1999年12月号

フリーク・オブ・ネイチャー/アナスタシア
[エピック/EICP-77]

肌の色、容貌、そして「モータウンさえ知らなかった」というこれまでの音楽的環境と、彼女を取り巻くものの悉くが、本作から飛び出してくるソウルフル極まりないヴォーカルとは反対のベクトルにある。自らがタイトルに“変人”と冠した、2年振りとなる2作目から聞こえてくるのは、圧倒的なまでにダイナミックな歌唱だ。FIFA会長をも魅了したというその圧倒的な実力は、本作で世界をも支配するに違いない。(石澤伸行)

インスタント・ヴィンテージ/
ラファエル・サディーク
[ユニバーサル/UICU-1025]

トニーズを脱退後ルーシー・パールを率いた以外にも、ここ数年のR&B界を飾る多くの重要なソロ・ワークを展開してきた彼がついにソロ・デビュー。先行シングル「Be Here」ではディアンジェロを招きアーシーな振る舞いを見せ、他曲でT・ボズやオーガナイズド・ノイズらと共に繰り広げるのも、かつての軽妙なソウル芸ではなく、自ら設定したテーマ「ゴスペルデリック」が示す通りの重量感あるファンク道だ。(石澤伸行)

サムワン・トゥ・ラヴ・ユー/ラフ・エンズ
[エピック/EICP-17]

2年振りのセカンド作。コーリー・ルーニー手掛けるタイトル曲やキャラクターズらによるスロウ曲では、ラフな振る舞いの中にセンチリズムを散りばめた従来路線を踏襲、バウンシーなアップ群にも文句無しの相性を見せつける。前作の成功からくる自信の表れか、自前プロデュース曲が大幅に増えていて、そのプロダクションの悉くが自らのヴォーカルの魅力を様々なアングルから照らし出しているのにも要注目。(石澤伸行)

ライフ・ゴーズ・オン/ドネル・ジョーンズ
[BMG/BVCA-21105]

3年振りとなるサード・アルバム。前作からの大ヒット「U Know What's Up」をふまえたか、先行シングル「You Know That I Love You」を始め、アルバムの方にも、自らのシルキーなヴォーカルを活かしきった心地よいビート感に包まれたトラックが並ぶ。プロデュースを手掛けるは前回と同様、アンタッチャブルズ。主役の持つ繊細な味わいを損ねずに、これだけ作り手を意識させるクリエイターもいまい。(石澤伸行)

アシャンティ/アシャンティ
[ユニバーサル/UICD-6042]

アーヴ・ゴッティのマーダー・インクが満を持して送り出すシンガーのデビュー作。ジャ・ルール、ビッグ・パン、ファット・ジョーといった強者との客演で、そのお株を奪わんばかりのパフォーマンスを見せつけてきた彼女だが、本作でお披露目となったのは、可憐な印象さえ抱かせる涼しげな声。20歳にして早くもソングライトのスキルを駆使して自らの世界を確立してしまった彼女からは、もう目が離せそうにない。(石澤伸行)

ロデオ・キャーン・ドーン/V.A.
[サブロク/カッティングエッジ/CTCR-13167]

現在、埼玉のマキシマムのセレクターとして活躍するPregeeが音頭をとって、Rude Boy FaceやLady Qといった既に名のあるアーティストだけでなく、日本各地で活躍するイキのいい若手アーティストを積極的にピックアップしたオムニバス盤。トラックはクライマックスの上代学と注目株のID & The Galaxysが担当。俄然、大阪、横浜のアーティストが牽引してるこのシーンだが、根はもっと深いとこにもあるのだ。(大場俊明)

カーム・プレゼンツ・コンセプション・フォー・ザ・ストリート・ノイズ・シーン 3/V.A.
[KSR/KCCD-061]

カームがコンパイルするコンピ・シリーズの第3弾。今回は遂に全編日本人アーティストで構成。サイレント・ポエツ「Moment Scale」のダブ・マスターXリミックスといったレア・テイクから、カームの別名義プロジェクトであるオーガンランゲージ、そしてバヤカにチャリ・チャリ、更にはブルー・ハーブ・レコーディングスのワチャルに至るまでカーム・テイストで集められた素晴らしい楽曲ばかりが並ぶ好企画盤。(高橋晋一郎)

2000ブラック・プレゼンツ・ザ・グッド・グッド VOL.2/V.A.
[KSR/KCCD-064]

4ヒーローのディーゴが個人的に運営するレーベル、2000ブラックのコンピ第2弾。ディーゴ・コネクションが炸裂したウエスト・ロンドンの最新フォーメーションのパッケージといった趣は相変わらず。ブロークン・ビーツなんてタームよりもオリジナリティを持ったソウルフルなサウンドが中心だ。ドムはニックスをフィーチャーしてパトリース・ラッシェンのクラシック「Music of the Earth」のカヴァーを披露。(高橋晋一郎)

