なんと言ってもR・ケリーのスキャンダルが、巷のゴシップを独占しているのですが、この容疑(そう、判決が出るまでは、容疑ですよ)、なんと20数種に及ぶのだが、メインは今年2月に浮上した1998年に撮ったとされる、14歳の少女とのセックス・テープがそれだ。インターネットや、路上のブートレッグ屋でも流されているこのヴィデオだが、シカゴの地元紙に、匿名で送り付けられたもので、それがゴシップ欄に載り、警察が介入した。アメリカでは、いわゆるチャイルド・ポルノグラフィは、所持するだけで犯罪になるのだが、出演者が本人となると更に罪が重くなるのは言うまでもない。もし、ケリー氏が有罪となると、最高15年の刑になる。しかし、多くの疑問も残る。私もこのヴィデオが警察に押収された時、ニュースで少しだけ見たが、その男優がR・ケリーと判断するのには、危険と感じた。そっくりなヤツを使った、こちらでは有りがちな、エセ・有名人ポルノの類いかも知れない。しかし、警察に押収された筈のテープが出回るのは、おかしいし、ケリーのキャリアを嫉む輩の仕業というのは明らかだし、なぜ、今彼がこういった容疑でやり玉に上がるのかというのは、疑問が多すぎる。事実、ケリー氏は、故アリーヤが15歳の時に結婚していたカドでは、なんの刑事的責任を問われなかった。ストリートの反応も、ムカツク。それまで、ケリーの曲で溶けていた連中が、口をそろえてケリーは悪いやつだと言っているし、自粛して、ケリーの曲をかけるのを止めているラジオ・ステーションもある。皮肉にも、今週、元ビジネス・パートナーと揉めているウッディ・アレンが、裁判で、養子との関係が再び持ち上がっていたが、彼こそ刑務所に入っているべきである。児童福祉法では、考えられない事だが、ビジネス的にパワフルな彼というだけで、エンターテイメント界で、現役で仕事をして、なんのおとがめもない。昔の中国やローマの皇帝の様な傍若無人ぶりである。日本では、ロリコンなんて市民権を得ているみたいだが、こういった事件はシリアスであり、子供の人生を歪めてしまうというインパクトは、無視できない。そういった意味では、ケリーの公正なお裁きは望まれるが、なにせ彼はブラックだからね?

●今月のジャム
 なんとクール・ハークが突如、NYのクラブ・シーンに一夜だけ復活した。グルーヴ・マーチャントなるパーティのゲストで、5/24、チャイナ・タウンの外れのスペース、ファンに登場した。ヒップホップのDJスタイルをクリエイトした彼の、ヴィンテージ・プレイは、今のファンには理解しづらかったみたいだったが、そのエッセンスは、やはりライヴでしか感じられないものだった。もはやヒップホップ界から、アウトキャストになりつつあるDJだが、彼の様な存在が若い世代をインスパイアし続ける環境をもっと望みたい?

●今月の逮捕
 ワイクレフ・ジョーンが、6/4に行われた、ラッセル・シモンズがオーガナイズしたデモで逮捕された。このデモは、市長、ブルームバーグが予算から、市立の学校のバジェットを削減する事に反対し、ラップ・アーティスト、ジェイZ、ノリエガ、チャックD、R&Bシンガー、アリシア・キィなどがスピーチするなど、大規模なモノだったが、スピーチの順番を待っていたジョーンのクルーと警察の小競り合いがエスカレートして、逮捕に至ったらしい。ニュー・アルバムで、益々エセ・マーリー振りを発揮している彼だが、そのカドで逮捕されるべきだろう?

●今月の写真 
 またまた、前振り無しでアルバムをリリースしていたグランド・プーバだ。流石にライムのセンスは、輝いている力作だが、ラジオじゃかからないし、一体、このシーンは、どうなってるのかね。もう1人のヴェテラン、AZもニュー・アルバムをドロップ。無視される事は、必至?



沼田 充司
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DJ/プロデューサー。
レーベル<ブダフェスト>主宰。
雑誌『ブラスト』でも執筆中。
ニューヨーク在住。
(Photo by Tiger)