Album

1. V.A. / DJ Masterkey Presents Def Jam 2002(Cutting Edge)

日本で一番“大バコが似合うDJ”マスターキーによるデフジャム音源のオフィシャル・ミックスCD。ビーニ&フリーウェイの「Roc The Mic」から怒濤のMix。フロアを揺らしたパーティー・チューンが基本となるところは言わずもがなだが、R&Bも絶妙に混ぜながら最後まで“聴かせる”辺りは流石に達人でありエンターテイナー。12インチを買わない人にとっても現段階でシングル・オンリーの楽曲がしっかり入ったこの一枚はかなり嬉しいないようとなる筈。例の“名調子(MC)”も勿論入ってマス!!

2. DJ Spinna / Here To There (Ultravibe)

ヒップホップからハウス等、鮮やかにジャンルを横断するプレイを得意としつつ、“クリエイター”としても自らの趣味が反映されたドープ一辺倒にならないトラックメイキングを披露するDJスピナのソロ名義のオリジナル作(久々!)。レーベルはお馴染みのBBEでジャジー・ジェフ等、これまでのタイトル通り、主人公となるプロデューサー/アーティストが持てるクリエイティヴィティを最大限に発揮した、という感じ。名曲「Rock」の生演奏(ソウライヴ!)でのセルフ・リメイクの他、アパニ、ヴィニア・モニカ等、ゲスト陣も納得、のスピナらしい一枚に。
3. Eligh / Poltergeist (Mary Joy

“日本で一番人気のあるアンダーグラウンドMC”(From LA)という語り文句も大袈裟じゃない高密度な仕事振りで信頼度抜群のイラーイの最新作。レビング・レジェンズ、3MG、G&E等の活動でも知られる彼はイマジネイティヴなサウンドと鋭いリリカル・センスで“ソロ・アーティスト”としても認知度は高く、日本でもリリースされた5作目『Gas Dream』も名盤の誉れ高き作品だったが、そのアルバムから3年ぶりとなるラップ・アルバムである本作では、3rdのコンセプトに続く、タイトル通り“幽玄”なモノとなっている。そのとてつもない創造力にはただ驚くのみ。
4. Tsutchie / Thanks For The Listening(Cutting Edge)

噂が噂を呼んでいたツッチー(シャカゾンビ)の初のソロ・アルバム。参加メンバーは石井マサユキ(Tica)、キタキマユ、曽我部恵一、ロリ・ファイン、真城めぐみ&木暮晋也(ヒックスヴィル)、渡辺俊美、恒岡章(ハイ・スタンダード)といったヒップホップ・サークル外の“本人の幅広い交遊録”が見える面子で、何と全編“生楽器”込みのソウルフルでフレッシュなアプローチが楽しめる、という仕掛け。ECD、ダボ、瘋癲、SDP+ロボ宙のパフォーマンスも素晴らしく、正に遅れてきた2002年のベスト・アルバムに。
5.M.O.S.A.D. / The Great Sensation (Music Securities)

「Fabulous (Remix)」他、EP3枚連続リリースにFeat.仕事等で日本各地で確実に“熱”を高めている名古屋の風雲児集団=モサドの待望の初アルバムが遂に完成。リーダー役のイコールに、ソロでも気を吐きまくるトコナ-X、そしてアキラ、というキャラクターのハッキリした3MCに、DJフィクサー、の布陣は鉄壁のフォーメーションであり、またトラックメイキングの面では様々な繋がりと確かなシーンをそこに見ることが出きるだろう。聴く程に重味を増すリリックも凄い。いや凄まじい。マッチョ、フォビア・オブ・サグ、G・カンカラー他、ゲストも厚く、熱い。
6. V.A. / Change The Game(Universal)

「演技じゃねえ、これChange The Game」というキングギドラのK・ダブ・シャインのラインにもあった通りの「時代の流れを変える」べく集結した、アトミック・ボム・プロダクション、UBG、走馬党他、男気溢れるMC陣と、才気渙発なプロデューサー陣がガップリ組んだベネフィット・コンピ。早くも活躍のDJミッザビーツとコーヘイ・ジャパンのコラボ曲や、DJセロリ+キエるマキュウ他、自然な、または意外な取り合わせがグイグイと効いてくる間違いない“志高き一枚”。幼児/児童虐待防止基金へ売り上げの一部を届ける、という動きもヒップホップ!
7. Hill a.k.a. Hill The IQ / The Day(Big Deal)

