1999年12月号

THUG NATURE / SPRAGGA BENZ
[RED SQUARE PRODUCTIONS / RSP0013357]

個人的にはかなり大好きなDJの一人、スプラガ・ベンツのNew! 個性的なフシ廻しとハードコアなDJスタイルが魅力。このところシングルのリリースも多く、どれも良い出来なのだが、ビッグ・ヒットに恵まれないのはマイナーなイメージが拭いきれない彼のキャラクターのせいか? 「ルーキー」、「ジャミーズ」他、レーベルを越えてシングル・ヒットを収録。このアルバムを聴けば彼のヤバさが解って貰えるハズ。[輸入盤](小池信一)

LOG ON / ELEPHANT MAN
[GREENSLEEVES / GREL266]

元Bounty配下のシーヴューの面々からScare Dem Crewを経て今、最も勝ち上がった男。ゴリゴリに押しまくるハードコアなスタイルながら、今のR&Bリスナーにも受けそうな2ハードの "Liquid" Trk.、ストーン・ラヴのR&Bヒット「Fiesta」のリメイクTrk.、王道ハードコアな "Rice & Peace" 等、バラエティに富んだサウンド・プロダクツ。ポップな構成ながら熱気に満ち溢れ、一気に聴かせる一枚。ヤバシ![輸入盤](鎌田和美)

BLACK FOUNDATION DUB / AUGUSTUS CLARKE
[MOTION / FASTLP010]

ガッシー・クラークといえば、80年代後期に「Telephone Love」等人気の高いグルーヴィーなダンスホール・サウンドをクリエイトした事で有名だが、70年代から相当カッコイイ仕事をしていたことも忘れちゃいけない。初期ランディーズのプロダクション、又は「Macka Dub」等と同様の乾き具合と、後のダンスホールに受け継がれていくタフな感触がミックスした70'sダブの重要作品集。綺麗なメロの上モノがまたヨシ。[輸入盤](武田洋)

DUBBING IT STUDIO 1 STYLE / THE AGGROVATORS
[JAMAICAN RECORDINGS / JRCD005]

70年代を代表する名プロデューサー、バニー・リーは自身のレーベルで数多くのスタジオ・ワン音源をリメイクしているが、このアルバムはタイトルを見ればお解りの様にそんな音源をダブ・ミックスしたもの。リリースは確かな音源を続々とリリースしているジャマイカン・レコーディングスから。エンジニアの表記が無いのでハッキリとは解らないが、ミックスはおそらくタビーだろう。ダブ・ファンは要チェック。[輸入盤](小池信一)

ALL I HAVE IS LOVE ANTHOLOGY 1968 TO 1995 / GREGORY ISAACS
[TROJAN / CDTRD456]

“ミスター・クール・ルーラー”グレゴリー・アイザックスのベスト・アルバムがトロージャンから。68年のデビュー・シングル「アナザー・ハートエイク」に始まり、95年リリースのアルバム『デム・トーク・トゥ・マッチ』収録曲迄を年代順に全50曲2CDのフル・ヴォリュームで。長いキャリアを持つグレゴリーだけに全ての代表曲を完璧に網羅という訳にはいかないが、彼の歴史を辿るには最適の一枚。[輸入盤](小池信一)

DUB ORGANIZER MEETS THE ROCK / V.A.[MASSIVE B / MB-86-2]

2月には久々の来日も決定したボビー・コンダース率いるマッシヴBの新作は、オーガスタス・パブロ『This Is...』の一発目でもお馴染みのエヴァー・グリーン・リディム "Dub Organizer" と、夏にバウンティ・キラーの「Sunfest」で再ヒットした "The Rock" リディムの2ウェイ("Dub Organizer" リディムは未発表ばかり)。マッシヴBならではのガッシリしたリディムは流石。来日公演予習用にどうぞ。[輸入盤](大場俊明)

4REBELS / V.A.[VP / VPRL2166]

"4 Rebel" という事で闘うラスタマン4人衆のコンピレーション。それも現在絶対的ポジションにいるLuciano、Yami Bolo、Anthony B、Sizzlaという強力なメンツが顔を揃えるんだからズルイとも思うけど悪いはずは無いでしょ。音源もFrench Productionなので間違い無し。何にせよどれも現代のルーツ・レゲエ、レベル・ミュージックとしてのレゲエを象徴する曲ばかり。ラスタ派のアナタは要チェック![輸入盤](鎌田和美)

STRICTLY THE BEST 27/ V.A.
[VP / VPCD1639]

恒例のVP編集のヒット曲コンピ盤。ここ数年のこのシリーズの充実度はなかなか凄い。王者Bountyに、「Log On」の流行語で攻めるElephant、NYでも人気のSean Paulと言ったJugglinな物から、グレゴリー・アイザックスの名曲のリメイクに乗るBuju、急上昇のWarrior Kingまで今のレゲエ・シーンを代表するDJ衆の曲ばかり。ジャケットはMJRのジャケなどでもオナジミのイラストレーター、ムラサキだ。[輸入盤](鎌田和美)

