MIX TAPE
1. Blueberry Overdoze / Seven Inch Freaks(Black Smoker)

全ジャンルで今一番面白いテープ・シリーズは?と訊かれれば、“ブラック・スモーカー・レコーズ”からのブツ、と答えるしかない。それくらい圧倒的なアイディアとクオリティがココにあるから。昨年シンク・タンクに強引に加わったというこの謎の多きDJ=ブルーベリー・オヴァードーズの新作テープも、またAK-47やKiller Bongのテープと違った意味で“黒い”。そして煙い。その内容はルーツを基本とする“レゲエ”。意味深な声ネタからピュンピュン、SEも駆使しつつ、スパイシーな音空間が拡がるミックス…。“選曲”だけでも十分ヤバいのに…。

ALBUMS


2.The Diplomats / Diplomatic Immunity (Def Jam)

キャムロンを中心にジュエルズ、サンタナ、ジミー・ジョーンズ、フリーキー・ジーキー等で構成されるNYはハーレムを基地とするプロジェクトの初アルバム。既に、マスター・Pとの「Bout It Bout It Pt.3」や、スターシップ・ネタの「Built This City」、そしてマーヴィン・ゲイ「Let's Get It On」使いの「Let's Go」や「I'm Ready」、そして「Dipset Anthem」、またキャムロン「Hey Ma」のディップセット版リミックス、とヴォリューム。タイトルからしてもう“やりたい放題”だが、言うだけのことある内容度だ。ジャスト・ブレイズ他、売れっ子プロデューサーたちの仕事ぶりも◎。サンタナは更に人気出そうな感じ。
3. DJ PMX / Death Row Mixed Classics (Victor)

『bmr』監修のナイスなコンピが2発続いたと思ったら、次は世界初となるミックス・アルバムが…。その黄金のカタログ/クラシック・チューンをセレクト/ミックスするのは、ご存知DS455のDJ PMX(因みにDSのライヴ中心のDVD作品もリリースされたばかり!)で、メガ・ミックス調のイントロから「To Live And Die In L.A.」で始まり、ドクトクの“波”を作る構成にヤラレっ放しの逸品に。イントロを除く全31曲は、誰でも知ってるメガ・ヒットのみならず、裏クラシック等もバッチリ配合されていて、このレーベルのスタンスもキッチリ伝わるもの、となっている。更にハマれる一枚。因にザ・ロウから再び、“デス・ロウ”に名前も戻ったかと。
4. Curse / Vom Feinsten(Bad News)

以前にも“ショウダウン”の音源を日本に紹介した“マイク・ライフ/バッド・ニュース”より、本国でとてつもない人気を誇るリリシスト=カースのベスト盤が登場。あのウォーキン・ラージと同じマネージメント会社に属し、“ジャイヴ”から2枚のアルバムをリリースした他、ウータンクランとのレコーディング経験もあるこの驚異の22才は、母国語にひたすら拘りドイツのヒップホップをレペゼンしている。バトル・リリックだけでなく、社会問題から身近なことまでをディープに聴かせ支持を得た、というそのスタイルは対訳でも味わえるが、その流れるようなフロウの気持ち良さと、90年代中盤をレミニスするサウンドに乗らない手はないというもの。偏見を捨ててトライして欲しい。
5. Pase Rock / Bullshit As Usual (Dimid)

ファイヴ・ディーズのリーダー=ペイス・ロックの初ソロ作。己のリリカル哲学がハッキリしている上に、他のアーティストの分析も得意でジャーナリストとしての作品だけでは収まり切れなかった様で…。“ハイド・アウト”(コンピももうすぐ!)のヌジャベズを中心に、ファット・ジョンやDJクワイエットストームにデミ・デム(グルーヴ・アッタック)らもトラックを提供した本作には毒舌家であり、またユーモアも人一倍のムード・メーカーである人柄が良く出ている。ヒネクレてるのにホップ? 正にジャケ通りの世界観。面白いよ。
6. V.A. / Deli Presents チカチカ 秘 大作戦(Cutting Edge)

Nitroのデリが率いる“チカチカ・プロダクション”のショウケース・アルバム。“えん突つ”のコンピにも参加している覆面プロデューサー・チーム=チカチカ病院やアクエリアス(ヤッコ+デリ)、マッカチンといったチカチカならではのバリエーション、ディープさは言うに及ばず凄い(下世話なフレイヴァー満載で総天然色的なエグ味が…)が、デリ、ミクリス、マッカチン、ゴアテックス、ゴッチ、カシ・ダ・ハンサムらMCのカラー(持ち味)がこれでもか!というくらいに発揮されたトピックの数々にヤラレる。悪趣味でOK.的なヒップホップの逞ましさ=カッコ良さが丸見えな強力盤。
7. 瘋癲 / Music Is Expression(Next Level/File)

