1999年12月号

GHETTO REVOLUTION / SIZZLA
[GREENSLEEVES / GRELCD269]

徹底してマイペース。それだけにシングルはコンスタントだし、アルバムも一気に何枚も出してしまうシズラ。先月に引き続き紹介する彼の新作はUKのマーケットを意識したのか、レベル・ミュージックとしてのレゲエを強く感じる。怒り爆発型ガナリDJスタイルから味わい深く心に染み入る唄を感じさせるスタイルまで、実に彼らしい。エクスターミネイター作品なのでクオリティは折り紙付き。要チェック。[輸入盤](鎌田和美)

I FOUND LOVE / GREGORY ISAACS
[HEARTBEAT/HBCD259]

個人的にも大好きなルーツ・シンガー、G・アイザックスの最新作。今回はこれまでにリリースした名曲の数々をセルフ・リメイクしたもので、原曲の良さを生かしつつ現在のレゲエ・シーンにもキチンと対応したクオリティの高い一枚。70年代にグレゴリーとコンビを組んでヒット曲を多数発表したGGsレーベルのドン、アルヴィン・ラングリンがプロデュースを担当。スラ&ロビも相変らずイイ仕事してます。[輸入盤](小池信一)

KINGSTON SESSIONS 1992-2002 / RESTLESS MASHAITS
[ADDIS / NO NUMBER

スイスを拠点としているアディス・レコードからのニュー・アルバム。聴いたことのないアーティスト名だが、その本性はジャマイカの809バンドのホーン・セクションと打ち込みを合わせたロンドン・スタイルのニュー・ルーツ・ダブである。録音はすべてジャマイカで行われているが、プロデューサーはスイス人という珍しい形態。しかしながら内容はダブ・ファンも絶賛するほどの出来の良いアルバム。[輸入盤](長井政一)

NO BONES FOR THE DOGS / JOE GIBBS AND THE PROFESSIONALS
[PRESSURE SOUNDS / PSCD037]

70年代の名プロデューサー、ジョー・ギブスのダブ音源集。エンジニアは彼の片腕として数多くの名作を生み出したエロール・トンプソンが担当。サウンド的には彼らの代表作である『アフリカン・ダブ』シリーズの延長線上にあると考えて良い。シルフォード・フォーカー「ス・ス・ポン・ラスタ」、ジュニア・バイルズ「ハート・アンド・ソウル」のダブを始め、マニア心くすぐるレアなダブを多数収録。[輸入盤](小池信一)

SOUL REBELS / BOB MARLEY AND THE WAILERS
[TROJAN / TJCCD053]

1970年トロージャンからリリースのウェイラーズの歴史的名盤がボーナス・トラック10曲を追加して再発。アイランド時代の洗練された作品群に比べるとルード・ボーイ然とした男臭いサウンドでゲットーでの厳しい日常を想起させる。タイトル曲やメジャー第一弾で再演される「400 Years」など名曲多数。グルーヴィンで渇いた響きが特徴的な70年代初期リー・ペリー・サウンドの代表的な一枚。 [輸入盤](小池信一)

I CAN HEAR THE CHILDREN SINGING 1975 - 1978 / PRINCE ALLA & JUNIOR ROSS
[BLOOD & FIRE/BAFCD040]

プリンス・アラーとジュニア・ロスの2CD。プロデュースは共にタッパ・ズーキー。それぞれのアルバムにDJカット、ダブ・カットを追加収録して全24曲、時間にしてなんと105分15秒。「Funeral」や「Send Me Over There」といった70'sルーツの名曲を、ゴリゴリのダブと直結で聴けるのは嬉しい限り。本作が世界で何枚売れるのか見当つかないが、このレーベルにはこれからもぜひこの路線を貫き続けて欲しい。[輸入盤](武田洋)

CHAINSTORE MASSACRE / V.A.
[ON-U SOUND / ON-UCD1002

再び活動が活性化しそうなOn-U Soundの、今後の展開を示唆する様な限定コンピ盤。まず収録メンツが凄い、2バッド・カード、スキップ等のレギュラーなメンツに加え、ニュージーランドのダブ・バンドやアイルランドのラッパーからJr.タッカーの妹やシニード・オコーナーまで。更にリトル・ロイとマーク・スチュワートも本作のために録り下ろした新曲を披露。とにかくメンツも音も期待を裏切らないはず。[輸入盤](鎌田和美)

RETURN OF DJANGO : THE BEST OF THE UPSETTERS / V.A.
[TROJAN / TJACD035]

アップセッターズ関連のコンピ盤を買うならやっぱりトロージャン。スキンヘッド・レゲエ、中でもオルガン・インストでイイのを探しているなら「Kill Them All」、レア・グルーヴ系ならファンキー・ブレイクで始まる「Jungle Lion」、「Spinning Wheel」をめっちゃめちゃルーディーにカヴァーした「Double Wheel」、そして「Tears On My Pillow」のカヴァー「The Pillow」も最高。激アツの1枚。[輸入盤](武田洋)

