『ロッカーズ』(78年)は、レゲエ・ファンなら避けて通れない映画だ。撮影されたのは77年。当時のレゲエをふんだんに使っていて、ミュージシャンも多数出演している(日本で初めて公開されたのは80年。そのとき上映権を買ったのはまだオーバーヒート・レコーズを立ち上げる前のEC。現在はアップリンクよりDVDで発売されている)。
ホースマウス(主役)がバイクを走らせているだけで伝わってくるルードボーイぶり。ジェイコブ・ミラーのとぼけたキャラ。ジャック・ルビーのサウンド・システムのむんむんとした雰囲気。グレゴリー・アイザックスの凄みが炸裂するライヴ・シーン…。
何度観ても素晴らしい。娯楽映画仕立てになっていることにより、むしろ当時のジャマイカを見事に映し出していた。マフィアに盗まれたバイクを取り返しに行くというストーリーは水戸黄門ばりにベタなんだけど、舞台がジャマイカになるだけで激ヤバになってしまうから不思議だ。
ちなみにこの場合の激ヤバとは、チョー・カッコイイ&本当に危なくてヤバイというダブル・ミーニング。ロケ隊が泊まっていたキングストンのホテルが襲撃されて撮影資金を奪われたり、グレゴリーのライヴ・シーンを撮るために入れたエキストラの観客のな かに本当のお尋ね者が紛れ込んでいて、逮捕しようとした警察がロケ現場となったシアターの周りを取り囲んだりと、撮影はトラブルの連続だったそうだ。
で、この『ロッカーズ』が撮られてから24年経った今、何と映画と平行して撮られていたほとんど未発表の写真が大量に発掘されて写真集になったのである。それがこの『Rockers
Style』だ。
この写真集を、貴重な写真が数多く写っているから素晴らしいなどと言っては失礼だろう。『ロッカーズ』に思い入れのある人なら、巻末にまとめられているキャプションと写真を照合しながら、あのシーンに出ていたあの人は○○だったのか、みたいな発見があると思うけど、そんなことに喜んだりするためだけにこの写真集が存在しているわけではない。
何より素晴らしいのは、ここに集められている写真が、映画のプロモーショ ンのために撮られたお仕事写真ではなく、プライヴェート・フォトとしてそれ自体が作品になっている点。『ロッカーズ』に参加した人を撮ることにより、はからずも『ロッカーズ』の時代をドキュメントした写真集になっているのである。
フォトグラファーとしてクレジットされているのは、アヴェロン・ロビン(映画『ロッカーズ』のアソシエイト・プロデューサー)、スーザン・フィンケルステイン(?)、テッド・バファルーカス(セオドロス・バファルーカス。映画『ロッカーズ』の脚本&監督)、パトリック・ホージィー(映画『ロッカーズ』のプロデューサー)の4人。どうりでみんなうち解けているわけだ。ブック・デザインは駿東宏。B4変形というかなり大判のアートな写真集である。
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