ジャマイカで「便利」でおいしい食べ物といえば「パティ」。ひき肉好きの日本人にも人気のジャマイカ料理だ。パティとはピロシキのようなミートパイ、揚げ餃子を特大にしたもので、気になる狂牛病はジャマイカにはない。食べ物、特に動物系の輸入に関しては、ものすごーく気を使っているらしい。どうぞ安心してお食べになって。

 パティといえばテイスティ・パティ。他にも「ジューシービーフ」やデボンハウスのパティが人気だが、テイスティはジャマイカ・パティの発祥なのだそうで、もう30年近い歴史がある。

 オーナーは中国系ジャマイカ人。なるほどやっぱり餃子から考え付いたに違いない代物 だ。ジャマイカに渡った中国人ファミリーが'70年代に始めた画期的なファーストフードだが、食に保守的なジャマイカ人が中国食文化を早々と取り入れるわけがない。安くておいしいので少しずつ顧客がふえていったかと思った矢先に事件は起こった。ダウンタウンで犬の死骸が大量に発見されたのである。

 「大量」と書いたがこれは噂が大きくなっただけのことだろう。とにかく、犬を食べる中国人が怪しい、という噂がさらに広がりテイスティ・パティは 犬の肉を使っている!などとまことしやかに囁かれるようになってしまったのだ。苦節ン年でようやくジャマイカン・フードとして定着したパティなのである。居辛い思いをすることもあったであろう中国人、Wi Overstand!

 あたしたちも「生魚をむしゃむしゃ食べる」と誤解されてたりするから ね。しかしそれだけじゃなかった。彼らはパティの収益金で「タレントコンテスト」を始め、おらが村に眠っているシンガーやDJの発掘に力を入れ、ついにはイエロウマンやパパサン、ビーニマンなどジャマイカを代表するDJを世に送ったのである。中国人とレゲエの関係は深い。今ダンスホールがあるのは、実はテイスティパティのおかげなのだ。Big Up中国人!

 テイスティ・パティは現在、クロスロードにある本店やハーフウエイ・ツリー店など直営店だけでなく、平日の昼時なら小さな屋台でも売られている。一個J$20!(約50円)二個でも$40。そしてパティの大食い競争なんてのも定期的にやっている。近年遂に海外進出を果たし、冷凍パックも売られている。キングストンの街中で、パティを食べている人を見ない日はない。