1999年12月号

BLAZE UP CHALWA / SIZZLA
[CHARM/CRCD3062]

昨年は一年間に4枚という驚異的なペースでアルバムをリリースした怒れる男シズラ。このアルバムは昨年の暮れにUKのチャームからリリースされたブランニュー! ルーツ&カルチャー路線のトラック・メイキングで良質なサウンドを供給しているキング・オブ・キングスの音源を収録。98年ごろのヒット「ショウ・アス・ザ・ウェイ」から最新シングル「ガンショット」迄、荒ぶる魂を叩き付けた強力盤。[輸入盤](小池信一)

TIME FOR LOVE / PAM HALL
[VP/VPCD 2169]

前作はカヴァー曲ばかりだったが、今回はちゃんとオリジナル曲も入った新作。日本でも結構人気のある彼女、内容はラヴァーズ・ファンを裏切らないいつも通りと思って頂いて間違いなし。去年話題になったPrince Lincolnの「Hu-manity」、そしてBeatlesの「Obra-dee」、Ken Boothの「Archibald」をジャズな感じにアレンジした曲等、カヴァーのセンスもナイス。皆さん、このジャケに見つめられて下さい。[輸入盤](鎌田和美)

CRY FREEDOM / DELROY DYER & THE DISCIPLES
[AFRICAN CRUSADER/AC101CD]

デルロイ・デイヤーの新作。9曲のヴォーカルもの全曲にダブ・ヴァージョンをプラスした全18テイク。ステッパーやワン・ドロップのヘヴィー・ベース・タイプのデジタル・ルーツ作品。ディサイプルズが手掛けたリディムはガッシリとした図太いキラーなサウンドでリスナーはノックアウト必至。勿論、ダブ・ヴァージョンもエフェクト音を効かせたグッドなアレンジで、これまたファンを悩殺!! [輸入盤](長井政一)

HORACE ANDY MEETS NAGGO MORRIS
[WACKIE'S / W1772]

ナイス再発10インチ・ミニLP。全編ダウナーでエッジの効いたワッキーズ特有の音がしっかりと刻まれ、特にボーカル・ヴァージョンに附随したダブが強力。ドルフィン・モリスの憂いたっぷりな声と、荒々しく暴力的なリディムという両極端なパーツをミックスした「You Rest On My Mind」等は、ルーツ・ロックとダブの魅力を余すところなく伝えている。この頃のブルワッキーのディレイワークは危険極まりない。[輸入盤](武田洋)

LOVE FOREVER / BIM SHERMAN
[EFA/39901-1]

70年代はジャマイカで活躍したルーツ・シンガーの追悼の意を込めた復刻盤。75〜79年までジャマイカで録られた彼の最高傑作の数々を集めたレアなベスト・セレクション。グッと心に染み渡る哀愁漂う泣きのルーツがとても印象的だ。名曲「Love Forever」「Golden Stool」「Mighty Ruler」「Just Can't Stand It」「10,000 Ethiopians」他全17曲を収録。バックはソウル・シンジケート、アグロヴェイターズが担当。[輸入盤](長井政一)

THE NEED TO LIVE / BIM SHERMAN
[EFA/39903-2]

こちらはビムが80年前後から95年までエイドリアン・シャーウッドのOn-U Soundに残した音源をまとめたベスト盤。実際On-Uでは2枚のアルバムしか残していないが、Singers & PlayersやNew Age Steppers等、レーベルメイツとのコラボ作は意外と多く、どれも彼のいなたい哀愁を帯びた声が印象的だった。本作はそうしたコラボ作やレア曲、未発表曲も交えつつ、ファンの心を揺さぶること必至。R.I.P.。[輸入盤](大場俊明)

BIG MEN REGGAE MEETS RAI / V.A.
[TABOU 1 / VIRGIN / ]

ちょと変わりダネ。アルジェリアの音楽、ライとレゲエのミクスチャー。こうしたコラボ物は一歩間違えると単にダサくなってしまうが、本作に関してはどちらの音楽も他の音楽の要素を吸収するのが得意なので、バランス感はばっちり。ライのアクの強い唄も、レゲエの有名所との絡みで何故か聴き易い。因みにHorace Andy、U-Roy、Sugar Minottといった面々が参加してます。聴く前に構える必要は無し![輸入盤](鎌田和美)

JUST FRIENDS / V.A.
[TECHNIQUES / VP / VPRL2177]

日常生活の中にあるリアリティ、ここでは男と女の友達関係について唄って大ヒットした「Just Fri-ends」リディムの1ウェイ。オリジナルはスタジオ1時代のHepto-nesの「Mama」。スティ・クリを要にしたメンツがリメイク(Hi Powerからスラ・ロビによるリメイクも有り)。タイトル曲のTony Rebel & Swadeに加え、Richie Ste-phens、Thriller U、George Nooks、Lukie D等々、メンツもいいし、曲もナイス。[輸入盤](鎌田和美)

