![]() (1) "In Dub Vol. 1" Twilight Circus Dub Sound System [M Records] |
![]() (2) "Bin Shaker Dub" Twilight Circus Dub Sound System [M Records] |
![]() (3)"Horsie" Twilight Circus Dub Sound System [M Records] |
![]() (4) "Dub Voyage" Twilight Circus Dub Sound System [M Records] |
![]() (5) "Volcanic Dub" Twilight Circus Dub Sound System [M Records] |
予備知識無しに手にしたCDは、ラメの色紙やクレヨンを使って手作業で作られたジャケットの『Horsie』(3)。裏ジャケに写る6畳位の自宅スタジオにはアナログシンセやら何やらジャンクな器材がごちゃごちゃ並んでいる。しかも連絡先はテクノが盛んだが、デタミネーションズにライヴをやってくれないかとオファーが来た事もあるオランダ。さて、どんな音?…と、Twilight
Circus Dub Sound System=Ryan Mooreとの出会いはそんな風である。年齢は不祥だが、たぶん現在30代半ば。小さい頃からインドや西インド諸島からの移民が多いカナダのバンクーバーに住んでいたRyanにとって、隣近所でいつも流れていたロック・ステディは幼い頃から非常に身近な音楽だった。81年にレゲエ・バンドを結成し、85年頃にはダブもやっていたそうだが、87年に実験的なロック・バンド、レジェンダリー・ピンク・ドットにドラマー兼ベーシストとして加入。スタジオ・ミュージシャンとして様々なオルタナティヴ系バンドの録音にも参加しつつも、やっぱりそれと平行して一人でレゲエのプロジェクトもやっていたそうだ。 92年、「ミュージシャンとしては面白い仕事が沢山あったからね」という理由でオランダへ移住。自宅にスタジオを作り、95年、僅かなゲストを招き『In Dub Vol.1』(1)を発表。70年代のルーツ・レゲエを基本にしながらも、どこかほのぼのしたサウンドという路線は、この時点で既に完成している。その後は完全に一人で演奏、ミックスを行い、現在アルバムだけでも8枚を発表(『In Dub Vol.1』、『Other World Of Dub』、『Bin Shaker Dub』(2)、『Dub Plate Selection』、『Horsie』、『Dub Plate Vol.2』、『Dub Voyage』(4)、『Volcanic Dub』(5)。 昨年末にディジュリドゥ奏者Gomaの誘いでふらりと来日した際にRyanに取材したが、サウンド同様、笑顔の堪えない遊び心いっぱいのオジさんだった。以下、その時のインタビュー。 ●影響を受けたレゲエ・ミュージシャン、ダブ・エンジニアは? Ryan(以下R):キング・タビー、サイエンティスト、プリンス・ジャミー、ロビー・シェイクスピア、ファミリー・マン。特にファミリー・マンを聴いてベースを覚えたようなもんなんだ。 ●あなたの音楽は70年代のジャマイカのレゲエともイギリスのものとも微妙に違うし、ドイツのリズム&サウンドの様なエレクトロなダブ・ミュージックとも違い非常に温かく個性的ですね。 でも実際、サウンド面ではレゲエの魅力の本質を射貫いていると思います。 R:僕のサウンドは所謂クラシックな音と現代のものが混ざっていると思うよ。全て音が語ってくれる事なので、事細かに解説はしないけど、僕が音楽を作る時は前もってアイデアを捻り出してるんじゃなくて、スタジオに入ってから湧き出てくるインスピレーションで作っているだけなんだ。 ●音の中にメッセージを込めているのですか? R:メッセージは全くないよ。音楽自体やグルーヴを主体に考えているんだ。本当言うと、1曲だけ環境破壊についてのメッセージが含まれているけど、他の曲には全くないよ。でも、アルバムはコンセプトの様なものはちゃんとあるんだ。例えば『Horsie』はもちろん馬を連想させるだろ? ニュー・アルバムの『Volcanic Dub』のコンセプトは「火山の周りに村があって、ある日その火山が爆発して、溶岩が噴出してパニックになっちゃう。でも、幸いな事に被害が出ないで、村人が歓喜の舞を踊る」というちょっと非現実、超現実的なものなんだ。でもこのコンセプトもスタジオで曲作りをしながら出来上がったものなんだよ。 ●本当に1人で全ての楽器の演奏や録音、そしてミックスまでやっているのですか? R:うん。マルチ・トラックを使って。あのドラムもそう。大変だけど自分でやっているよ。1〜3個のマイクを使ってね。実はドラム・パートの殆どはバンクーバー時代に録音した物なんだ。友人がエンジニアをやってくれてね。でも、今は自分で全部やっているんだ。ドラム録音を自分で演奏しながらやるには相当なカンが必要だね。どの位のレベルでどの位置にマイクを配置するかとか。でも、エンジニアがいて録音するより返って良かったりもするんだ。もしドラムの音がうまく録音されていなかったら、その曲が台無しだからね。 ●手触りはチープなんだけどファットなベースも素晴らしいですね。人柄が出てるのかな(笑)。 R:使用しているベースは元々アムステルダムで買ったたった20ドル位の物なんだ(笑)。安い木材で作られたやつで自家製のチープな楽器だけど、凄く膨らみのあるサウンドを奏でるんだ。僕のホームページ(http://www.twilightcircus.com/)にその写真がちょっと出ているよ。 ●コーヒーショップの影響はあるのですか? R:音楽を作る時の僕の燃料は、純粋にアイデアと濃厚なコーヒー。本当にコーヒーだけなんだよ(笑)。嘘じゃないよ(笑)。ただ、コーヒーショップの典型的なBGMは確かにレゲエだね。 ●DIYを貫いてますが、ヨーロッパでのミュージシャン同士の繋がりはあるのですか? R:そんなにないかな。ブラッド&ファイヤーのスタッフやデサイプルズ、アバ・シャンティ、ザイオン・トレインはよく知っているよ。ヨーロッパの中ではベルリンにはよく行くんだけど、個性的なレコード屋がインディーズ・レーベルを中心にした面白いセレクションをしているよ。ベーシック・チャンネル、チェイン・リアクションのようなレーベルとかね。そう言えば僕のダブ・プレートとプレス工場はいっしょだよ。 ●もうすぐ出る次の作品について教えて下さい。 R:次はまたダブ・プレート・シリーズ。番号を付けるなら『Part.3』になるね。サウンド・システムやライヴではやっているけど未発売のトラックを収録する予定なんだ。あと、そろそろ別プロジェクトとして他のアーティストとのコラボレーションもやってみたいと思っているところだよ。 ●愛娘が生まれたばかりだそうですが、あなたの音楽に何か影響を与えましたか? R:具体的にどう影響したかは分らないけれど、実際影響されていると思うよ。創作意欲とエネルギーを貰っているのかな(笑)。 |