8月24日に久々に開催される「レゲエ・ジャパンスプラッシュ」に若さ故の美声と味まで兼ね備えたシンガーに成長したカシーフ・リンドが待望の再来日する。更に来日記念アルバム『Music Is A Part Of Me』もリリース。既にラジオでヘヴィー・プレイされているムーミン、三木道三と共作となる話題のタイトル曲や、ヘヴィービートならではの端正に練り込まれたオリジナル・チューン、更にキラーなカヴァー・チューンも満載したアルバムの素晴らしさにせまる。 |
![]() この2作がどういった“違い”を持つのかというと、厳密な意味で本作が“最新楽曲集”となり、また先の『Love Knows The Way』からも忘れ難き名曲佳曲をセレクトした、という絶妙な内容の“日本盤”となっていること。“ヘヴィビート”から“オーバーヒート”(この2つの名前、何となく似てますネ…そうでもないか)に届いた音源は実に38曲! これはいかに彼=カシーフが才能豊かなシンガー/ソングライターだからと言っても、また彼の父=ウィリー・リンド(言うまでもなくレゲエ界の重鎮プロデューサー。これまでにもボリス・ガーディナー、デニス・ブラウン、J.C.ロッジ、ベレス・ハモンドにマキシ・プリーストらの代表作を手掛けた、言うなれば“ラヴァーズ・ロックの名伯楽”)がいかに実績、経験豊富なプロデューサーだからと言っても、簡単に出来る事ではないのです(何てったって1〜2ヶ月そこらのハナシ、ですからね!)。しかしながらEC氏が撮った“ヘヴィビート”スタジオ潜入取材ヴィデオを見て、「ナルホドな…」と納得させられた次第。 |
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カシーフはレコーディング・スタジオの外に、“自分専用”のプリプロダクション・ルームを持っていて、そこにはサンプラー(MPC3000、MPC2000)を始め、シンセや数々の楽器、機材が所狭しと配置され(と言っても、筆者が知る限り、かなりいいバランスで置かれていて几帳面なんだなー、と感じさせられました)、その奥にはヴォーカル・ルームも…。で、ここで何が言いたいのかというと、別に機材が充実してるから、なんて話ではなくて、その説明をしている彼=カシーフの顔が凄く“イキイキ”としていた事、なんです。毎日毎日、曲作りをしてRECすることが楽しくてしょうがない…そんな感じ。「これは新しいリディムなんだけど」と言いつつ、ニコニコしながらサンプラーのメモリーを操っている姿とか、もう“音楽馬鹿”そのものというか…。そう、カシーフ、そしてその父ウィリーと言えば、何かと過去の“偉業”について語るスペースが多くなり(それはそれで大切な事ですが)、カシーフも“サラブレッド”として扱われる訳ですが、彼ら親子はそうした過去や血筋といったモノの上にアグラをかくような態度はまったく伺えません。ただ“グッド・ミュージックをクリエイトして発信していく”それだけを考えている真の音楽馬鹿親子、なのですから。そう、そうした“いい環境”も全て彼らが地道に築き上げてきたのです。
今年でキャリア17年目となる23歳(因みにバースデイは8月29日)の彼はボリスやベレスのようなプロフェッショナルなアーティスト、そして誰よりも厳しい父の教えを受けつつ、自分なりのスタイルに磨きをかけ“天才少年シンガー”から“より広いテーマで歌える大人のシンガー”へと脱皮しました。それは特に前作で明らかだった訳ですが、今作ではより“唄に重み”が増した印象です。 片思いの切なさは「Leave A Little Love」や「Where Do I Fit In」で、あやうい気持ちは「Maybe」、捨てられた思いを「Steppin」で、全てを捧げる思いを「You Are」や「You're All I Need」でうたい、セクシャルな表現も「Feel The Fire」でキメたかと思えば、「World Crisis」のようなコンシャスなメッセージ・ソングもあり、また“お楽しみカヴァー曲”(そういえば前作には無かったですね…)では、ジュニアーのダンス・クラシック・チューン「Mama Used To Say」、そしてお馴染み(!?)ジャクソン5の「Never Can Say Goodbye」と、スキの無い内容になっています。プロデュースは勿論父ウィリーが中心となり、その父が信頼するスライ&ロビーやロビー・リンらもサポート。そしてカシーフ自身もトラック作りに関わってたりします(DJとのコンビネーションも相性のいいDon Yuteとの2曲も有り)。 そして…言い忘れてましたが、今作はタイトルにもあるように、あのMoominの「Music Is A Part Of Me」をカヴァーしたカシーフ・ヴァージョンが何といっても最大の“話題曲”なのです。ポジティブで素晴らしい曲とカシーフもホレこんだこの曲のテーマは正に“音楽命”の彼(このアルバムにも“僕から何をとっても構わないけど、音楽だけは奪えないよ!”とうたった曲、「Take Away」がある位)に相応しい…。 伸びのいい美声と、彼ならではの歌い回しの冴えたこの曲の日本語ヴァージョン(サビのみ。他は英語。フルに英語のイングリッシュ・ヴァージョンはこの曲とのカップリングで向こうでも7インチ盤がリリースされています)は、この夏、色んなところで耳にすることでしょう。そして彼が何故この曲をうたったのか、このアルバムの全曲をじっくり聴いて考えて欲しいものです。 |