1999年12月号

オースティン・パワーズ・ゴールドメンバー /OST
[ワーナー / WPCR-11234]

人気コメディ映画のサントラ。本編で主役を務めるビヨンセの初ソロ作にして直球ファンクとなった「Work It Out」、ネプチューンズのファレルが今の勢いそのままをグルーヴに変えたような「Boys」のリミックス、そしてアンジー・ストーンによるキング・フロイド「Groove Me」のカヴァーに加え、ストーンズ「Miss You」のドレによるリミックスなんていうオマケも。この闇雲な楽しさは企画ものならでは。(石澤伸行)

スーパーソニック / ショーラ・アーマ
[ポニーキャニオン / PCCY-01558]

2年半ぶりとなる3作目。D・インフルエンスが主宰するレーベルからのリリースとなった本作は、彼らが直接手を下す楽曲こそ少ないものの、ファミリーのお披露目と欧州で活躍する新進クリエイター達が一堂に会す豪華な作りとなった。特にイグノランツによるアグレッシヴなファンク・チューンや数曲収められたデュエットものでの歌心溢れるパフォーマンスには耳を奪われる。成長著しいショーラの歌にも要注目。(石澤伸行)

ノー・ハーフ・ステッピン / シャリッサ
[ユニバーサル / UICT-1013]

98年にデビューしたガール・グループ、4キャストでリードを張っていたシンガーのソロ作。盟友ジェラルド・アイザックに加え、トラックマスターズ、ブライス・ウィルソン、タンクらが提供する旬なサウンドに対応する際のアップデイトされた歌唱は流石の一言。スロウでの泣きっぷりも最高だ。イーストサイダーズ「G'd Up」使いが話題となるも輸入盤には未収録となった「Henchmen G's」がボートラに!(石澤伸行)

バック・トゥ・ゼン / ダリアス・ラッカー
[エピック/ EICP-124]

フーティー&ザ・ブロウフィッシュのヴォーカリストがソロ・デビュー。“フーティーズに参加していなかったらこうなっていた”という本作の制作には、意外にもア・タッチ・オブ・ジャズやアンタッチャブルズの面々があたる。朴訥としていながら力強さをも兼ね添えた歌声には、現行フィリーの旨みたっぷりのサウンドが用意され、ジル・スコット、スヌープ、ミュージック、リル・モーらの参加も華を添える。(石澤伸行)

インクレディブル / メアリー・メアリー
[ソニー / SICP-173]

前作をヒットさせたゴスペル・シンガー姉妹が放つ2作目。ロドニー・ジャーキンスやウォーレン・キャンベルらが提供するサウンドは、今の空気をたっぷりと吸った現行R&Bのおいしいところ。そしてそこにふたりのパワフルな歌が乗っかる際の躍動感はフロアへの訴求度もばっちりだ。スピリチュアルであることとエンタテインすることを同時に成し遂げてしまう様は、黒人音楽の理想的な部分を体現してもいる。(石澤伸行)

ハイ・グレイド/V.A.
[ワーナー / WPC7-10148]

去年、一昨年とコアなファン以外の耳にも届くほど日本のダンスホール・レゲエ・シーンは成長したが、その奇跡を辿るには最適のコンピレーションがこれ。最新の録音物は入っていないが、シーンを牽引するアーティストの作品に絞り、更に今でもライヴやサウンドで必ずプレイされる最重要チューンが次から次に飛び出してくる。今後まだまだ続くビッグ・イベントの前に本作を聴けば、気分が盛り上がること必至。(大場俊明)

太陽 / スモール・サークル・オブ・フレンズ
[バスク/IMS/BSQC-0002]

もともと言葉とリズムとメロディの紡ぎ具合が絶妙なS.C.O.F.だが、特に自身のレーベル“バスク”を立ち上げた頃から、更に風通しのよい作品が増えている気がする。そして通算6枚目となる本作、テーマは“夏”(リリースも海の日!)。足取りの軽やかな曲が多いけど、勿論あの彼らならではのキュンと切なくなってしまうフレーズも健在。特にラスト3曲の流れが素晴らしく、何度もリピートしてしまった。(大場俊明)

インディペンデンス・デイ/ ルイ
[ブルーバード / BBRCD-002]

前号で紹介した待望のソロ・アルバム『Where Does A Bluebird Fly?』と同時期に録音された姉妹作品。だが、前作は自身のプロデュース作をまとめたもので、こちらは他人に我が身を料理させた楽曲が並ぶ。つまり前作とは工程上、視点が全く違うもの。でもそこは百戦錬磨のルイ、自身の可能性を求め、音に飲まれるのではなく、逆に音を見据え、そして真摯に向かい合っているのがよく分る。(大場俊明)

ハジメヨシザワ / 吉澤はじめ
[ユニバーサル / UICZ-3010]