STRICTLY THE BEST 28/ V.A.
[VP / VPCD1640]

こちらはシンガー編。こちらも現在を象徴する曲ばかりで隅から隅までヒット曲がズラリ。Beres「Rock Away」、Cocoa Tea「Sweet Life」と既にファウンデーションな物から、ラヴァーズ・ファン絶賛間違いなしのDon CampbellによるUserカヴァーやゴーストによるSadeのカヴァー等に加え、復活が嬉しいグレゴリーのセルフ・カヴァー「Tune In!」迄、とにかく間違いの無し。27番同様、要チェックです。[輸入盤](鎌田和美)

DREAD MEETS PUNK ROCKERS UPTOWN SELECTED BY DJ DON LETTS / V.A.[HEAVENLY / HVNLP33]

これはもう企画の勝利。76年から77年、まさにパンク誕生の時にロンドンのクラブRoxyで白人のキッズ相手にレゲエをプレイ、文字通り "Punky Reggae Party" を繰り広げ、レゲエとパンクの橋渡し的存在だったDJドン・レッツ。本作はB.A.D.のメンバーとしても有名な彼が当時のRoxyを再現すべく、その頃かけていた曲を集めたコンピレ−ション。当時UKでレゲエがレベル・ミュージックとして強く支持されてた所以がここに。(武田洋)

サンダー・ゲイト・ショウケイスVol.2 / V.A.
[サンダー・ゲイト / ユニバーサル / UUCH-1026]

『Vol.1』がロング・セラーを続けるサンダー・ゲイトのコンピ第二弾は、パパBの「Who Am I」でお馴染みのハセTによる強烈オケ "Still Sick" とハッシーによる "Tetete" リズムを核とする強力盤。前述のパパBの他、アトゥーシャイ、ハセT、本気男等、お馴染みのメンツに加え、若手のGun-Danも参加。特にルード・ボーイ・フェイスの「365」でぶっ飛ばされるはずだ。ボートラにはリーの「It's Not Far」も。(大場俊明)

ディーヴァズ/D・インフルエンス
[ポニーキャニオン/PCCY-01553]

レーベル移籍後の待望の新作は、リード・シンガーを曲毎に変えるという何とも贅沢な趣向に。デビュー以来の前役サラが臨んだ新曲の出来は言うに及ばず、ショーラ・アーマやロミーナ・ジョンソンに提供されたNYフレイヴァたっぷりのダンス・チューンが最高。往年のアシッド・ジャズ風から昨今のオーガニック系までをフォロー、ビートに対する執拗なまでのこだわりが一気に開花した佳作の目白押しだ。(石澤伸行)

ミスアンダストゥッド!/ピンク
[BMGビクター / BVCA-21101]

現行R&Bのフレイヴァーたっぷりだった「There U Go」、派手な仕掛けで世界の衆目を集めた「Lady Marmalade」と来て、本作でのロック路線に向けた大きな方向転換である。スピーカーから飛び出すタテ乗りサウンドに一瞬たじろぐも、彼女の「パンク好き」を思えば、これも当然の成り行きか。そして何より収録曲の多くを手掛けるダラス・オースティンの仕事が、他のどれよりもギンギンなのも興味深い。(石澤伸行)

エクスペリエンス:ジル・スコット 826+/ジル・スコット
[エピック/EICP-41〜42]

1年半ぶりの新作はライヴ盤と新録盤の2枚組でのリリース。そのステージ・パフォーマンスでは、彼女の豊かな音楽性と共にシンガーとしての存在感が圧倒的な力強さを伴って再度提示され、スタジオ・ワークにおいては、ア・タッチ・オブ・ジャズの面々、コモン、4ヒーローらに囲まれ、オーガニックな音仕事とストリートへの目配せを見事に実現。トレンドと普遍そして少しの未来が同時に体感できる超豪華盤だ。(石澤伸行)

ソウル・シスタ/キキ・ワイアット
[ユニバーサル / UICC-1023]

アヴァントとのデュエット等でその名を既に周知済みの女性シンガー。以前はデスチャの前身グループに属していたとのことだが、彼女においてそんなバイオは無意味なのかも。それほどにこのヴォーカル力は、生一本な魅力を放っている。スティーヴ・ハフらによるサウンドもアップにスロウにと多岐に渡るが、それらを横通しするのは彼女の声。再度アヴァントも登場し、充実の歌世界が敷き詰められた充実作に。(石澤伸行)

ドーン/ドーン・ロビンスン
[ポニーキャニオン / PCCY-01544]

5年ぶりとなるソロ2作目。ファミリー・スタンド以来の盟友たちに加え、ロイ・エアーズやルーツの面々が参加した本作は、ドライな緊張感が漲る世界と、メロディに重きを置いた雄大かつ美麗な世界の2面で構成されている。これまでに見られたロック的なアプローチが除かれた分、彼女の声にあるソウルネスの純度は増し、まるでソロ・デビュー当時のニュー・クラシック・ソウルの機運が今に蘇ったかのよう。(石澤伸行)

