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![]() ジャマイカでは男は男、女は女ときっぱり別れる風潮があり、男は男らしく、女は女らしくが基本で潔い。ただし、「女らしい」の定義は日本のそれとはかなり異なり、白くて細くてはかなげなのが女の美ではなさそうだ。そんなんじゃジャマイカでサヴァイヴできないもんな。 そうしたヤードマンの美学は、ファッションや音楽に著実に表れる。男はいかに男らしく見せるか、女はいかにセクシーに着こなすかがテー マであり、例えば少女趣味や男のコのような格好をした女性はいない。「控えめな」という形容詞も美徳ではないようで、女性は常に堂々としている。 標準規格外の女性こそがお洒落に熱心で、おばあちゃんになってもそんな気迫があったりして、ジャマイカの女性は一生おんなを 捨てず、おんなを貫く。ホモセクシャルを認めないだけあって、男女間の恋愛に対するパワーには目を見張るものがあり、男と女は命がけでお互いを求め合う。だからあちこちで痴話喧嘩も多いが、セックスレス夫婦なんていうのはいなさそうだ。 ダンスホールにも、ジャマイカ特有の男と女の関係を示唆するようなリリックスは多い。「まあままん」と言われる類の男性が、バティマンの次にファイアバンの対象になっている。「まあままん」はロングランを記録する人気ローカル芝居劇のタイトルで、女性の下着を洗ったり、何かと女性の身の回りのものに興味を持つ軟弱な男に対する蔑称だ。バティマンと同じく、周囲に知れたら村八分になるので、隠すこと必至のはず。 DJやセレクターが、バティマンやオーラルセックス行為にファイアバンするのは周知のごとくだが、ファイアリンクスは「女性の下着を脱がす男」を「バティマンの前兆的行為」としてファイアバンする。Gストリング(=Tバック)でもフレンチカットでも、女の下着なんか触らない。触らずに脱がしてえっちするのが真の男なのだそうだ。なるほど。 ヤードマンは基本的に硬派である。 下着どころか女性のハンドバッグだってあえて触ろうとしない。そーんなものは「'Oman Ting(=Woman Things)」と忌み嫌う。男は男らしくのヤードマンの美学に反することらしい。女々しいことは大嫌い。そう書くと'Oman Tingで悪かったわね、とかヤードマンは亭主関白でイバってばかりの男、などと思われてしまうかな。 実はヤードマンは、家事の天才である。お料理、洗濯、お掃除、アイロンがけ、何をやらせても一流だ。バティマンや「まあままん」をファイアバンするヤードマンこそが、オクラ入りのスチームフィッシュを美味しく作れる。反対に、ファイアバンをしない良識的なジャマイカ人男性に 料理など家事をしないタイプが多く、面白い。 ラスタマンに多く見られる傾向だが、生理中の女性はキッチンに入ってはいけない、などという時代遅れな風習がある。女性にやさしい風習だと捉えれば波風たたないが、女性の生理や血を恐がる傾向は強く、一部バッドワードの語源でもある。 ジャマイカにはこのように、一見男尊女卑と勘違いする風習があったりするが、母系制社会で女性が多く社会に進出し、大学進学率も女性の方が高く、レディファーストの習慣があるから女性は重い荷物など持つことなく、自動ドアなどなくてもドアを自分で開ける必要もない。ジャマイカはこの手の文明はあるのだ。 バティマンバッシングは裏を返せば女性讃歌であり、普段は恐いファイアバン系DJも「'Oman Mek Mi Happy And Joyful」なんて同じ顔で歌ったりするのが可笑しい。 Big Up All Di Man Dem Weh Have A 'Oman Ina Dem Life. ジャマイカは恋愛天国、恋愛は日常、子供の時から男と女、結婚しても男と女、おばあちゃんになっても男と女…。 If A De Almighty, Gi Mi Everyting. If A 'Oman, Gi Mi Everyting... ごめんあそばせ。 |