もはや説明不要のシャインヘッドが、実に3年ぶりとなるアルバム『2 Faces (Problem Child In NY)』をリリース。彼が以前打ち出したラガ・ヒップホップの最新型が隅々まで詰った本作、さっそくニューヨークの自宅に電話してインタビューを試みた。

 シャインヘッド。その代表曲のタイトルの通り、'84年のデビュー以来、現在まで″ニューヨーク在住のジャマイカン″として活躍し続ける人気ヴェテラン・アーティスト。

 各々の世代によってシャインヘッドに対するイメージは異なるだろう。ある世代にとっては、その全曲がキラーな″レゲエ史に輝く名盤『Rough & Rugged』の人″だろうし、ある世代にとっては、ヒップホップとレゲエのクロスオーヴァーを図った″ラガ・ヒップホップの人″だろうし、又、ある世代にとっては、ノーマン・クック(現ファット・ボーイ・スリム)がプロデュースして大ヒット、当時のレゲエ・ブームの幕開けとなった″「Jamaican in NY」の人″だったりする。 

 御大フレディ・マクレガーは、シャインヘッドを、常に時代の先を行く″カッティング・エッジ″と評し、VPレコードのA&Rは″世界のマーケットの通用する天才的なアーティスト″と絶賛し、又、ダブ・スタジオで偶然シャインヘッドに遭遇した新進DJのアサシンはとても″暗殺者″とは思えぬ満面の笑みで、長年のファンとしてのリスペクトを表わした。そう、シャインヘッドはその長き活動期間を常に最前線、時にはその先を進み、幅広くに愛され続けてきたのである。

 そのシャインヘッドが約3年振りとなる新作をリリースする。前2作同様、自らが設立したレーベル〈マインズ・アイ〉からとなる本作を、本人は″ヒップホップ・アルバム″と呼ぶ。そう、今作はヒップホップなのだ。

 「ヒップホップは今に始まったことじゃない。ずっとやってきたことでもある」

 確かにマイクを握り始めた頃、彼は居住していたブロンクスで、レゲエだけではなく、ヒップホップのムーヴメントにも身を置き、逸早く、それをダンスホールに取り入れ、オリジナルなスタイルへと消化させることでスターの座を獲得したわけだし、また、メジャー・デビュー作にはジャム・マスター・ジェイ(ランDMC)がプロデュースに参加したり、これまでのいずれの作品でもヒップホップは取り入れられている。ただ、本作はこれまでの″取り入れ″ではなく、″まんま″ということに、大きな違いがある。

 「ほぼ全曲自分のプロデュース。トラックはデイヴィー・D(オリジナルDMX)が中心になっている。リリックはコンシャスなメッセージものから、ラヴ・ソングまで。ラップだけじゃなく、歌ってもいる」

 「サンプリングは、マイケル・ジャクソン、フレディ・マクレガーのやつ、スリック・リック、レゲエのリディムも。あと、デニス・ブラウンのフレーズも歌ったり…。カヴァー? "Left with a Broken Heart"(フォー・トップスのレゲエ定番カヴァー楽曲)と、"Be Thankful"(マッシヴ・アタックも取り上げたウィリアム・デヴォーン楽曲)、オハイオ・プレイヤーズの "Heaven Must be Like This"…、まぁ、いつも通りに好きな曲を。ファースト・アルバムの "Who The Cap Fits" もリメイクした、そうラップで」

 「自分の中でレゲエとヒップホップは同居していて、いつもバランスが問題なだけで、今回は楽曲のトピックとか、現状の自分とかからヒップホップを強調することにした。勿論、どちらにしても自分だから、レゲエの部分も当然出てくる。いずれにしても″シャインヘッド″ってことだ。ただ、それを新しいスタイルで提示したかった。そう、″フレッシュでニューなシャインヘッド″としてね」

 振り返らず、貪欲に新たなる自己を表現し続けようとするこの強い姿勢こそがシャインヘッドの最大の魅力であり、常に新しいファンを獲得、愛され続けてきた大きな要因でもある。そうした意味では本作は十分、決して裏切ることはない。その新たなる一面(顔)もこれまで通りに十分に魅力的だ。 

 「周りは年を取らせたがるけど、休むのは死んでからでいい。いつも新しくいたいし、前に進み続けたい。だからサヴァイヴし続けなきゃいけないんだ、そうだろ?」

(協力/ 二木崇)