2001年にリリースされたレゲエ、ヒップホップ、R&Bの歴史に残るベスト・オブ・ベストを発表。編集部と本誌でもお馴染みの執筆者(レゲエはランキン・タクシー、石川貴教、スペシャル・ゲストにJ-Waveの塩田真人、ヒップホップは二木崇各氏)で座談会形式でカテゴリー別に厳選。どれも21世紀のスタートを飾るに相応しい真のストリート・ミュージックばかりだ。 |
【SELECTORS】 ●ランキン・タクシー/日本におけるサウンド・システム、DJのオリジネイター。2002年も積極的にリリースをしていく予定。 ●石川貴教/Gloria店主。本誌にて「Raw Singles」を担当。毎回独特な視点でレゲエ・ミュージックを斬るライターでもある。 ●塩田真人/J-Wave編成局制作部所属。80年代後半よりセレクターとしても活躍。 ●八幡浩司/24×7 Records代表。レコード会社勤務時代よりレゲエ・ビジネスに携わり、現在は更にどっぷり。 ●大場俊明/本誌編集長。我の強い選者達をまとめる司会進行役。 |
No.1
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【海外アーティスト・アルバム】 No.1 "My Crew, My Dawgs" / T.O.K. (VP) 絶妙、絶好のタイミングで来日を果たしたのが今回のランキングに反映した。今年現地で大ヒットとなったのは収録曲中「Chi Chi Man」位なものだけど、内容的には非の打ち所なし。旬のトラックメイカーを起用して、ハイファイなサウンドをふんだんに聴かせる狙いも十分に当ったんじゃないかな。ジャマイカ国外の人々のハートをつかむには歌とメロの存在がいかに重要かも良く解る一枚。新しさは無いが、今年を代表する好作品だ。(石川貴教) |
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石川:今年は大物が出なかったですね。 ランキン:でもSizzlaは4枚出してるでしょ。Lucianoは2枚。Sizzlaだったら『Taking Over』がベストだな。 石川:Lucicanoは後から出た『A New Day』の方が良いですね。 八幡:数は少ないけど、昔みたいに寄せ集めじゃなくて、ちゃんとコンセプト立ててから作ってるからじゃないのかなあ。でも今年の1位はもうT.O.K.。 石川:僕はWard 21。内容はBeres Hammond『Music Is Life』の方が良いんですけど、今年感って言うと、Ward 21。 大場:今回の「Riddim Award」はJ-Waveで放送中のPushimのラジオ番組「Radio Champ」でもリスナーから投票して貰っているので、それを参考材料としたいのですが、どうでしたか? 塩田:リスナー投票だと、断トツ一位がT.O.K.でしたね。約70%。ヒップホップ・ファンにも訴えたんですかね? 石川:買ってますよ。ヒップホップ系のレコード屋でもがんがん押してたし。 八幡:今年、レゲエのファンは増えたんだけど、日本かジャマイカか、どっちかしか聴かないって人も一杯いると思うんだよね。でもその間を結んだのがT.O.K.だったと思うんだ。ジャマイカ物を聴かせる入口としてT.O.K.の存在は大きかったんじゃないかな。 大場:ヒットは今年だけど、発売は去年だったんで今回は残念ながらパスですが、Shaggyの効果はデカイと思いますよ。何たってビルボードNo.1ですよ。世界では一千万枚売れたみたい。これってThe Beatlesの『1』に次いで世界2位だって。 塩田:ShaggyはJ-Waveでもよくかかりました。夏以降って言うとNo DoubtにBounty Killerが参加した「Hey Baby」とか。 ランキン:「Angel」は今でもかけると盛り上がるもんな。 八幡:レゲエ・ファン以外のとこにダンスホールを持っていってるとこが凄いんだよね。三木道三もT.O.K.もそう。 石川:そう言えばサンチェスが出なかったんだよね。今年はベスト盤だけ。 八幡:歌物だったらTerry Linen『Terry Linen』は良く聴いたなあ。あとMorgan Heritage『More Teaching...』かな。Coco Tea『Feel The Power』はもう少し良いのが出来たんじゃないかなって。 石川:Jr.Kelly『Love So Nice』を忘れちゃいけませんね。Tanto Metro & Devonte『The Beat Goes On』も良く出来た作品だから一般の人には最高じゃないですか。それと今年の声と言ったらElephant Man『Log On』が出ましたね。 ランキン:タイトル曲のリディムは "Liquid" でしょ。やっぱ今年のElephantの活躍に一票入れたいですね。 八幡:アルバムって考えれば、やっぱBeresのアルバムは良い曲が多かったよ。 石川:Beresの長いキャリアの中でも一番位良かったんじゃないですか。 ランキン:いやあ、カラオケ行ってBeresの歌を歌いたいですねえ(笑)。 |