京都を拠点に活動を続けるヒップホップ・バンド(と敢えて呼びたい)瘋癲の待ちに待ったフル・アルバム『Fu-Ten』。「Ticket To Ride」や「For My People」といったライヴでお馴染みの曲を中心に、これまでの音源からだけでは計り知れなかった幅広いテーマを持つ楽曲が並ぶその世界観は、“瘋癲”という名前そのもの。つまり“音楽”を第一義に、それぞれ全てを証明する彼らの人生がここに刻まれている、という訳だ。ミリとB-バンジーのダイナミックな表現力、そしてセンシティヴなM.フジタニ、DJスワのトラックの一体感。このタイトさは類を見ない。必聴。
8. Micadelic / Itself(Victor)

ビクターに移籍しての最新作。ヒップホップ“まんま”を意味する題目に、その意識の確かさと敷居の低さを見せつける本作は、全曲がライヴ対応(スクラッチもほぼ全曲に)で、エナジー大放出、ネタてんこ盛りの大出血サービス盤に。ダースレイダー、真田人のフリーキーなプロラップに、アルファ、Q、ハンガー、ヒデンカらゲストの絡みもかなり美味で、ファンク入道、DJオショウ、DJイタオの他、GP、ハイ・スウィッチ、DJミツ・ザ・ビーツも参加したビーツもマンゲ鏡のよう。破壊と創造の果てがギッチリ。「地球最後の日」も笑った。
9. E.G.G Man / Project : 141-3(Mary Joy)

ソウル・スクリームのMC=イジジマンの1stソロ・アルバム『Project 141』のバンド・アレンジ・ヴァージョンが早くも到着。イジジマンの姿勢に共鳴した共同体=ハイカレント・ヴァイブスがフル・サポートした11曲は、オリジナル版とはまた一味も二味も違った表情が出ていて、ヴァイブスの高さも発揮されている。ライヴ・セッションさながらのラップ・パートの弾け方、スキルフルなパフォーマンスが楽しめるのは言うまでもない。因に「探心音」はDJセロリ・リミックスのバンド・ヴァージョン。
10. Mイルリメ / 鴎インザハウス(Musicmine)

アンダーグラウンド・シーンの中でも異彩を放ち続けるシアトリカルなアーティスト=イルリメの3rdアルバム。ヒップホップ・ファンのみならずエレクトロニカ方面からも評価されるドクトクのポップ・センスは更に研ぎ澄まされ、ラップ(ヴォーカル)はよりシアトリカルに。トラックも全曲セルフ・プロデュースで、オリジナルな言語感覚が100%活きた仕上がりに。「オープニング」からの全14曲、片時も耳を離せないイルリメの技量には改めて感服(まるで良く出来た絵本のよう)。ダブ・アルバム付、というのも面白い(『流星より愛をこめて』に続く)。

SINGLES
11. Zeebra / Supatech [What's My Name?](Futur Shock)

「Big Big Money」に続く最新チューン「Supatech」。48手揃えたスーパー・テクニシャンを表すスーパーテクとはつまりジブラそのもの。去年から出る幕増えまくりの大注目のトラック・メイカー=D.オリジヌー(aka DJダイ)の手による華のあるビートに乗せて、自らの名をコールさせる辺りもニクい、正にフロア着火型アンセム。押さえ気味のフロウもまた新しい。カップリングはお馴染みDJコーヤ&ダイスによるリミックス。これがまたオリジナル・ヴァージョンとは別解釈のフロアライクな仕上がり。
12. IQ / 夢持って生きてっか?(New Deal)

期待のニュー・レーベル、ニュー・ディールよりコンピレーション『Show And Prove』と同時発売となったシングルは、元フュージョン・コアのIQ待望のソロ。その一声で針付けにさせる“声”の効力は更に眩しく、“夢、希望、勇気”をサブジェクトにした「夢持って生きてっか?」では、流麗なトラックの上で抜群の疾走感を見せている。DJナル・プロデュースによるハートで聴かせる好曲。また盟友グラップラズが参加した「May Storm」では、ヴェテラン=DJタイキのビートで春の嵐を起こす。アルバムも楽しみ!