ホット・ショット・ウルトラミックス/シャギー[ユニバーサル/UICC-1049]

一昨年7月にひっそりとリリースされた『ホット・ショット』は、2曲のビルボードNo.1ヒットもあって去年大ブレーク。あれよあれよと全世界で1000万枚を売りさばいたそうだ。それだけでレゲエ・シーンにとっては十分過ぎる程の貢献者。ほんと感謝。で、本作はその『ホット・ショット』のリミックス集。改めてオリジナル曲と比べながら聴いたけど、ネタが良いから、どんな料理にしてもやっぱり美味しかった。(大場俊明)

セイム・ソング(ダブ)+アンコンカラード・ピープル(ダブ)/イスラエル・ヴァイブレーション
[トゥ・チルドレン・ワールド/BLCY 1041]

70年代の後半から現在まで息の長い活動を続けているルーツ・コーラス・グループ、イスラエル・バイブレーション。このアルバムは数多い彼等の作品の中でもとりわけ名作と名高いファースト・アルバム『セイム・ソング』とセカンド『アンコンカード・ピープル』のダブを2in1で収録したもの(初CD化)。アナログは現在入手困難となっており、探していた方も多いハズ。ルーツ・ダブ好きは要チェックです。(小池信一)

ヴァレー・オブ・ヨシャパテ / オーガスタス・パブロ
[トゥ・チルドレン・ワールド/BLCY 1027]

99年に他界した天才プロデューサーであり名メロディカ奏者でもあるオーガスタス・パブロのラスト・アルバムが遂に国内盤で登場。晩年のパブロの作品群はダンスホール全盛という時代背景もあり良い評価をされているとは言い難いが、ガッシー・Pやブラック・スティールといったUKレゲエの重要人物のバックアップを得て制作された本作は、かつての姿を彷彿とさせる素晴らしい演奏を披露。寂し気な音色が涙を誘う。(小池信一)

ハイ・フィデリティ・ダブ・セッションズ 3 / V.A.
[ガイダンス / P-ヴァイン / PCD-23208]

UK、ドイツ、オーストリア、フィンランド、マイアミ、日本と世界中から発信される現在進行形のダブ・コンピ盤。シャーデーのバンド・メンバーが繰り広げるハイセンスなルーツ・ダブ「Tempest Dub」、3分6秒目からセイバーズ・オブ・パラダイス「Wilmot」さながらのオリエンタル・ヘヴィー・ダブに変身する「Divers」等、70'sジャマイカン・ダブと比べてもなんら遜色ない曲がずらり。何度も繰り返して聴きたくなる。(武田洋)

ベター・デイズ/ジョー
[ゾンバ/ZJCI-10048]

黄金コンビを組む相方のジョシュア・トンプスンに加え、前作からのヒット「Stutter」のリミックスを手掛けたオールスターが大きく登用された新作。ふたりの音仕事はまろやかなジョーの歌世界とも絶妙にマッチし、期待に違わぬ流麗ミッド曲がこれでもかと続く。先行シングル「Let's Stay Home Tonight」のリミックスにはピティ・パブロが参加、「Stutter」路線を辿ったかのような楽しい仕上がりに。(石澤伸行)

BBD/ベル・ビヴ・デヴォー
[ユニバーサル/UICU-1021]

なんと9年ぶりとなる新作。構成メンバーはそのままに、しかしながらパファーマンス的にはこれまでのキャリアがしっかりと反映された骨太な作品となった。ロックワイルダーやヘヴィーDらが現行R&Bの流儀を参照しながらも重量感を提供。ジャギッド・エッジやラルフ・トレスバントらの好サポートもあって、3人のエッジィな歌声は今にあってなおフレッシュに響く。これは駆け出しの仕事じゃない。(石澤伸行)

ディナイアルズ・ディルージョンズ・アンド・ディシジョンズ/ジャグアー・ライト
[ユニバーサル/UICC-1047]

ザ・ルーツらと行動を共にすることで既にそのステージングが話題となっている女性シンガーがデビュー。サウンド的にはオーガニック・ソウルの系譜にあり、教会を背景にしたワイルドな歌声はまさにこちらの心を鷲掴みするかのような魅力に溢れている。ソウルクエリアンズらが手掛ける佳曲が並ぶ中の白眉は「I Can't Wait」。ザ・ルーツ・ミーツ・プリンスといった趣の音世界にビラルが参戦するという豪華曲だ。(石澤伸行)

パム&ドディ/パム&ドディ
[ユニバーサル/UICC-1046]

デトロイトで知り合ったという友人同士の女性デュオ。エディF&ダレン・ライティによる先行シングル「Don't Have To」を始め、スロウにアップにと時流を捉えたサウンドが並ぶが、そこに乗るふたりのヴォーカルはまさに教会直系。特にK-Ci&ジョジョが参加した「Nobody」での声のぶつかり合いの凄まじいこと! 突如現れたコンテンポラリー・ゴスペルの大本命はフロアをも揺らすに違いない。(石澤伸行)