ジェミニ:ボス・サイズ/サンドラ・セイント・ヴィクター
[EXPANSION RECORDS / ビクター / XECD32]

5年ぶりとなるソロ2作目。ファミリー・スタンド以来の盟友たちに加え、ロイ・エアーズやルーツの面々が参加した本作は、ドライな緊張感が漲る世界と、メロディに重きを置いた雄大かつ美麗な世界の2面で構成されている。これまでに見られたロック的なアプローチが除かれた分、彼女の声にあるソウルネスの純度は増し、まるでソロ・デビュー当時のニュー・クラシック・ソウルの機運が今に蘇ったかのよう。(石澤伸行)

ブディスツ・トラックス/ブッシュ・オブ・ゴースツ
[ブッシュ・オブ・ゴースツ / BUS-001]

以前からなぜか会社にあったライヴ・テープを盗み聴いていたので長いこと待ち焦がれていたB.O.Gの初CD。ご存じの様にデタミネーションズの市原夫妻を中心とするアフロ/ダブ・バンドだ。どっしりとした大地を揺さぶらんばかりのアフロ・ビートとレゲエ・ビートが渾然一体となったリズムが否応なく下っ腹を刺激し、管楽器とBun Bunの言葉が脳みそを直撃する。処女作にてこの完成度、正直クラクラした。(大場俊明)

アイ/バッファロー・ドーター
[東芝EMI / TOCP-65914]

前作『New Rock』から3年振りにバッファロー・ドーターが帰ってきた。チボ・マットやジョン・マッケンタイア、マニー・マークらも参加した最新型のバッファーローはまたもやありとあらゆるジャンルのエレメンツを飲み込み、砕き、消化し、バッファー以外の何者でもない音楽をクリエイトしてしまっている。この圧倒的なセンスの良さは、ある意味でとても鋭い音楽批評だともとれるほどバランスも素晴らしい。まさしく傑作。(高橋晋一郎)

ソングブック / 竹村延和
[徳間ジャパン / TKCA-72283]

クラブ・ミュージック、あるいはポップ・ミュージックなどというマーケットに即した制作意識から遠く離れた所で完成させられた竹村延和の3作目となるソロ・アルバム。彼本人が主宰するチャイルディスクからリリースされた本作は同レーベルでも活動中のアキツユコと西上豊乃という2人のヴォーカリストをフィーチャー。音楽に向かって素の状態で取り組もうとするピュアながらラディカルなアティテュードが伝わってくる作品。(高橋晋一郎)

キル・ユア・ダーリン/キッド・ロコ
[トイズファクトリー / TFCK-87828]

2年振りにリリースのジャン・イブ・プリエールことキッド・ロコのセカンド・アルバム。前作同様イエロー・プロダクションズよりリリースされた本作は、お得意のメロウでダウンテンポなブレイクビーツ・チューンを挟みつつ、ポップスやロックのテイストを盛り込み生楽器をフィーチャーした新たなスタイルへと移行している。ファーストに比べ雑多な印象を受けるが、独創性は確実に深みを増している様子。(高橋晋一郎)

リクライン/V.A.
[ミュージックキャンプ / MCS-3020]

サンフランシスコのシックス・ディグリーズからリリースされたリラックスをテーマにコンパイルされたコンピレーション。こういった視点でリリースされたシリーズは数多くあるが、本作はシルク130、DJカム、ナイン・インチ・ネイルズのクリス・ブレンナの新ユニットとなるトゥオーカー、ベベウ・ジルベルト等、全体の流れを考えた繊細で振り幅のある選曲で仕上げた丁寧な一枚で今後のタイトルにも期待が持てる。(高橋晋一郎)

オーガン・ランゲージ/オーガン・ランゲージ
[リヴァース / サウンドスケープ / RECD002]

96年のデビュー以降、今や日本だけでなく世界各地から称賛を浴びているCalmの新たなるプロジェクトが始動した。メロディックだったCalm名義と比較すると、こちらはリズム主導といった感じか。コミュニケーションツールとしての音楽の起源をじっくり探求したかの様なエキゾチックなリズムの重なり。まるでリズムの交差点を目指していたかのようだ。また新しいグルーヴが誕生した。(大場俊明)

フューチャー・ホーム・オブ・バーバンク・エルクス/スティーブン
[エイプサウンド / サウンドスケープ / ASCDD-001]

チープながら実験的なグッド・ミュージックをマイペースにリリースし続けているスラブコ・レーベルの主宰者、スティーブンのソロ・アルバム。自身でもヴォリューム・オールスターを率いて作品も出しているが、本作は更にプライベートな作り。ジャケット同様、時間の経つのが非常に遅く感じてしまうのんびりとした雰囲気に満ちた佳作だ。ゲストには旧友マニー・マークも参加。(大場俊明)