DJミックス 1/2 [MIX.SOUND.SPACE]/
田中フミヤ
[ワーナー/HDCA-10102〜3]

実に6年振りとなる田中フミヤ名義によるミックスCD。ここ数年に渡る新宿リキッド・ルームや大阪ロケッツといった彼馴染みのヴェニューや海外ツアーでのプレイ音源から10〜30分程度を抜き出し、12セット分の音源を収録。この様なアイディアのミックスCDは恐らく世界初だろう。DJセットにおける所謂“流れ”よりも音と音との“間”や“重なり”に新たな創造性を求め、パーティーに拘るDJの可能性の記録。(高橋晋一郎)

リフィックス/バック・ドロップ・ボム
[トイズファクトリー/TFCC-86104]

ラウド・ロックの雄、BDBのリミックス盤。ある意味、固定ファンを裏切りかねないこのパラノイアックとも言えるリミックス陣の面子を眺めていると、逆にこれこそ本来のミクスチャー魂炸裂とも言えるのだろう。その最強の布陣は、DJ Watarai、Tsuchie、Mighty Crownと言った本誌読者的なものから、DJ光光光、Thurston Moore、Krust、更に意外にも彼らの憧れだったというIncogniteのPara: Diso等々。(大場俊明)

インナー・フィルム/バヤカ
[ファイル/FRCD-104]

バヤカのニュー・アルバムが到着。多彩なスタイルを取り込んだ無国籍なサウンドでありつつも確実に彼らの音楽性感じさせるその個性は極めて特殊。タイトルでも示されている様に今回は更に音がイメージを喚起させていくサウンドトラック的な要素が強い。様々な国籍のヴォーカリストや数々の民族楽器の導入、官能的なストリングス等々。あとは聴き手のイマジネーションによってそれぞれに楽しみ方があるだろう。(高橋晋一郎)

ターシャズ・ワールド/ ターシャズ・ワールド
[エイベックス/CTCR-13166]

ヨーロッパ全体を股に掛けた活躍を継続中のフル・クルーが全面的にバックアップする女性シンガーのデビュー作。UKソウル的メロウネスとオーガニック・ソウル風な質感がほどよくミックスされたサウンドの上で舞うのは、アップにもスロウにも高度な適応力を伴いつつも、個性を際立たせることを忘れない歌唱。間違いなくメアリー・J・ブライジを彷彿させるラフで寂寥感たっぷりの喉使いが印象的な歌い手だ。(石澤伸行)

INNOCENT BLOOD / DUB JUDAH
[DUB JOCKY / DJCD-007]

UKのマルチ・レゲエ・ミュージシャンの久しぶりの新作。プログラム、ヴォーカル、ギター、パーカッションと殆どのパートを1人でこなしてしまう自作自演もの。時間を掛けて録り貯めていた作品は、どれもグッドかつウィキッドなデジタル・ルーツだ。アバ・シャンティ・アイのサウンド・システムでもヘヴィ・ロテーションされるナンバー等、キラーなチューン満載。参加ミュージシャンにラス・ニコの名も。[輸入盤](長井政一)

SONGS FROM THE GROWING / HYDOROPONICS
[DUB HEAD / DBHD-026LP]

UKのダブヘッドからリリースとなったハイドロポニックスの新作。ステッパー、ワン・ドロップ等のナイスなヘヴィー・ウェイト・リディムに多彩なヴォーカル陣をフィーチャーし、ニュー・ルーツというよりも、オーセンティックな仕上りの内容でメチャ渋。同時にダブ・アルバムもリリースされていているので、こちらも要チェックのこと。なおCD盤はヴォーカルものとダブをあわせた2枚組になっていてお得。[輸入盤](長井政一)

FROM PARIS WITH LOVE/SKATALITES
[CELLULOID / 13692-2]

スカをクリエイトし、ジャマイカ音楽シーンの礎を築き上げた重要グループ、スカタライツの約2年ぶりの新作。タイトルはライヴ盤風だが、れっきとしたスタジオ新録アルバム。ドン・ドラモンド、ジャッキー・ミットゥ等、重要メンバーがザイオンに召された現在、オリジナルとはとても呼べない姿だが、演奏はかなりゴキゲンで安心して聴ける。「ロシアより愛をこめて」「ガンズ・オブ・ナバロン」等も再演。[輸入盤](小池信一)

LIVE ON THEBATTLEFIELD /
ANTHONY B
[JAHMIN' / JAHCD66]

去年7月、フランスでのステージの模様を収録したライヴ盤。「ファイヤー・ポン・ローマ」「フン・シング」等、代表曲がキッチリ収録されており、ベスト・アルバムとしても楽しめる。“神がかり的な魅力”とでも言おうか、アンソニー自身が強く意識している故ピーター・トッシュが放っていたパワーの様なものを彼の唄から感じとる事が出来る。バックを務めるスター・トレイル・バンドの演奏もGood![輸入盤](小池信一)

THE BEST OF SIZZLA-THE STORY UNFOLDS / SIZZLA
[VP / VPCD-1644]