カム・アロング/ティティヨ
[イーストウェスト/AMCE-7316]

ネナ・チェリーの実の妹となるスウェーデンのシンガーの4作目。トンがりと陰りを含んだ作風が印象的だった彼女だが、今回はプロデューサーにトーレ・ヨハンセンを起用、エキゾチックなポップ感覚が充満した作りとなった。その声には相変わらず哀感が漂うが、メロディ重視のパフォーマンスもあって立ちの良い歌に耳を奪われる。ギターが鳴るロック・チューンでの彼女は新しい表現の場を探し当てたかのよう。(石澤伸行)

アリ/O.S.T.
[ユニバーサル/UICS-1030]

ウィル・スミス主演映画のサントラ盤。アル・グリーンやアレサ・フランクリンらによる60〜70年代クラシックや純正ゴスペル、そしてサリフ・ケイタが歌うアフロ・チューンと、全編に渡り漆黒の世界が広がる中、R.ケリー、アリシア・キーズ、アンジー・ストーンらが新曲を携えて大健闘。エヴァーラストらヒップホップ勢を含め、舞台の雰囲気を読んだかのようなスピリチュアルな佇まいが新鮮な作品集だ。(石澤伸行)

カム・ウィズ・アス/ケミカル・ブラザーズ
[東芝EMI/VJCP-68367]

ケミカル・ブラザーズの4枚目となるアルバムがリリースされた。例えばジャミロクワイ同様に変わらない事が良さだといってしまえば、同じベクトルで語るべき作品かもしれないが、能動的に日々進化と覚醒を繰り返し続けるクラブ・ミュージックにおいてこのアプローチが正しいかと言われればかなり疑問だ。水面下で恐ろしくエッジの効いたサウンドが数多く存在するだけに、ケミカルは失速している様に見えてならない。(高橋晋一郎)

イン・タイム/井上薫プレゼンツCHARI CHARI
[トイズファクトリー/TFCC-88245]

遂にドロップされた井上薫ことチャリ・チャリのセカンド。東京は勿論のことニューヨーク、ロンドン、キングストン、リオ・デ・ジャネイロと世界有数の音楽都市で現地のミュージシャンを迎えたレコーディングが行われ、まさしくワールド・ワイドな香りを漂わせつつも、圧倒的なチャリ・チャリの個性によって編集された一貫性のある構成力に脱帽させられる傑作。ザックによるエンジニアリングも素晴らしい一枚。(高橋晋一郎)

ティンブクトゥ/イサ・バガヨゴ
[ミュージック・キャンプ/MCS3021]

マリ出身のギタリストにしてシンガーのイサ・バガヨゴの新作。カマレ・ンゴニと呼ばれるマリ伝統の6弦ギターを駆使しながらトライバルなビートに合わせて歌うスタイルは、出るべくして出たアフリカン・スタンダードなのだろう。従来のアフリカン・ダンス・ミュージックに対し洗練されたその手法はあらゆるクラブ・サウンド要素を吸収し、エスニックながらも濃いすぎず薄すぎずのブレンド具合がオリジナル。(高橋晋一郎)

NIJI/玲葉奈
[エピックソニー/ESCL-2290]

初めて彼女の声を聴いた時から、虚飾のない素直な歌声が気持ちいいと思った。ただ作ったと言うよりも、作られた感が漂っていた前作に比べると本作は、前作同様サウンド・クリエイターは多様(藤本和則、Asa-Chang、山本貴志、木暮晋也等)ながらも、“玲葉奈のアルバム”とはっきり言い切れる気配を感じるのだ。決して成り行きにまかせで作った訳ではないだろうが、断然こっちの方が彼女らしい。(大場俊明)

ダウン・サウス・プロダクションズ/スピーチ
[東芝EMI/TOCP-65936]

ここ数年、日本人アーティストとのコラボレーションやArrested Development再結成等、ご無沙汰感はなかったが、ソロ作としては約2年ぶりとなるスピーチの新作。タイトルが示す通り、ホームベースである米南部の自宅で仲間とリラックスした雰囲気の中で作られたようで、単純に楽しめる作品だ。されどスピーチ、各曲に込められたメッセージはA.D.とは異なり、非常にパーソナルながら普遍的なものばかり。(大場俊明)

ウェザー/V.A.
[ウェザー/P-ヴァイン/PCD-5649/50]

Headzの佐々木敦主宰によるレーベル、ウェザーのコンピレーション。「Voices」という女性ヴォーカルがフィーチャーされた楽曲だけを集めたディスクと「Songs」というインストのみを収録したディスクで構成された2枚組。アーティストもサウンド・スタイルも更に言えば技量も一つとして同じものがないにも関わらず、音楽に対する潔さみたいなものが全編を貫く共通項として感じられる生命力に満ちた作品が並ぶ。(高橋晋一郎)