"Big Up The Reggae"
[EAST WEST JAPAN/CD-AMCA-10018]



一口にレゲエといっても幅広い。ここに「今」のエッセンスでヒット曲と未発表&新曲の楽しさを詰め込んだコンピレーション・アルバムが登場! それもバウンティ・キラーやリッチー・スティーブンスといった有名どころから、無名ゆえにキラリとヒカる新人までが入っている!

 「レゲエ・ミュージックが“濃いまま”で広く浸透すること」…レゲエ・ミュージックで自分を表現しているアーティスト、又はそこに関わっている人ならば誰もがきっとそう望んでいる事でしょう。

 “単なるブームではなく、ワカってる人が増えること”。それは確かに“現場”で体感してナンボのものでしょう。では、その“呼び水”となるモノは何か? 例えば、最近でいえば「シャギーで初めてダンスホール・レゲエを知った」という若いファンに更に“ハマって”もらう為には具体的にどんな音源をススメればいいのか?という話ですが、勿論“現行ヒット物”のコンピや、向うのFMテープも外せないのですが、やはり国内(日本)盤の“親切な”コンパイル物が一番ではないか、と思うワケです。

その理由は至って簡単。レゲエ・ミュージックに人一倍愛情を持っている、と自負しているような“良きコンパイラー”が編集したコンピレ−ション盤には、必ず“一般の人も振り向かせる要素”がさり気なく盛り込まれている筈ですし、また“マニアが聴いても納得出来るような筋”も通っている筈なのですから。

 何だか少しTakata社長の生霊が降りてきたような気がしますが(いや、気のせいです)…「そんなお手頃のブツはあるのか?」と言われれば、今ならこの『Big Up The Reggae』を自信を持ってオススメしますね! 何故ならば、この盤は“レゲエを愛してやまない”というか“命を懸けてる”コンパイラーが厳選した“ビギナーの入り易さ”を考慮した上で“濃いモノにコダワった”内容、になっているのですから。全体的には“歌モノ”に重点を置き、その中でも“色んなスタイルがある”ことを実証しているのが目につきます。



ダンスホール・シンガーとしてはNo.1の存在感と実力を誇るリッチー・スティーブンスを筆頭に、ムーミンのフェイバリットとして知られる永遠の美声シンガー=ウェイン・ワンダーに、トニー・カーティス、そしてヴェテランどころではグレゴリー・アイザックスに故デニス・ブラウン、リロイ・シブルス、期待の若手ではブランディやレバンカレーを、そして“DJとのコンビネーション”では今やこの手の最先端をゆく人気クルー=T.O.K.、そして安定した人気を誇るタント・メトロ&デヴォンテに、新進のキア&コマといったグループ/チーム物から、バウンティ・キラー&リッチーや、ルーキーD &フリスコ・キッドのコンビネーション物まで、と幅広く“現在進行形のダンスホールと、そこに至るまでの歴史の一部を見せる”事に成功しているのです。



レーベル/プロデューサー的には、リッチーのレーベル、ポット・オブ・ゴールドを中心に、注目のビンギー・プロダクションに、ご存知ダニー・アックスマン・プロダクションの三方向で、ジョグリンからルーツ、ラヴァーズまでリディムも歌も様々なスタイルが提示され、同一トラックでの競い合いや、カヴァー曲(トニー・カーティスの歌うスティーヴィ「Overjoyed」やリッチーの歌うマーヴィン「What's Going On」等)を含め“ダンスホール・マナー”の何たるかが伝わってくる親切な構成になっているだけでなく、今店頭に並んでるブランニュー系コンピとの収録曲の重複を避けた上に6曲の未発表(デニスとグレゴリーも! これがかなりの聴きモノです)も含まれているという…。で、その尊敬すべきコンパイラーは? 本誌読者にはもう言わずもがな、でしょう。