![]() 「シャギーって一応レゲエ・アーティストじゃないですか。でもトラックはレゲエじゃないんですよね。日本のシーンってそうした組み合わせでも外人だったらOKなんですけど、日本人がやると″お前はヒップホップに行った″とか色々言われるんですよ。それが理解不可能ですね。だってエレファントマンだってビー二だってヒップホップのオケでやっているのに、日本人がやると″お前はレゲエを捨てた″とかいっぱい言われるんですよ。 ″外国人だったらOK″みたいな考えは悲しくなりますね。それって、外国人が近づいてきて来て、道とか聞かれるとあがっちゃうみたいな、そういうところがまだ残ってるんじゃないのかって俺には見えるんですよ」 そんな憤りから察することができるように、彼が8年の歳月を経てようやく昨年末に放った渾身のアルバム『Two a dem』は、DJアラキが展開するヒップホップ・トラックの上で、チャッピーがレゲエのリディムで歌う作品が多い。 「アルバム・タイトルを日本語に訳すと″二つの事柄″という意味。僕はレゲエ畑で生まれ育ってきた感じだけど、DJアラキはロックやHip Hopを通過してきているし、僕は歌い手で彼はトラック・メイカーという全然違う二人が集まってやっている意味をこめてつけた。あとリリックでも陰と陽とか、そういう二つの事柄を凄い意識したアルバムになった。割と自分の中では、ずっとそれをテーマにやってきたっていう感じですかね、はい」 しかしなぜチャッピーはレゲエのトラックを用いず、ヒップホップ・トラックにこだわってアルバムを仕上げたのだろうか? 「今回の歌詞カードを見てもらったら分かると思いますけど、レゲエっていう言葉とかジャマイカっていう直接的な言葉を使わずに、レゲエをどれぐらい表現できるか、っていう挑戦だったんです。それはトラックも同様で、一言でレゲエと言ったら簡単なんですけど、そうじゃなくてそれを使わないで、聞き手に想像させる工夫が自分では実験的だった。でも、それが正解だったなっていう感じで、はい」 そんな実験的な表現を追及している中で、初心に戻れる曲があるという。それはソウル・スクリームのハブとE.G.G.マンが参加している「Sign」だ。 「今のレゲエのシーンとリンクしたいんですけど、ライヴに呼ばれなかったりして、けっこうツマハジキになってるんだな、って自分では思ってるんですよ。でもそれはそれでいいやって。俺は俺で、自分の道を走るぜ、っていう感じで、それがレゲエを始めた頃の気持ちと結構似たようなところがあって、また原点に戻ったんだな、っていう感じで。自分でも前のスタイル(パトワだけを使った展開だった)は全部捨てて、日本語だけでっていうものになったから、本当にまた再スタートみたいな感じがして。"Sign" はそうしたリリックが含まれているから、自分で聴いても頑張ってるぞ、っていう感じはしますね」 このアルバムを通して聴くと、トラックとリリックが非常に聴きやすい事に気付くはずだ。特にリリックは今迄ずっと使ってきたパトワを切り離し、日本語にすることでのメリットは非常に大きい。 「別に英語っぽい歌い方をしている人を否定するわけじゃないのですが、俺は前にパトワでやってた分、日本語に変えたことを凄く強調する意味でも聴きやすさに気を付けた」 そうした聴きやすさは、DJアラキも同様に気を配っていたそうだ。 「割とチャッピーさんの声はコード感がしっかりしているので、それからはずれないように気をつけました。トラックも派手に目立つようにはしておらず、伝わりやすい言葉をきちんと耳に残ることを意識して作りました。だからレゲエ・アーティストだとか思わずに聴いてもらっても、僕は嬉しいですね」 さて、その采配はどのような印象を聴き手に与えるのか。 |