彼のベスト盤なら言うまでも無く素晴しい。最近の絶叫型の激しいスタイルも中々格好良いのですが、ちょっと前の非常に強く唄を感じるスタイルも良いものです。最近シズラのファンになった方は、彼の奥深さを感じさせてくれるスタイルに感動する事でしょう。以前からずっと聴き続けているファンの方は、懐かしさが込み上げ泣き出す事でしょう。とちょっと大袈裟ですが、とても良いアルバムだという事です。[輸入盤](鎌田和美)

MAD PROFESSOR MEETS SCIENTIST AT THE DUB TABLE / SCIENTIST & MAD PROFESSOR
[ARIWA/ ARILP160]

久しく目立った活動をしてなかったサイエンティストとマッド教授が初共演ですよ!! しかも、両者の共通項とも言える変なマンガジャケットっていう所がまたニクイ。音の方は当然二人によるミックスなんだけど、両者の“らしさ”が見事に混じり合った感じで、共演して化学反応を起こしたという事なのでしょう。最近のジャズ系等と呼ばれる音が好きな人にも受けそうな一枚。なかなか美しい音世界です。[輸入盤](鎌田和美)

ホッコ・アンセム/ホッコマン
[サブロク/カッティングエッジ / CTCR-13157]

前触れもなく突然ステージにあがったり、電波をジャックしたりと、何かにつけて話題を振りまく謎の覆面集団。その覆面に隠された本当の姿は誰も知らないが、ステージを観れば、嫌でもその姿が脳裏に焼き付いてしまう。そんな彼らが無謀にもアルバムを作ってしまった。さて肝心の音の方はと言えば、ふざけた容姿とは裏腹に意外にも真剣。でも、いつの間にか彼らの罠にハマってホッコリさせれらてしまうのだった。(大場俊明)

ライフ/シスター・カヤ
[シストレン/ポリスター/ MTCH-1016]

既に貫録十分といった感じのベテラン女性シンガー、シスター・カヤの3枚目となるフル・アルバム。行動力抜群の彼女ゆえ、今回も長期に渡り単身ジャマイカに乗り込み、豪華アーティスト(モーガン、ルシアーノ、ディーン・フレイザー、グラディ他)と共に制作。今回は音楽的冒険は避け、彼女本来の道=ルーツ・レゲエを目指したようだ。やはりこうした音の方がより彼女の唄が自然に響き渡る。(大場俊明)

サムシング・ニュー・アンダー・ザ・サン/ザ・シルバー・ソニックス
[ポジティヴ・プロダクション / HMS0027]

前作から約2年、埼玉のスカ・バンドの2枚目。前作で感じた味とも言える素朴な素人臭さと比べれば、演奏力は随分向上。歌ものに関しても、前作はハイトーンな関野洋江がメインだったが、今回は野太くもメローな声質の安藤健が前面に出たことにより、ぐっとしまったイメージに。曲はもう少しタイトにまとめた方が好みだけど、後半のカヴァー連発につい耳が行ってしまうが、オリジナル曲のクオリティもなかなか。(大場俊明)

エニシング・フォー・ユー / フレディ・マクレガー
[ビクター /VICP-61865]

来日回数は既に20回を越え、ここ日本に於てもトップ・クラスのレゲエ・アーティストとして人気が高いフレディ・マクレガーの最新作。美しいメロディ・ラインとベテランらしいスムーズな唄いまわしはラヴァーズ・ロックの良いお手本としてジックリ聴いてもらいたい。どのナンバーもレゲエに対する愛情溢れる佳曲ばかり。全19曲中既発曲は4曲のみ。8月には再来日の予定なのでシッカリ予習してください。(小池信一)

ゲット・ディクショナリー:ミステリー / バウンティ・キラー
[ビクター/ VICP-61870]

こちらはシリーズその2で、内容はWarネタ以外のもの。特にゲットーの代弁者とされる彼のヤバさを打ち出した曲を中心に構成。やはり上半期に於て圧倒的話題の "Diwali" リディムの「Sufferer」がかっこいいけど、このシリーズのメイン・タイトルになっている「Ghetto Dictionary」、そして本作のタイトルに使われている「The Mystery Is The Man」等々。その1、その2共、やたらとジャケのインパクトが強いですね。(鎌田和美)

ゲット・ディクショナリー:アート・オブ・ウォー / バウンティ・キラー
[ビクター/ VICP-61869]

約2年半振りの新作は何と2タイトル同時リリース! その1は、タイトル中の“War”という言葉に象徴されるWarネタ。チューンで構成されたされたMr.WarlordとしてのBounty Killerのヤバさ満載。"X-5" の「Just Dead」、"Hot Wax" の「Blood Bath」、Shabbaの「Shine & Criss」のオケを使用した「Top On Top」等のヒット曲に、現時点では未発表ながらJAではDubでかかりまくりの「Killa Is A Killa」等を収録!!(鎌田和美)