久々の王道レゲエ・チューン故か、いつも以上に開放感に満ちた歌声が魅力のPushimのニュー・シングル「FOREVER」。そして先月末にリリースされた旧友、Ryo The Skyawalkerとの「From Distance」。2002年の夏、必ずや心に刻まれるだろうこの2曲の魅力にせまる。
  昨夏の『Colors』以降、年末にはワン・ウェイ・アルバム『Music Is Mystic』をプロデュース、そして今春にはノン・レゲエのミニ・アルバム『Pak's Groove』をリリースと、レゲエ・シンガーの枠を超えて、休むことなく精力的に走り続けてきたプシン。

  「『Music Is Mystic』と『Pak's Groove』は、これからもシンガーとして長く歌い続けていく上で必要な経験として取り組んだ“企画盤”として自分の中にはあるんですよ」。プシンは、自らをステップ・アップさせるために費やした時間をそう振り返る。そして、こうした“必要な経験”と共に、この時期数多くの作品へフューチャリングとして参加したことも、彼女にとっては大きな刺激を与えることとなったようだ。「いろんな人とやっていたんですけど、そうすると徐々に『早く“自分の歌”が歌いたい』って気持ちが強くなってきて(笑)」。

  そして、この夏、満を持して新曲「FOREVER」が登場する。「ずっと(頭の中に)あった」と言う、その力強くも美しいメロディは、ホーム・グロウンとディーン・フレイザーによって具現化され、ミックスを担当した御大スティーヴン・スタンレーは、「コレ聴いて、(皆に)気持ち良くなってもらいたい」というプシンの願いに応えるべく、その間違いのない手捌きで解放感溢れる広がりで仕上げてみせた。「アルバムではあったけど、シングルとかでこんなにダイナミックなレゲエをやるのは初めて」と言う通り、それはストロングな王道レゲエ・ナンバーだ。

  そして、その「欲しかった音」に乗るプシンの歌声も、先の経験と時間の中で蓄積されていた“自分の歌を歌いたい”という強い欲望を爆発させるかの如く壮大でパワフル! そう、それはこれまでのどの曲よりも現場でのプシンを、それも深い時間の最後の方で汗をかきながら全力で歌い上げるあのプシンを思い浮かばせる、まさに多くのファンが求めていたであろうプシンの、その魅力が全開したベスト・チューンなのである。

  歌われるテーマは、プシンが昨年の末、「少し(精神的に)落ちてた」時期に心に宿ったという、様々な人々への特別な想い。彼女はそれを大きな愛情に溢れた歌詞へ昇華することで、この曲を一段と大きなものにしてみせた。この一年、ひたむきに音楽に取り組み、その中での様々な経験と想いが結実したこの曲は、プシンの確かな成長と進化を見事に伝えてくれる。ファンには勿論のこと、是非より多くの人々にも届くことを願う。ホント、繰り返し聴きたくなる名曲。

  なお、今回同時収録されるのは、「Pleasures」。『Pak's Groove』に収録されていたスローなラヴ・ソングを、“Old Denim Mix”の名のもと、全く趣きの異なるレゲエ・ヴァージョンとして制作し直したものだ。プロデュースを担当したのは「FOREVER」にも参加したディーン・フレイザー。サックス・プレイヤーとしてだけではなく、自身のキャノン・レーベルでも、フレディ・マクレガー、サンチェス、モーガン・ヘリティジ等、特にシンガー作品でスバ抜けたプロデュース才能を発揮するディーンは、実はルシアーノをはじめ多くのアーティストのヴォーカル指導、コーラス・パート・アレンジも手がける歌のエキスパート。それだけに、さすがのプシンも最初はその独特なレコーディング手法に戸惑ったと言う。「ディーンの中で描いている完成形に自分が近づけていく、という感じで最初はやっていてもよく分からない感じがして。で、出来てみて『こーゆうことかー』みたいな(笑)。厳しかったけど、やっぱり凄かったですし、やって良かったです」。

  そして、今回もう一つ紹介したいのが、リリースされたばかりのリョウ・ザ・スカイウォーカーとの「From Distance」。朝本浩文プロデュース、ホーム・グロウン演奏によるタブ・テイストなトラックで展開されるこのミディアム・チューンが、また泣かせる。「リョウ君とは、トキワの頃から一緒にやっていたけど、コンビとしてちゃんとしたものを作ってないから『なんか面白いものを作ろう』とずっと言っていたんです」。まるで歌うかのようなリョウのフロー、それに絡み付くプシンというのは確かにかなり新鮮で良い。しかし、泣けるのはこの旧友同士の共演ということではない。この歌世界だ。それは「FOREVER」にも通じるのだが、そこには時間を振り返った時に胸を裂く、かつての愛すべき人々への特別な感情が存在していて、そうした何とも言えない“切なさ”も何かこうグッとくるのだが、それよりもそうしたどうすることも出来ないモノを背負いつつも、それでも前向きに今を進んでいこうとする姿勢、それが伝わってくるところがこうグワッと泣けるのだ。まぁ、若い連中からすれば「はぁ?」といったところかもしれんが、年を取らんと分からんこともあるんだな。そう、経験が人をデカくする。