日本のオーセンティック・スカ/ロック・ステディのバンドが集結するライヴ・イヴェント“Big Shot”。99年に始動し、今年3月に5回めを数えるこのイヴェントが、コンピレーションCD『Big Shot』をリリースした。北は札幌から南は沖縄まで全14組のバンドが収録された本作の発売を記念して、アルバムに参加した東京スカパラダイスオーケストラからNargo(tp)、北原雅彦(tb)、Gamo(ts)、そしてクール・ワイズ・メンの浜田光風(tp)にミュール・トレインのDoca(ds)に集まってもらい、オーセンティック・スカへの想いを語って貰った。

 
●今回、『Big Shot』に参加しての率直な感想は?
北原:いや、いいバンドがいっぱいいるもんだなぁって思いましたね。
Gamo:俺らがはじめた頃には、こんなにいなかったですからね。
北原:スカ・フレイムスと……あと何がいたんだ? とにかくすごい拡がったもんですよ、ホントに。

●浜田さんやDocaさんは、昔からスカの現場には足を運んでたんですか?
Doca:行ってましたね、めちゃめちゃ。10年ぐらい前のフレイムスとかスカパラ、あとデタミネーションズのライヴの盛り上がりがすごかったじゃないですか? ケンカばっかで。
浜田:そっちのほうの盛り上がりかよ!?(笑)
Nargo:当時は客席が乱闘になってライヴが止まったことあったりしたもんね。

●でも、そんなスカのヤバい感じみたいなところに憧れちゃう部分もあったのかも?
浜田:下北沢のZOOとかそんな感じでしたよね。僕、高校生でサイコビリーとかもやってたんですけど、怖いんだけど行きたい!みたいな。最近はピースな感じだよね。

●そんな感じで、ライヴに触発された人たちが新たにバンドを作っていったりして、次第に今のシーンが形成されてきたわですが、いまのこの時代にオリジナル・スカから影響を受けたオーセンティック・スカというものに取り組んでいる皆さんは、どういうところを肝においてるんでしょう?
Doca:オリジナル・スカを見倣ってはいるけど焼き直しではなくて、自分らなりにアレンジしてそれぞれの味を出しながら楽しんでるっていう感じですね。
浜田:だって、スカタライツをコピーしてるだけじゃ、おもしろくないじゃないですか? スカ自体、ミクスチャーだと思うんですよね。ジャズであり、ラテンであり……そういうのを、今度は俺らなりに取り込んでどう出すか?っていう。で、自分らなりの匂いっていうのを出せたらいいなって思います。ホント、このノリはどこにも真似できねぇぞっていうね。
北原:スカパラも最初はスカタライツのコピーから入って……でも、すぐオリジナルとか作り出してたね。
Nargo:最初のレコーディングの時点で、バンドの方向性をもっと強いものにしたいっていうことで、歌謡のテイストを入れたり、他にはないものを探し続けて……そういう意味で“トーキョースカ”って自分たちの言葉で作ったんだけど。
Gamo:ただ、ある時期グッと拡げ過ぎたというか。自分たちは変わってないんだけど、“スカパラってスカじゃないよね”とか言われたりね。
Nargo:ライヴではガッツリやってたんだけど、CDに入れる曲は、オーセンティックなテイストが希薄になった時期はあって。もしかすると新しいものを作らなきゃいけないっていう気持ちが空回りしてたところがあったのかもしれないけど。
Gamo:でも、僕らも数年前からあらためていろんなのスカ・バンドと知り合ったり聴いたりしてくうちに、今は自然にオーセンティックなものに取り組めるようになったね。
Nargo:日本にいいバンドがたくさんいるっていうのも、純粋にうれしいなって思うし。こういう価値観の人たちって、なかなか横につながったりしなかったじゃないですか? それがちゃんとつながって、今回『Big Shot』でカタチになったのがよかった。
北原:みんな仲悪かったですからねぇ?
一同:(笑)
Nargo:んなこたぁない(笑)。こうして、たくさんスカ・バンドができたらできただけのキャラクターがあったらいいなっていうか。それぞれ濃いところで個性を確立していってもらって、日本のスカ・シーンをみんなで太いものにしていきたいなって、あらためて思いますね。

●その芽は、このアルバムのなかに詰まってますよね。
Nargo:うん、わかってらっしゃる人たちばっかなので(笑)。世界的に見ても、今までにいくつか波があったじゃないですか? スカが生まれたとき、2トーンが生まれたとき……そして、今のこの流れを新しい波にしないといけないんですよ。スカをこの日本っていう土地でガツンと盛り上げて発信していく、新しい可能性を掘り下げていきたいし……ホント、これからがスタートだっていう気持ちで盛り上げていきたいですね。


"Big Shot" V.A.
[Victor / VICL-61033]