指一本のジャケに込められた「One Blood, One Nation, One Unity and One Love」のメッセージ。Roots & Cultureなスタイルを究極のダンス・ミュージックとして聴かせる超ヘヴィー級サウンド=Cultivatorが混迷を極める世界に問うフル・アルバムが遂にリリース!

 タフ・セッションという日本のロック・ステディ・バンドをご存知だろうか? まだ無名だが、これから絶対に人気が出るはずだと私は確信している。先日、知人の誘いで偶然ライヴを観ることになったのだが、なんの予備知識もない私でもスッと音のなかに入り込める、実にいいライヴだった。

中心人物である内田コーヘイ(vo/violin)には人を引きつける不思議なカリスマがある。彼は町田にあるDJバー・ルーツの店長でもあり、ブルー・ビート・プロダクションの一員でもある。ということは後で知ったのだが、タフ・セッションのバックグラウンドに、彼のレゲエやソウルに関する豊富な知識が反映されていることは間違いないし、ロック・ステディのゆったりとしたリズムを、ゆるやかに、しかもきっちり締めるところは締めて演奏するバンドの実力はしっかりしている。

だが、それ以上に印象に残るのは内田コーヘイの書く歌詞だ。フライング・ハイからリリースされたミニ・アルバム『Tuff Session』の1曲目、「ガリオソング」を聴いてみてほしい。出だしからして「君となら/いつまでも/この世界が/終わるまで」だ。内田のまっすぐすぎるぐらいにまっすぐな言葉と発声には、思わずブルーハーツを連想してしまった。牧歌的というか夢見る少年というか、「このご時世になにをのんきなことを」とツッコミたくなるのだが、そう思いつつもタフ・セッションの歌と演奏を聴いていると、ついついこちらも誘い込まれてロマンティックな気分になってしまうのだ。

なんだこの感覚は? 一聴すると能天気なラヴ・ソングなのだが、どうやら事はそんなに単純でもないようだ。たとえば“往年の名曲”と呼ばれるレゲエやソウルのシンプルなラヴ・ソングが深い哀しみを感じさせるように、タフ・セッションの歌も曲調は明るいのになぜか哀しく、狂おしくなってくるような不思議な魅力がある。

彼らの歌を聴いていると、日本のレゲエも新しい時代に入ったんだなと感じる。日本でレゲエを演奏することがまだ珍しかった時代に、独自に道を切り開いてきた先人たちにあるレゲエとの独自の距離感やある種の屈折が、タフ・セッションにはあまり感じられないのだが、これはポップ・ミュージックのリスナーにとってはむしろ親しみやすい要素になるかもしれない。彼らの今後はまだまだ未知数だが、「ひょっとしたら化けるかも?」なんて思わせてくれる大きな可能性がある。



"Tuff Session"
[Flying High / FLHI-18]