No.1
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【国内アーティスト・アルバム】 誰が何と言おうが、今年の日本のゲエを牽引した立役者は彼に間違いない。有能なスティ&クリやスライ・ダンバー、ディーン・フレイザー等の手を借りたとしても、長年現場も盛り上げ続けた三木のアイデアが血肉となって隅々まで反映された完璧な三木ワールド。彼独特シングジェイ・スタイルも更に磨きが掛かっている点も褒めたいが、それ以上にが身がよじれてしまう程にえぐり込んでくるキレ味鋭いリリックの成長を褒めたい。満場一致であんたが大将。(大場俊明) |
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大場:今年はジャパニーズ・レゲエ・ファンにとっては嬉しくてしょうがないって位の作品が出ましたね。
八幡:日本の媒体でこれだけレゲエって言葉が活字として出たのは久しぶりだよね。ラジオはどうだったんですか? 塩田:今年は本当によくかかりましたね。昼でも普通にかかりましたからね。 大場:夏だけレゲエをかけるっていう感じでもなかったですよね。 塩田:春辺りからLittle Tempoとかが来て、夏前からダンスホールが来て。でも夏が終ってもかかり続けましたからね。 八幡:順番付けられないよね。三木道三は分かるけど。『Lifetime Respect』って何枚位売れたの? 塩田:アルバムは60万枚、シングルは95万枚だって。 全員:スゲエ! 八幡:やっぱり影響力って考えたら、今年は三木がいて、Pushimの『Colors』、あとは一線って感じかなあ。どれもレベル高いけど。 ランキン:Ryo The Skywalkerの『Ryo The Skywalker』もいいけど。 八幡:Ryoのはバラエティに富んでるね。 石川:トラックがかっこいいよね。更に来年に期待大ですね。あとHase-T『Over & Over』もオケが凄いかっこいいじゃん。Moomin『Get Here』もタイミング的に良かったし、ブッチャー『俺の街』も面白かった。Kaana『Kaana』はレゲエ度がもう少し高ければ入っただろうけど…。 石川:ダンスホール系以外だったらCultivatorも面白かったですね。あと、こだま和文さんの『ピストル・オペラ』のサントラも良かったけど。映画も凄い面白かったし。 大場:いや、この後控えてる『Nazo』の方が断然良いって。でもこの選考会には間に合わなかったけど。 塩田:Cultivatorだったら僕も好き。あとロック・ステディだったら川上つよしと彼のムードメイカーズも面白く聴けましたけどね。Reggae Disco Rockersも完成度高いけど、こだまさんも含めてこの時点でまだ発売してないから来年ですね。 大場:「Radio Champ」ではリスナーの意見はどうだったんですか? 塩田:三木道三とPushimがほぼ同数で、次がRyoThe Skywalkerですね。 石川:トピックとしては三木じゃない? 八幡:今年の三木を評価しなかったらおかしいよって事になるでしょ。ある意味Boogie Manの「パチンコマン」以来、というかそれを圧倒的に越えてる。 大場:歴史に名前を刻み込みましたよね。 八幡:Pushimも今回、レゲエのアルバムにしたのは正解。現場で彼女を好きになった人が求めてるタイプの作品が出来たと思う。 石川:そこから『Music Is Mystic』に発展して繋がってるんじゃないですか。 塩田:そう、番組のゲストに来て貰った時に今後の予定とか訊くと「レゲエには1ウェイって方法論がありまして…」って説明してくれたりね。主婦とか聞く時間帯にですよ(笑)。 大場:Mighty Crownって去年位から一般にも浸透してきて、彼らが音を作るならどんな作品を出すかって期待してたと思うんですよね。その答えが『Life Style Records Compilation Vol.1』。 八幡:アーティストの組み合わせとかトラックの膨らみとか流れとか考えると凄い考えてる感じが分かるよね。 ランキン:Mighty Jam Rockは? 八幡:現場でやってる物をそのままパッケージ出来たってのは凄いよね。今年の現場の盛り上がりとか見てきて、やっぱり横浜、大阪のこの二組の存在がなきゃってのは凄い感じるよね。三木一人って訳じゃ行かないからね。 石川:『XX Bad』とか『Thunder Gate Showcace Vol.2』、カエルスタジオ関係とかコンピもいっぱい出ましたよね。 八幡:なんかアイテムの数ってよりも中味の充実って感じでステップアップを感じた年だったな。 |