ラヴ・グローサー/ザ・ラヴ・グローサー
[トリッピン・エレファント / TERNG-041]

ロンドンのダブ・シーンに新たな新風を吹き込んだブラスホーンをメインとしたダブ・インストゥルメンタル・ユニット、ラヴ・グローサーのファースト・アルバム。リコ・ロドリゲス、ミュート・ビート、トライアル・プロダクションといった連中を連想させる素晴らしいレゲエ・ホーン・セクションによるハーモーニー。重圧なダブ・サウンドに乗せ壮大なイメージが膨らむ曲を多数収録し、聴き応え十分。(長井政一)

レイ・ウィズ・ブーツィー〜ア・トリビュート・トゥ・ザ・ファンク/ブーツィー・コリンズ
[ワーナー/AMCE-10007]

5年ぶりとなる新作の邦題は「ファンクだよ、全員集合!」(笑)。しかしながら本作を聴き進むにつれこのタイトルが単なるおふざけでないことに気付かされる。ゲストにはロージー・ゲインズやボビー・ウーマックといった大御所に加え、ダズやスヌープといった「子供たち」が参集。まさにジャンルも世代もない客を乗せたスター・シップは、彼のぶっ飛びベースに誘われて未来派ファンク道を突き進むかのようだ。(石澤伸行)

プライスレス/ケリー・プライス
[ユニバーサル/UICD-6041]

昨年のクリスマス・アルバムを含めると4作目となる新作。本作が過去の作品と一線を画しているとすれば、それは随所に収められた目の覚めるようなアップだろう。その功労者はウォーリン・キャンベルとマイク・シティ。彼らによる声の爆発力を引き出さんとする絶妙なプロダクションは、間違いなく本作の、そして今年最高位の仕事だ。フェイス・エヴァンスやクラーク・シスターズらとのディープな交わりも白眉。(石澤伸行)

ラーニング・フロム・フォーリング/ラミア
[BMG/BVCP-27031]

ソウルIIソウルやデヴィッド・ボウイ、そしてジェイムス・ブラウンらとの共演を果たした女性シンガーがデビュー。ケニアに生まれイギリスで育った彼女がNYで開花させた感性は、ネリー・フーパーらが提供する無所属なサウンドに乗ってのびのびと羽ばたくかのよう。いたずらっぽくもキュートな節回しは時にメイシー・グレーを思わせるが、謎めいた雰囲気はこちらの方が上か。単なるアブストラクトにあらず。(石澤伸行)

サム・アザネス・フォー・ユー/カレン・バーノッド
[Pヴァイン/PCD-23319]

先月号で紹介したヤーザラーと同様、エリカ・バドゥのライヴに参加、ディアンジェロやインコグニートとも共演を果たしているNYの女性シンガー。その歌声は、生なファンク感覚溢れるサウンドに乗る時イキイキと躍動するかと思えば、ジャジーなミッドでは艶と可愛らしさで惹き付ける。バッキングには昨今のオーガニック・シーンにおける影の立役者といった仕事人があたり、この辺が好みの方には絶対の内容に。(石澤伸行)

また、さようなら/ソウル・ラヴァーズ
[リワインド/RWCL-10001]

1年ぶりとなる3作目。エマーソン北村らによる「Welcome To My Room」では煮えたぎるようなファンクネスを表出させ、朝本浩文によるラガ・チューンとなったタイトル曲では滋味深い歌世界を展開。もともとマーヤのヴォーカルの魅力でもあった“業”みたいなものに表現力の幅が加わっただけでなく、歌と音の噛み合い具合にも格段の進化が。ソロ・ユニットとなって以降の“次なる段階”を感じさせる好作だ。(石澤伸行)

インプレッション /キイコ
[東芝EMI / TOCT-24891]

無事に出産を済ませ来年にはまた現場に復活してくれるはずのキーコ。本作は過去の楽曲をLibro、DJ Yas、Dry & Heavy、Reggae Disco Rockers、Aquapitらヒップホップ、レゲエ、ビッグ・バンドと言った様々なジャンルのアーティストがリミックスした作品集。どんなトラックでも見事に解け合ってしまう彼女の唄、そして声はさすが。新旧の曲を聴き比べるとキーコの成長も感じられて面白い。(大場俊明)

リミックス・アルバム/ヴィクター・デイヴィス
[ヴィレッジ・アゲイン/VIA-0005]

西ロンドンのクラブ・シーンで火がつき昨年にアルバム・デビューを果たしているUKのシンガーがリミックス集を発表。マスターズ・アット・ワークやダ・ラータが手掛け既にフロアでは高い支持を集めている「Sound Of Samba」やマーク・レイ(レイ&クリスチャン)による「Blue For You」等、シーンの多方面から様々な色付けがなされることで、彼の朴訥なヴォーカルから新たな魅力が引き出されている。(石澤伸行)