コズミック・ビレッジ、またスリープ・ウォーカーの一員としても活動する吉澤はじめの最新アルバムがリリースされた。ウェザー・リポートのピーター・アースキンを叔父に持ちクラブ・ミュージック、とりわけジャズ・シーンには造詣の深い彼が作り出したサウンドは同時代的センスを内包しながらもクラブ・オリエンテッドとならない普遍的で幅広い音楽性が最大の魅力。モードに関係なく存在出来る凛とした作品。(高橋晋一郎)

ジャーナル・フォー・ピープル/ 高木正勝
[カッティングエッジ / CTCR-14217]

鮮烈なデビューを飾ったシリコムの映像を担当していた高木正勝のソロ・アルバム。アルバムとしてはニューヨークのカーパーク、ドイツのカラオケ・カークからのリリースに続く最新作。エレクトロニカの側面を介した独自のアンビエント感が映像作家のみならず音楽家としてのタレントも充分に併せ持つことを伝えている。幅広くアートの世界を渡りあえる個性的なアーティストとして益々注目を浴びるに違いない。(高橋晋一郎)

フロム・ザ・フローティング・デック /
スロウマン
[ビット・オブ・ヘヴン/ラストラム / BOH-001]

スロウマンこと鶴谷聡平のファースト・アルバムが遂にリリース。これまでに同名義でのコンピへの参加でみせてきたオリジナリティの片鱗がこの一枚に集結、そして確実な開花をしている。バランスとアンバランスの間を絶妙に漂う音の配置が“和み”だけに終始しない、聴覚を適度に刺激する繊細なサウンド・デザインを完成させている。まるで人間の微妙な体温の変化を記録したかのような静かにグッとくる一枚。(高橋晋一郎)

ファランジ・カニバル/レニーニ
[BMG/BVCP-21266]

数年前にスザーノと共に行った来日公演ではジョー・クラウゼルも驚くであろうスピリチュアル・サウンドそのものなライヴを見せたレニーニのニュー・アルバムが届けられた。今ブラジルで最も関心を注がれているアーティストのひとりだけあって、リヴィング・カラーやアーニ・ディフランコらの参加も軽く客演としてしまうような強烈なレニーニの匂いが雑多な音楽性を取り込もうとする姿勢と共に充満している。(高橋晋一郎)

I-SUS / DELROY WASHINGTON
[VIRGIN / CDFL36]

昨年再発されたセカンド『ラスタ』が素晴らしかったUKシンガー、デルロイ・ワシントンのファースト(76年リリース)。 重心の低いドッシリとしたグルーヴを紡ぎ出すリズム隊と荘激ばホーン・フレイズ、良く練り上げられた楽曲構成はボブ・マーリーの影響を色濃く感じさせる。崇高なラスタの精神が全編に漲る傑作としてセカンドと共に絶対必聴! 同発のトゥインクル・ブラザーズも要チェック![輸入盤](小池信一)

THE PROMISED LAND 1977-79 /
DENNIS BROWN
[BLOOD AND FIRE/ BAFCD 039]

アルバム『Joseph's Coat Of Many Colours』にDEBレーベルのシングルから5曲を追加した、デニスの輝かしい時代をとらえた70's作品集。この声とリディム、そしてメロディ。レゲエを何年聴き続けても、ここに収録されている曲たちから受けるインパクトはいつも不変。今まで彼を嫌いと言う人に出会ったことが無いんです。つまりデニス・ブラウンは必聴、というのがレゲエ・リスナーの定説。[輸入盤](武田洋)

PROPA DUBWISE PART 1 /
ENTEBBE SOUNDS MEETS MAFIA & FLUXY
[ENTEBEE SOUNDS / ESLP-01]

U.K.のルーツ・レゲエ・サウンドシステム、エンタビーがプロデュースした初アルバムが登場。演奏はマフィア&フラクシーが中心となったバンド・スタイル。ダブ・エンジニアにはガシーPが参加しており、エフェクトの効いたダブ処理が特徴だ。ロングディレイやディープなリバーブ音までダブ・ファンには嬉しいミックスが満載。リディムもステッパーからワン・ドロップまでと構成もきちっとしている。[輸入盤](長井政一)

SANDIEGO VIBES / MARTIN CAMPBELL & HI TECH ROOTS RADICS
[CHANNEL ONE U.K. / TBXLP 020]

チャンネル・ワンU.K.からのM・キャンベルの新作。お馴染みのダブ・シリーズに比較すると、今回の作品はダブと言うよりインストゥルメンタルと表現した方が適切のようだ。曲によってシンセサイザーをメインとしたものからサックスを起用したものまで雰囲気も様々。音的にはいつもと変わりないチープな打ち込みスタイルだが、それぞれのビート、アレンジが異なっていて良い雰囲気を出している。[輸入盤](長井政一)

LOVERS ROCK-TONIGHT / JERRY HARRIS
[LISTEN UP / ECHO INTERNATIONAL / ECCD669]

