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「レベル・サルート」はコンシャスDJ、トニー・レベルがプロモートする、ラスタ系カルチャー系ステージ・ショーで、トニー・レベル自身の誕生日にちなんで、毎年1月の中旬(1月第2週または第3週)に行われる。今年もブジュ・バントン、ケイプルトン、シズラなど、人気ラスタ系アーティストとベレス・ハモンド、ジョージ・ノックス、ボブ・アンディなどベテラン・シンガーがゲストで、セント・エリザベスという田舎が会場であるにもかかわらず、いや、セント・エリザベスだからこそ、ラスタファリアンはもとより、全国各地から人々が集まるレゲエのビッグ・イベントである。島のどこに棲息していたのかと圧倒されるほど多くのラスタファリアン。しかも、女性と子ラス、ラス・ファミリー。タウン(キングストンのこと)ではお目見えしにくい、真摯なラスタファリアンたちが多いのが印象的だった。 セント・エリザベスは、ジャマイカの中でもジャマイカ人に好感度の高い教区だと私は思う。ポートランドもいいな、ジャマイカの良心ともいえる場所。セント・アンは、ボブ・マーリーやマーカス・ガーヴィの生まれ故郷でもあるのでここも良し。マンデビルは、ジャマイカの高原地帯で年間を通して涼しくクリーンで、教育施設も多く知的なイメージもある。老後はマンデビルで、と願う人も多い。それに比べて、首都のキングストンと観光都市モンティゴベイは反目しあっていたりもする。キングストンは、田舎に住むジャマイカ人にとっては憧れの場所であると共に、タウンと聞いただけでビビる人もマジ多い。タウンの奴らは皆、ガン持ってるからな、だなんて。 とにかくセント・エリザベスは豊かな農産物と、脅威の自然の教区。ショーの行われた数日前に、セント・エリザベスのガンジャ畑に抜き打ちでポリスの手入れがあり、何エーカーものガンジャ畑が焼かれた模様をテレビのニュースで放映したばかり。ニュースで、「こんなに焼かれてどうやって子供を学校にやったらいいんだ」と嘆いたお父さんも、セント・エリザベスの高感度をアップしたかも。 最近はラスタといってもオヤジ系ばかりじゃないもんね。チャック・フェンダーが島で大ウケ。スプラガ・ベンツもラスタになって、このショーに登場。Kool To De Boneよ。今年で10年目を迎えたこのショーには別の楽しみもある。ムタバルカの毒舌MCと会場の屋台料理だ。 このショーは、ノー・ドラッグ・ノー・アルコール・ノー・ミート。ラスタのショーなので、会場では「センシ!」「ウィード!」「ハイ・グレード!」などとまるでピーナッツを売るように堂々とガンジャが売られているが。 会場で売られる食べ物は野菜が中心で、サカナは売られても肉は一切許されない。同様に会場内はアルコール類の販売も禁止である。肉がないとかえってバリエーションが増え、アイタル・シチューはもちろんカラルーにアキ、トーフやベジ・ミートも活躍している。スープもベジ・スープ、フィッシュティー、レッド・ピース(豆)・スープ、パンプキン・スープにペパーポットと各屋台で競い合っての味くらべ。フルーツ・ジュースやスタミナ系手作りドリンクの種類も豊富。 その他嬉しいのはスナック類で、小麦粉の代わりにオートミールやホールウイートを使ったダンプリング、クッキーやらプディング、ケーキなど甘いものも充実している。あぁ幻の「ドコノ」じゃないの! Duckanoo、Durunuなど本によってスペルが異なるが、正式には「ドゥクヌー」と発音する別名「ブルーズロウス」(青いパンツ)と呼ばれるジャマイカのお菓子。バナナなどの葉っぱに包まれたモチっとしたお菓子。そう、「ちまき」よ、5月のお節句のときに食べるあの「ちまき」に似ている。ジャマイカでもあまり売られておらず、おすすめしたくてもなかなか味わえない逸品なのだ。 同じ屋台料理でもレベル・サルートの屋台は意気込みが違う。とにかくココの会場の屋台料理は、お腹のスペースとおこづかいが許せばすべて食べてみたくなる。会場から一歩出ればそこはジャマイカ、いや実は会場内でも、ビールでもジャークチキンでも何でも売られているが、私は保温のためラム・クリームを買って飲んだ。明け方の会場は着込んで行っても寒い。そしてショーが終わって混雑極まりない駐車場を抜けられるのが、朝の9時過ぎだったりするので、今度は暑くなる。日曜の朝、教会に行く人々の間をラスタカラーの旗をひるがえして走る車が、数珠つなぎに通る。ムタバルカが言うように、誇るべきジャマイカの光景なのだ。 ダッシュベリー(妊娠中絶)ねた、オールドドッグねた、アナコンダねたは冷静になるとノレなかったりするときもある、女としては。 たまにはこんな、田舎のラスタショーを体験してジャマイカの良心に触れるのもいいもんだ。Jah! |
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