アトランティック盤の「マイ・フェヴァリット・シングス」だったら後のインペリアル盤のライヴ・ヴァージョンの方が黒澤明の『野良犬』みたいに断然にいいと僕はおもう。そう、ジョン・コルトレーンの話だ。サン・ラーのヴァージョンも、彼としてはえらく真っ当なオーソドックスさでいいんだけどね。で、なんでまたコルトレーンなのかと云えば、Tico
& Pardonという“珍コンビ”のデビューCD、コルトレーンの曲をカヴァーしてるからだ。それで、まあ、コルトレーンを久しぶりに聴いてしまったというわけ。このカヴァーは聴いたことがない曲だけど、これがなんとも、らしくなくてトボけていていいのだ。夏だな…、夏の夕暮れ時、もちろん、自然の中で黄昏の夕日を眺めながら立ちションしつつ人生の何たるかを憶う情景。アアッ、あと何回こうして自分はチンポを振るのだろうかという推測をしたりして…。それにしてもだ、初期の黒澤明作品は完成度以前のエネルギーが爆発しているから、今のこうしたフヤケ
タ時代の現在、新鮮な驚きがある。刺激になるなあ。そう、Ticoはリトル・テンポのTicoで、Pardonはヤン富田プロデュースで98年にデビューしてるパードン木村。去年の『フローズン・ハワイ』はエアコンなエキゾチック具合が絶品な傑作であった。パードン木村は謎の人のような気がする。背が高いらしくて犬を飼っているサーファーでもあるらしいし、自宅にスタジオもあるようでクルマもなんかスゴイらしい。リトル・テンポは新作録音中だという。それにしても、このCD、3曲目の「ホット・ロッド・ストンプ」はヤンチャな乱暴サウンドだなあ。サイコビリー・テクノ・トランス・ストンプ・ミュージックというか…ねえ、J.
G. バラード『クラッシュ』をおもい浮かべてしまったけど、ジャクソン・ポロックの抽象画みたいな、ジャクソン・ポロックがクルマで暴走して交通事故死した瞬間とかも想像できるし、危険だ。ここでTicoがギターを弾いているんだけど、リトル・テンポからおもいっきり遠いところで壊れて奏でているからリトテン・ファンなら気になる音だぞ。菊地成孔の曲もいい。グイッグイッとくる。ゴダールの『アルファヴィル』だな。このように、音の印象を勝手に映画に結びつけて楽しむのが流行っている。まあ、僕の中でだけなんだけど…。狂った果実な夏、タルコフスキーだったら『ストーカー』がいい。ねえ、こうしてTico
& Pardonの『ティクパ・スタイリー』を聴いていたら「捏槃境」とか「桃源郷」とかってどんな所なんだろうかねえ。オーガス
タス・パブロとかジャッキ・ミットーとかキング・タビーとかに逢えるのかしらねえ、ハカセ。ちなみに、レゲエとかダブの要素はいっさいないサウンドだ。ある種、これも都市型ハコ空間コンクリート・ジャングル脳内散歩トランス・ミュージックなんだろうと、勝手な妄想が豊かに耕かされてしまった。 |