2003年5月号


Prince Malachi
Greetings Friends,

不動の地位を誇るルーツの先駆者そして無敵のサウンド・マン、Jah Shakaが戻ってきた! 貴重な音楽を守ろうとして自身も火傷を負ったサウス・ロンドンの自宅の火災事故以降、彼のサウンド・システムは消滅したとの噂も流れていた。しかしShakaの断固としたストイックなラスタ主義と彼の音楽への愛情を知る者ならば、その様なデマに流されることはあるまい。1年程の療養生活を経た彼は5月にロンドンで行われる "Earthday" (Birthday)ギグ2公演への出演が予定されており、その模様が録音されることも決まっている。Shakaの重厚なルーツ・プレイをまだよく知らない者達も、やっとこれでロンドンまで飛ばずしてこの偉大なスピリチュアル・ウォリアーの活動の様子を耳にすることが出来るようになるのだ! Shakaについて、またはルーツ関連の情報についてはwww.culturepromotions.comをチェック。

復活の道を辿るもう一人の男、それはBuju Banton(もっともここ数年のBuju関連作品は数えきれない程だが、彼はつい最近やっと不慮の交通事故から回復したばかり)。その殆どを病院のベッドで書いたという『Friends For Life』の発売を祝うにも相応しいタイミングである。最後のアルバムと同じく色とりどりのマテリアルに加え、ゲスト参加も増えた今作も、殆どのファンを満足させるに充分な仕上がりではあるが、一部のメディアでは92年のアンチ・ホモセクシュアル・アンセム「Boom Bye Bye」を忘れることも許すことも出来ないまま、彼を銃や暴力について語るギャングスタ・ラッパーと一括りにして反社会的だというレッテルを貼ろうとしている。いつになったら彼らは過去を水に流せるのだろうか?

去年はもぬけの殻状態だったBlack Uhuru(創設者であるDuckie Simpsonと見知らぬメンバーが2人!)が、20年も前に彼らのヒット・メイカー的存在だったSly & Robbieと再結集してツアーに出ていた。セントラル・ロンドンでのギグは予想に反して上出来だったが、それは観客の殆どがステージ上の人間はその歌のオリジナル・シンガーではないことに気付いていないからなのだ。多分若過ぎるのだ。ともかく、Sly & Robbieの更なる“再結集”ツアーが3月末に予定されているが、今度はUhuruの元リード・シンガー(彼らの殆どのヒット曲の作曲者でもある)のMichael Roseを迎える。Sly & Robbieと活動を共にしていたUhuruの全盛期(79年後半〜84年後半)のフロント・マンがこのRoseだったこともあり、去年若きAndrew Bが吹き替えをした彼らの往年のヒット・チューンをそこで聴くことが出来るようになるという推測はまず間違いないだろう。

3月には1960年代にJohn Coltraneとの名カルテットで活躍したキーボード奏者のMcCoy Tynerが自身のトリオを従えロンドンのJazz Cafeで演奏する。UKでも流行したWayn Shorter等を含む当時のコンテンポラリーはその音楽性に多様な進化と変貌を遂げた後、再びバップに基盤を置くアコースティック路線に回帰している。良いことだ!

執筆時の段階では元Terminatorの子分格、Prince MalachiのStingrayからのアルバム『Runaway Slave』はまだ店頭には並んでいないが、同レーベルからの新7インチ盤「Can't Control」を聴けば彼のスタイルがよくわかるだろう。

NYのVP Recordsは世界中でも最もパワフルなインディペンデント・レゲエ・レーベルの一つであるが、一部のプロダクトにおいてAtlanticと提携したことでその勢いは更に強まっている。しかし悲しいことにこの偉大な会社の創立者であるVincent Chinが先日65才で他界した。1958年、妻のPatriciaと共にキングストンにRandy'sを設立し、その後何年もの間ジュークボックスの中古レコードを一般の人に売っていた。60年代にRandy'sは自身のレーベルとスタジオを立ち上げ、70年代半ばに到るまで、最もエキサイティングで時に革新的なレゲエ・ミュージックを送り出した。79年にNYのQueensに移ってからも、彼らはそこで主要なディストリビューション・アウトレットとして繁栄を続けた。引退したVincentがフロリダに移り住んでからは息子のChrisとCliveが引き継いでいるが、彼らの有能な手でこれからも更なる成長を遂げていくことだろう。御家族には御悔やみ申し上げます。

更に悲しいニュースがもう一つ。ラテン・パーカッショニストのMongo Santamariaが2月に他界した。コンゴ/ボンゴの巨匠だったMongoは私にかけがえのない音楽的享楽をもたらしてくれた(とりわけ、58年のキューバ録音の傑作『Our Man In Havana』は)。かの偉大な男に帽子を上げて敬意を表しつつ、本稿を締めくくろう。

 Till Next Time, Take Care Folks......


(訳/Miyuki W. Myrthil)

Michael Rose