" Perry at Ariwa

Greetings Friends,

20年以上も前にファースト・アルバム『Rasta』をリリースした、著名で勤勉なBenjamin Zephaniahは、同サブジェクトを扱い先日放送されたBBCラジオ4の2回シリーズの恰好のプレゼンテーターとなった。文学の名誉博士号を授与され、今やDr.Benjamin Zephaniahとなった彼は、未だ探索の余地の残された、ラスタマンのスピリチュアルで哲学的、そして文化的な側面を取り上げ、豊富なインタビューや毎日の“ライヴィティ”についての類い稀なる洞察を含む素晴らしい番組だった。Zephaniahは他の番組にも驚くほど頻繁に登場しているが、その啓蒙的でリアルな放送が制作されない時期には、彼は難民の子供達が詩の本を出版する手伝いをしたり、ディスカッションの対象となる多種多様なトピックに対し博識で聡明なコメントを提供している。長年の苦労の末、Poet Laureate(桂冠詩人)候補としてノミネートされた彼に現在の報いは、受けて然るべきだろう。

明らかに緊張感に欠けた競争ではあったものの、今年のレゲエ・グラミー賞はLee "Scratch" Perryが受賞した。果たしてこの賞が、これまで確固たる評判を手に入れてきた宝箱のような彼のプロダクション・ワークに対するものなのか、それとも現在の彼の状況に対するものなのかはわからない。もし前者に対し、というのであれば答はイエス。しかし後者だったら声を大にしてノーだ! 彼に関してはメディアでの人気が先行し、残念ながらただでさえ寡作な近年の作品のクオリティが二の次になってしまっていると思うのだが。

レゲエ界には悲しい知らせやバッド・ニュースが頻繁過ぎるほどにあるのだが、今月もまた悲しいお知らせを伝えなければならない。シンガー兼DJのScottyことDavid Scottが、52才という比較的若い年齢で前立腺ガンにより他界した。Derrick Harriottに発掘されたTheChosen Fewのかつてのメンバーであり、とても気立ての良かったScottyは、90年代に入ってもなおファンの支持を受け続け、リバイバル版Heineken Startimeシリーズや他のヴィンテージ・レゲエ/ロック・ステディを祝うギグ等に参加していた。遺憾ながら、またしてもレゲエの殿堂に更なる故人の名前が追加することになってしまった…。

何世代にも渡るジャマイカン・ミュージックのスター達にとっては実質的な養母と言うべき、ダウンタウン・キングストンにあるAlpha Boys Schoolのシスター、MaryIgnatiusもまた、長い闘病生活の末に81才で他界した。昨年UKで放映された、Courtney Pineをフィーチャーした特別番組に出演した彼女は、自らが世話した生徒達の中から多種多様で豊かな才能を持った人材が輩出したことを心の底から誇りに感じていると語っていた。Tommy McCookやDon Drummond、Leroy SmartやYellowmanまでが、彼女の音楽指導の恩恵を受けたのだ。彼女程の指導者が現れるのはもはや有り得ないことだろうし、ジャマイカン・ミュージックの進歩を陰で支えた重要な人物として彼女の死はこの上なく大きな損失であるが、誰かが彼女の半分でも後継していってくれることを期待し祈ることにしよう。

数ヶ月前にBeres Hammondがレゲエ・チャートを独占していることについて触れたが、現在彼を抜いてトップを走るのがダンスホール・シンガーから国際派スターとなったSean Paul。VPとAtlanticの契約により彼の方向性はクリアになったように見える。UKのレゲエ・チャートに既に定着した夥しい数のチューンに加え、Busta Rhymesを迎えた最新ヒット「Make It Clap」もチャート・インしたが、同曲はまたTop 40でも健闘することはまず間違いないであろう。

若きPaulの足跡を辿ることを期待しているのが、彼とは同じ会社からの競争相手となるWayne Wonder。既に15年のキャリアを持つWonderであるが、仲間のBrianやTony Goldと同様、ふんだんなレコーディングやステージ経験を積んでいるので準備は万端と言ったところか。実際、VPからの最新シングル「No Holding Back」では、より幅広い層からの賞賛を受けて彼の地位が不動のものとなるに違いない。彼の時代(そして他の時代も通じて)の所謂若手シンガーの中でベストの一人と数えられてきたWonderであるが、もう誰もが使い回した同じリズムの上に更なるカヴァー曲を歌わずとも、今や一緒に仕事したい相手や場所を要求できる立場になったということだ。

50年代スタイルの元TVプレゼンテーター、Mark Lamarrが国営のラジオ2における唯一のレゲエのレギュラー番組の声を担当していただけでもうんざりだというのに、何と今度は彼は伝説のプロデューサーであるDuke Reidのマテリアルを含むTreasure Isleのコンピレーションにまで自身の名前を冠することになってしまった!『Mark Lamarr Presents Duke Reid, The Trojan Nuclear Weapon』はリパッケージ音源を売るための単なるマーケティング策略でしかないのだが、これは『High Explosion; DJ Reggae 70-76』や『Crown Prince; TheBest Of Dennis Brown』などと並びTrojanの最新リリースの一つである。言っておかねばならないが、彼らはまだまだ豊富な音源を抱えているはずなのに、未だ音楽の再生産ばかりを続けている状況が改善されないのは嘆かわしいことだ。これなら半分擦り切れた45回転盤を聴いていた方がマシだと思うかもしれない…。  Till Next Time, Take Care And Protect Yourselves....

 It's A Crazy World....


(訳/Miyuki W. Myrthil)

Wayne Wonder, Dillinger and Trinity