40エーカーズ・アンド・ムーグ/スーパーソウル
[P-ヴァイン/PCD-23310]

一昨年辺りから何かと話題のマイアミのエレクトロ・シーンだが、忘れてはならないレーベル、Metatronixのオーナー=オマー・クレメストンのユニット、スーパーソウルの初アルバムが届いた。独特なドープなトラックのスパイスになっているのはやはり、ジャマイカ出身故のルーツ・レゲエやダブの手法や思想だろう。こうしたハイブリット感覚が新たな音楽を生みだす事を改めて確認できるはずだ。(大場俊明)

ドゥ・ユー・ノウ・スクエアプレッシャー
/スクエアプレッシャー
[ビ-トインク/BRC-63]

〈俺のことを本当に知っているのか?〉意味深な問いかけをタイトルに掲げ、エイフェックス・ツインが認めた奇才、スクエアプッシャーの新作が届けられた。01年に日本で行われたライヴ音源や、何とジョイ・ディヴィジョン「Love Will Tear Us Apart」のカヴァーも収録。型破りのフォーマットを作り出すセンスは相変わらずだが、リスナーに毒づくテクニックはますます洗練されてきている。相当の確信犯。マッシヴ。(高橋晋一郎)

フューチャー・イン・ライト/ケン・イシイ
[ミュージックマイン/IDCK-1001]

本人名義では2年振りとなるアルバムが自ら主宰するレーベルよりリリース。これ迄にテクノのみならずロックやブレイクビートに至る様々なベクトルを制作に内包させてきたが、今回は彼が最も影響を受けたと言われるデトロイト・テクノを彷彿とさせる正にテクノ・オリエンテッドなサウンドを展開、随所に盛りこまれた彼らしいセンスが面白い。ナイキ・プレストのCM曲として制作されていたあの楽曲も収録。(高橋晋一郎)

アスラン/アスラン
[P-ヴァイン / PCD-5825]

ロボやダブ・スクワッドでの活動などで知られる益子樹がディレクションする第三のプロジェクト、アスランのファースト・アルバム。益子自身がエンジニアリングも担当、輪郭のはっきりとした抜群に良い音で生成されるフリー・フォームなサウンド。そこで女性ヴォーカリスト、益子ふみえの存在が際立ち、結果としてバンドのオリジナリティーが更に増しているように感じられる。次作にも期待。(高橋晋一郎)

ウツミ /内海イズル
[フラワー/FLRC-013]

DJとしても正にベテランと呼ぶに相応しい内海イズルが遂にファースト・アルバムを完成させた。本作の為に制作された5曲と彼がこれまでに手掛けた3曲のリミックスを収録。ジャズやブラジルにワールド・ミュージック、そしてテクノから音響と様々な音楽の要素がセンス良くブレンドされたタイトで現代的なプログレッシヴ・ミュージックとなった。なかでもアンビエンス・タッチの楽曲が秀逸の出来映え。(高橋晋一郎)

サウス・オブ・ザ・ボーダー/ドレイコ
[ユニバーサル/HMS-0032]

元Cokeberryのヴォーカル他を担当するMimaとインストゥルメンタルを担当する森本直樹によるユニット、ドレイコのファースト・アルバムが届いた。既に英米でも評価を得ている彼らだが、日本でもやっとこれで正式に作品が聴けることになった。楽曲の良さもさることながら、音の隙間をうまく聴かせる独特の間の作り方は、Mimaの唄をより引き立てているようだ。タイトル曲には柏原譲とHakase-Sunも参加。(大場俊明)

フォークコア/カマ・アイナ
[フォークコア/FCCD-1000]

リトル・クリチャーズの青柳拓次のソロ・プロジェクト、カマ・アイナの2ndアルバムが彼自身が設立したレーベル、フォークコアよりリリース。まるでロード・ムーヴィーのササントラの様な独特の空気感を持ち、アコースティック・ギターやピアノ、ウクレレ等でシンプルに奏でられる無邪気な音楽性ながら唯一無二のムードを醸し出す。またそれを可能にしている職人的ミュージシャンシップも素晴らしいと思う。(高橋晋一郎)

トワライト・ワールド2.0/V.A.
[P-ヴァイン/ PCD-23311]

レコードショップ@スパイラル名バイヤーである山崎と鶴谷の両氏が〈トワイライト=黄昏時〉をテーマにセレクトしたコンピ第二弾。ジャンルレスにグッド・ミュージックを紹介する手腕には定評がある彼らが、今回はメタマティックスやサヴァス・アンドサラヴァスなどエレクトロニック・ミュージックを中心に選曲。選ばれた1曲1曲のクオリティも高いが、バランスの取れた構成が前回同様丁寧に作られている。(高橋晋一郎)