ダンスホール・レゲエの可能性を求めて挑戦を続けるリョウ・ザ・スカイウォーカーが待望のセカンド・アルバム『Still On Journey』をリリース。リョウが最も得意とする攻撃的なチューンばかりでなく、間を生かしたトラックにも挑戦し、Dee-Jayの可能性を提示した自信漲る佳作だ。マスタリングが終わったばかりのリョウに早速彼にインタビュー。 |
●レゲエ・オンリーでまとめたからか、前作以上にリョウ本来の色が滲み出てると思ったけど。 Ryo(以下R):俺的には前のは「リョウ・ザ・スカイウォーカーです!」みたいな、ま、俺のサンプル集。で、今回のは素の俺って言うか、「ヤマグチリョウです」みたいな(笑)。だいぶ自分を出しちゃったって言うかね。 ●特に出だしの「Parikore -Intro-」から「I-KA-NI-MO」の流れを聴いた時、「今回はこれで行かせて貰うから着いてきな」という感じがしたんだけど。 R:LPとかA面がイケイケで、B面がゆったりってよくあるパターンじゃないですか。全体の構成としてはそんなのを踏襲してみようかなって。ま、つかみから入って、途中中だるみがあって、後半戦は買って帰ってから聴いて貰うってみたいな感じで。 ●と考えると、中盤の「GUERRILLA MONSTER」までがA面で、ディーン・フレイザーのインスト曲「Sledge Head」で小休止って感じですね。それではA面に当たる曲を解説して下さい。まずはイントロの「Parikore」だけど、これは誰の声をコラージュしてるの? R:サウンドやってた時に作ったダブプレートから色んな人が自分をビガップしてるとこを抜き取って。もう順番は分かんないけど、ニンジャマン、ブジュ・バントン、ジョン・リックショット、マーシレス、シャカ・シャンバ、テリー・ガンジー、エレファントマン、ケイプルトン、ハリー・ドットラー、レッド・モンキー、ナンジャマン…。 続く「I-KA-NI-MO」はアルバム中、一番最後に作りました。それまで作ってたのが割とゆったりの曲ばっかりだったんで、イケイケ度を出そうとしてね。皆で「I-KA-NI-MO」って言いたいなって。ま、所謂ダンスホール・アンセムです。 「Excuse Me」はハーブのチューンですね。最初はワン・ドロップとかのゆったりした歌ものにするつもりだったんだけど、スライ・ダンバーとセッションした時に「これがレゲエのトラディショナルだ」って言われて。で、日本に持って帰ったんだけど、最初用意したフロウじゃ合わなくてね。で、それ取っ払ってもう早口でやっちゃえって。最終的にイギリスでミックスやってくれたフルサイクルのデイヴ・アムゾにシンセベース入れて貰って完成しました。ほんとイギリスで生まれ変わりましたね。 「Pirates Anthem」は久々にNGヘッドといっしょに。DJとしてはNGから貰ったものがいっぱいあるから、俺にとっては兄貴的なとこがあって。で、二人で海賊物をやろうって話し合って、いっしょに海賊物の映画観たりしてね(笑)。 で、シングルの「連勝マイク」が来て「One Night Flower」。これはプシンの『Music Is Mystic』に入ってたのをスライ・ダンバーにイメージ伝えてオケを新たに作って貰って。歌の内容的にはよりフィットしたかなって。 「GUERRILLA MONSTER」は、前半のイケイケはこれでトドメって感じで。 ●そして小休止的にディーン・フレイザーによる「Sledge Head」に繋がると。 R:聴き味的にガーガーガーって来てたんで休憩は欲しいと思って。でもなにせスライの生ドラムに引き込まれるとこがあってね。このレコーディングの時はジャマイカでも珍しい位の緊張感が走ってて、ディーンが「今のスライを止めるな!」ってね。ま、ここでお茶入れたり、おしっこしに行ったりして後半戦に臨んで貰うと(笑)。 ●ディーン・フレイザーとはもう一曲、「Still On Journey」がありますね。これは今回のアルバムのテーマでもあるんだけど、敢えて言葉を使わずにインストで表現してますね。 R:そうですね。次のアルバムをどんな風にしようかなって思った時点で "Still On Journey" って言葉が浮かんでて。このテーマ自体、今まで生きてきて何かと端々で思うところであってね。で、ディーンに "Still On Journey" ってキーワード与えてやってもらったらどんなもんかなって。 ●前半と打って変わって後半は歌心のあるDJを聴かせてくれるチューンが多いですね。リョウ的には新境地なのでは? R:前作が終わってからは如何に自分のスタイルを残して聴き飽きさせないもんを作るか、しかも音楽的に説得力のあるもんを作りたいなあって思っててね。歌詞内容は間違いないはずなんだけど、後は音楽的にしっかり掴めてない部分を掴まないとって考えてて。「From Distance」を作るのにてこずってたのも正にその部分でね。「From...」のスタートは去年の11月位ですからね。実は「二人ワンマン II」出した後、次にプシンとやると言ったものの、このままゆっくりな曲を二つ続けたら俺ん中でバランス悪いってなってて。で、アルバム用にあがってた「連勝マイク」と「GUE-RRILLA MONSTER」をシングルで切る事になったんですよ。だからアゲの曲を出せたからこそ「From Distance」に行けたってのがあるんですよ。 ●リョウの懐の深さと成長を感じたという意味では、「From...」以上に歌っぽい「Free」が効いてるからだと思うけど。 R:「Free」は「From Distance」を作れたから出せたってのがあって。「From...」より更にもう一歩歌っても、俺の形としてアリなのかなあって。やっぱ俺、ガナリやし、元々アゲの方が得意やし、アゲしか出来んかと思ってたけど、この声で思いっきり歌ってもええんちゃうかっていうか、それはそれで新しいもんが出来るんちゃうのって思ってたんですよ。 ●スローなトラックでガナるってのが逆に男の色気が出ると思うけど。 R:そうですかぁ(笑)。やっぱ男は男らしく女は女って所じゃないですかね、いま求められているのは。当り前の事を真面目に教えてくれるから今、レゲエなんじゃないですか。当り前の事って当り前だから声高に叫ばれずに来たけど、やっぱブレたりするじゃないですか? レゲエはそれを正しく見せてくれるからじゃないですか? 例えばオカマとかもそうだけど、良い悪いは別にして、それに触れたらアカンみたいな感じがありますよね。意見ぶつけ合ったらいいのに。 ●既に次なる目標が見えてるのでは? R:今回のをやり切ったからかもしれないけど、またもう一回、“DJたるDJ”でいいんじゃないかなって思うようになって。つまりアングラな臭いっていうか、分かりにくいのもやったろかって思う様になりましたね。だから3枚目は万全を期したいので準備に時間をかけたいですね。音面も自分でやりたいし。今もちょっとやったりするけど、まだ中途半端やし。やっぱりアルバムは自分で手掛けたいですからね。そういう準備段階として俺が監修するオムニバスも作りたいし。あとこのアルバムのために正月からライヴを止めてたんで、DJ的には現場は止めるもんじゃないなって思ったし。だから秋以降はこれを引っ提げてライヴもガンガンやって行きます。ライヴやりつつ1曲1曲作品作って溜ったらアルバム作ればいいかなってね。 |