ワッキーズを始めとする80年代のニューヨーク・レゲエ・シーンの重要人物、ジェリー・ハリスのソロ・アルバム。ジャケットはなんだかなあ、って感じだけど、タイトル通り、ラヴァーズ・ロック・テイスト満載で中身はなかなかオツな仕上がり。でも当然、上っ面の愛の世界だけを歌っているのではなく、内容は真摯そのもの。彼の人徳なのだろうか、参加メンバーもかなり多彩な面子が集っている。[輸入盤](大場俊明)

FROM RASTA TO YOU / RAS SHILOH
[VP / PENTHOUSE / VPPHCD 2186]

いきなり懐かしのG・シルクの“テンポ”リディムで幕開けしたと思ったら、途中からシャイローが絡んでデュエットとなるオープニングでまずびっくりするはず。とにかく声が似てる。他の曲も凄く出来が良く、全編つい一緒に唄ってしまう程のメロディの良さ。ジャケットはイマイチだけど、内容は今年上半期中一番好きかも。ラスタ派な人々だけでなく、ラヴァーズ・ファンも絶対気に入るはず。[輸入盤](鎌田和美)

フィール・ア・レゲエ:ガールズ / V.A.
[カッティングエッジ / CTCR-13176]

昨年夏、女性アーティストのコンピ盤『Dancehall Divas』を手掛け、プロデューサーとしても手腕を発揮したナーキが新たに制作した、その続編とも言えるコンピ盤。Baby BabyやCherylなど、ナーキとも縁のあるアーティストやナーキの地元=名古屋で活動するアーティストを中心に、彼女らの才能を巧く引き出している。包容力のあるトラックは前作同様、小松一也と共同で制作したもので、ナーキ色が隅々まで出ている。(大場俊明)

ストレイト・アップ!シストレン/ V.A.
[シストレン / MTCH1018]

フィメイル・レゲエ・シンガー“シスター・カヤ”が99年に立ち上げたレーベル“シストレン”のコンピレーション。ベテランから新人まで全国で活躍する女性レゲエ・アーティスト13組を収録。ファイヤーハウス・クルー、ジャミーズ等がトラックを担当し、ジョグリン、ラヴァーズ、コンシャス系とサウンド・バリエーションも豊富。レーベルの信条である“女性アーティストのレベル・アップ”は確実に前進している。(小池信一)

ド・レ・ミ・ロッカーズ /ハカセ-サン
[ナゴミックス/NGCA-1010]

“とにかくアーリー・レゲエの感じが出したかった”という前作から1年、マイペースなハカセ・サンにしては予想外に早くもセカンドが到着。前作の時のヤンチャっぽい気分は抑えられ、ゆるやかなリズムとメランコリックなメロディの曲が大半を占めている。でもこの音やフレイズは誰が聴いてもハカセによるものと分ってしまうところが凄い。因みに今回のゲストVo.はBDの大野由美子。きっちりハマってます。(大場俊明)

CHAMPION SOUND / V.A.
[VIRGIN / 7243 811 7811-9]

侮れないコンピ盤。副題が「A Selection Of Vintage & Today's Reggae」。ヴィンテージの方は、バニー・リー、ジョー・ギブスらのプロダクションから集め、また新しめの方は、ジャミーズやマッシヴB等からセレクション。手当り次第にブッ込んだ感もあるが、あらゆるスタイルを飲み込むこの懐の深さこそ“レゲエ”なんだと再確認。15曲目のRun DMC feat. Yellowman「Roots Rap Reggae」が全て。[輸入盤](武田洋)

AFRICAN ROOTS ACT-2
[BCP/WACKIES / W-617-A]

『Afican Roots Act 1』の次、Act 2の再発。Act 1はかなりLee Perryを意識した感じだけど、こちらはもっと正攻法で、よりワッキーズらし音作りで、硬質さ、重さが実によく感じとれる。ハニー・ドリッパーズやデニスが唄ってた「Sea Of Love」のカヴァーやリメイク・リディム等、オリジナルだとカリブ海が見えてくるような曲なのに、ここでは結構物騒がせな世界が見えてくる。そこがまたワッキーズらしいのだが。(鎌田和美)

YOU CAN'T KEEP A GOOD MAN DOWN /
U BROWN
[VIRGIN / CDFL32]

79年にフロントラインからリリースされたU・ブラウンの3rdアルバム(ジャマイカ盤は『ウエザー・バルーン』のタイトルでリリース)。ロッカーズ・スタイルの戦闘的なダブをバックに軽快なトースティングを聴かせてくれる。彼の代表曲「ウェザー・バルーン」や“ティク・ファイヴ”オケの「ブロウ・ブラザー・ジョー」など良曲多数。フロントラインにはまだまだヤバいブツが沢山あるハズ。至急再発求む![輸入盤](小池信一)