『悪名』(95年)に収録された「飛んで灯に入るWack MC」一曲で皆のド肝を抜いた希代のストーリーテラー=ヒル・ジ・IQ改めヒルの待望のフル・アルバム。“ゴールド・ラッシュ”を共に運営する仲間=コーキ、DJサチホを中心に、ヒルと言えばDJコースケ、DJダイ、DJタク、カルヴォといったヒルの魅力の何たるかをよく知るトラックメイカーが顔を揃え、T.A.K.・ザ・ラーイムとのリリシスト同志でキメるタイトル曲や、“たとえ”技炸裂の「ポリス・ストーリー」、ストーリーが映像的効果を生む「No Pain No Gain」等、聴きドコロ多し。
8. Azzurro / I-Mare Azzrro
(Pure Sand West)


元メロー・イエローのDJジジイジャイ改めアズーロのキャリア初のフル・アルバム。瘋癲、リトル他でのプロデュース、リミックス・ワークでもそのサウンド・デザイン(何を狙ってるか、表現したいかが明確)のオリジナリティは味わえたが、このアルバムは全てがアズーロ(つまり、彼自身のヒップホップ)と言い切れる程のモノ。キヨ、ハシム、ヒラカツ、オモロ、シャーク、アキラといったスクラッチ・テクニシャンや、Vo.のカオル、MCのB・バンジー、ミリ、イギリスのデフ・テックスといった声出しゲストのハマリの必然性も感じられる幅広さを持ちながらも長編小説の如く、まとまった趣味最高な秀作。


Mini Album
9. Muro / Chain Reaction(Toy's Factory)

昨年、『K.O.D.P.アルバム』で再び高らかな“改正開始宣言”をしたKing Of Diggin' が03年一発目のアクションとして世に問うニューEP。タイトル曲は、ウヂ、デリ、Q、ビグザム、トコナ-X、ゴア・テックスという6人のマイクの猛者とKingが横一列でミドルなテイストのビート(何とドン・バロン「Action」のリメイク)上を練り歩くリレー物。同曲のムロ・セルフ・リミックスの他、カシ、ゴーリキ、ジョウチョウの三人並び、DJヴィブラム、そしてDJシモーネ&DJタスワン各々のファンキーなトラック物を含む、またも特濃な5曲入り。
10. Zeebra / Big Big Money feat. Hiro(Future Shock)

“やりてえことだけやってメイクマネー”するシーンのトップランカー=ジブラのソロとしては実に一年半ぶりのシングル。ヴォイスもライムもフロウもデリバリーも全くもってフレッシュ、なのにジブラ節は健在。そのアーティスティックな本質は少しも揺るいでいない。F.O.H.のヒロのfeat.を含め、彼のこれまでを知る者にとっても今この曲(しかもフロア向け)、というのも合点がいくというもの。ソロ作では初のファーストクラス名義での制作曲というポイントも。マイティ・クラウンによるRemixも美味也。
11. XBS / Radical X(Cutting Edge)

ニトロの“低音エクスプローラー”ことXBSのメジャー第一弾EP。そのドクトクの声で放たれる詩情豊かで抽象美に満ちた世界観は更なる深みを見せている。アクエリアスのヤッコ作のイントロに始まり、“輪舞曲”(ロンド)を意味する「Rond」(ヤッコ作)に、ワタライ・ビートのタイトル曲、マッカチンをFeat.(制作も兼務)したハードな「Gaaacho」と畳み掛ける様な構成で聴かせ、最後はワタライ作の「Number 10」でディープに締める実にタイトな5曲入り。しかもスルメ盤。
12. キエるマキュウ / 失恋ヘビー級(第三ノ忍者)

『侍ジャイアンツ』の八幡先輩でさえキャッチ不可能と言われる(?)、リリックもトラックもかなり超変化球なスーパー・タッグ=キエるマキュウのブランニュー・ボールが一年のインターバルをも待たずに到着。その名も「失恋ヘビー級」。内容は推して知るべし…とは決してならぬトコロもマキュウ流。センシティヴな心のヒダヒダ感の出たビートと、それを無残にも踏みにじる様なリリック(でも耳を清ませば奥の細道)。これぞ“引き込まれ系”の全8曲。