ラップ表現の可能性を更新し、K点超え的な作品を発表し続けきた、Twigy。先日リリースされたこれまでのキャリアの集大成といえよう初のベスト・アルバム『素の味 1995-2003』からは、彼の柔軟かつ強靱な創造性(それこそがヒップホップというのだろう)が全編にわたって感じ取れる作品集に仕上がっている。


今回のベスト盤は、ご自身のシングル曲やこれまでに展開したフィーチャリング・ナンバーはもちろん、Twigy自身が客演した他のアーティストの作品までもラインナップに入ってますが……絞り込むの大変だったんじゃないですか?
Twigy(以下T):「Freedom」なんかはいきなりリミックスだし、Keycoの声で始まってどうする?っていう(笑)。ぶっちゃけた話、選びきれなかったです。後から「あっ、この曲もあった!」とか。まぁ、そういうところはちゃんとアルバムを買って一枚の作品として聴いてほしいっていうのもあるし。

Microphone Pagerの「病む街」も入ってるのには驚いたんですが。
T:「七転八倒」とかも入れようっていう話もあったんだけど、リリック的にもあわないかな?って思って。

1枚にまとまったものを聴き返してみて、どんな印象ですか?
T:変化ばっかりですね。この人はどこに存在するんだろう?っていうか、どれが本当なんだろう?って感じもすごくする(笑)。(外部の)人がプロデュースしてる曲は、やっぱりその人がイメージするTwigy像みたいなものが音に反映されてると思うし、お互いに感覚をシェアしてるっていうのもあって、音にしても、ラップの声の質にしても、細かいところまで化学反応が起きてるような感じですね。

その一方で、セカンド『Forward On To Hip Hop Seven Dimensions』以降は、ほぼすべての楽曲をセルフ・プロデュースしてきたわけですが、サウンド面も手掛けることでラップ表現も変わってくるんでしょうか?
T:変わりますね、やっぱり。たとえばトラックを渡されて、それを好きになってリリックを考える……っていうのとは違いますからね。もともと自分の好きなものを全部もってきて料理するわけですからね。どっちがいいとは一概には言えないですけど。

このベストに入ってる「七日間」が一番最初にセルフ・プロデュースした作品になるんですよね。
T:「七日間」はヴァージンと契約させてもらって初めてのシングルで。その前まではVortexから出た「聖戦」とかあったけど、俺のなかではスタイル的にもすべて中途半端っていう感じだったんですよね。だから「七日間」はこれから音も作って全部やるぞ!みたいな感じで張り切ってましたよね。で、俺らしいのはこの音色じゃない?とか意識しはじめたものが、『〜Seven Dimensions』や『The Legendary Mr.Clifton』で決まってきて……って感じですね。

そういう作業をすすめていくと、ご自身で手がけた作品は、どんどん深く“自分コア”な感じになっていくんでしょうね。
T:でも、最近は自分が何なのかもわかんないですね(笑)。たとえば(批評として)ボブ・ディランがどうのとか、サイケデリックがどうのとか言われても、俺、そんなロック知らねぇし、俺は俺の音楽やってるだけだよみたいな感じで?だったりもするし。それは単純にひねくれてるだけなのかもしれないけど(笑)。でも、カッコいいビートにカッコいいメロディとカッコいいラップがあって、それを自由自在にうまくまとめられるのが……まとめようとしているのがTwigyだと思うから。それに、「やりたいこと/やりたくないこと」っていうのもハッキリしてきたし、どんどん自分の色を出せていけてるし……それはやっぱりメジャーだからなのかな?とは思いますけどね。やっぱり自分で好きなほうに位置付けられるというか、逆にそれをしないとやっていけないっていうのもあるし。

活動初期からそうだと思いますが、Twigyはラップ表現でできることの可能性や限界点みたいなものを、毎回作品を作るごとに更新してるように感じるんです。こうしてベスト盤として、年代も違えば、ライミングやサウンドのスタイルとして違うものがズラッと並んでみても、Twigyの姿勢そのものは変わってないだろうなっていうのを、改めて感じるんです。
T:そうですか? いやぁ、じゃぁ、がんばれてる証拠じゃないですか?(笑) でも、そんなに深くは考えてないですね。逆に目標があったほうがすんなりできるんだろうけど(笑)。感覚的に作ってるから、厳しくなったら保留にするし、また手をつけるかもしれないし……ただ、俺がヒップホップはこうあるべきだっていういうことを定義するんじゃなくて、単純に、俺がこうあるべきだっていうのを見せていければ、それがうまく繋がっていくんじゃないかなとは思ってます。

その歴史が詰まっているのが、この『素の味』だと思いますが。
T:でも、やり抜けてきた!って感じはあんまりしなくて。もちろん、いろいろ影響は与えてきたんだろうなとは思いますね。たぶん(このベスト盤の)曲間にいろいろ隠れてるんだと思います。


TWIGY

DISCOGRAPHY
1995-2003

rgin /
"Don't Turn Off Your Light"
Microphone Pager
[File / 1995]
"Al-Khadir"
[Virgin / 1998]
"Forward On To Hip Hop Seven Dimensions"
[Virgin / 2000]]
"リミキシーズ呼吸法"
[Virgin / 2000]
"The Legendary Mr.Clifton"
[Virgin / 2001]
"余韻〜断編集"
[Virgin / 2002]
"素の味 1995-2003"
[Virgin / 2003]