エイジアン・ダブ・ファウンデイションの新作『エネミー・オブ・ジ・エネミー』はヤバイぞ。なにしろ、9.11事件の犯人を“敵の敵、敵の敵、敵の敵はお友達”なんてラップしている。トラックもリリックもひたすら過激。ベースのDr.ダスがインタヴューに応じてくれた。

 昨年夏リリースされたシングル「Forever」。メロディと歌詞、そしてPushimの歌が三位一体となり、聴くものの胸を熱く焦してくれたこの傑作を、事ある毎に、今でもちょくちょく聴いている…なんていう人は筆者だけじゃないだろう。

『エネミー・オブ・ジ・エネミー』は強烈にポリティカルな内容で、1曲目の「Fortress Europe」から圧倒されました。
Dr.ダス(以下D):この曲は、ヨーロッパに入ってくる難民や亡命者の権利について歌った曲なんだ。資産家や企業人はどんな国にも自由に足を踏み入れることができて、それが結果的に不安定な経済や貧困を招く。そして貧しい人たちはもっとマシな生活を求めて移民しようとする。“壁を打ち破れ”と言っているのは、難民や移民に対する厳しい対応や制限を打ち破れ、という意味だ。

エグゼクティヴ・プロデューサーとしてエイドリアン・シャーウッドが参加していますね。
D:エイドリアンとは10年来の知り合いなんだ。彼の参加でさらにノイズが増したし、「Cyberbad」と「1000 Mirrors」には、すごくヘヴィーなレゲエ・ドラムが加わった。

ジャズワドも参加していますね。
D:ジャズワドは2曲リディムを再プログラミングしてくれた。「Power 2 the Small Massive」なんて元々はドラムン・ベース〜2ステップの曲だったんだけど、 バッシュメント(今のダンスホール・レゲエ)になっている。

「1000 Mirros」ではシネイド・オコナーが歌っています。
D:彼女の音楽が前から好きで、彼女も前から僕たちの音楽に興味を持ってくれてたらしいんだ。すごくいいものを提供してくれた。

「19 Rebellions」はポルトガル語のラップですね。サンパウロの刑務所で受刑者が大量に殺されたことがテーマになっているとか。ブラジルのファンキっぽいリディムも新鮮です。
D:リリックはブラジル人のラッパー、エディ・ロックとマルセロ・ボンバが書いてくれた。ブラジルでプレイしたとき、すごくいい反応があった。

「2 Face」のリディムは、ちょっとダウナーでディープな感じがします。と思って歌詞を見れば歌詞とぴったり。
D:ビートは、リリックの感情や雰囲気を反映しなきゃならない。リディムがリリックを代弁するんだよ。

「Dhol Rinse」は ドール(バングラ・ミューシックで使われる肩からぶらさげて両側から叩く太鼓)のリディムが印象的です。
D:これが北インドに伝わるパンジャブ音楽の伝統的なバングラだ。」

そしてラストの「Enemy Of The Enemy」。これは強烈なメッセージですね。9.11を境に、世界はどう変わったと思いますか?
D:9.11以来、世界が変わったとは思わないな。唯一変わったことといえば、人々が世界で起こっていることに今迄よりは少し関心を持ったり危機感を持つようになったことぐらいだ。でもまだまだ、人々の関心や危機感は足りないと思うけどね。

では最後に、日本のレゲエ/ヒップホップ・ファンに向けて何かひと言お願いします。
D:オープンマインド、かつ前向きな気持ちで僕たちの音楽を聴いて欲しい。なぜなら、レゲエやヒップホップの根底には、この世界の状況と、そこに住む人々の生活がより良いものになるようにという思いが込められているからね。


"Enemy Of The Enemy "
Asian Dub Foundation
[Virgin / VJCP-68462]