デタミネーションズの人気に便乗して、会社設立20周年記念というイベントにしてしまおうというオーバーヒート・ミュージックの石井。「その真意は?」って訊いても、そんなのあるんスカ?

なにかチケット売れてるそうじゃないの。どうして20周年記念にデタミネーションズのコンサートをやろうと? 外国人とか来日させてバーってのは考えなかったわけ?
EC:いや、先に去年のデタミのコンサートがアストロ・ホール(原宿)でパンパンに入って、みんなにも次はリキッドルーム(新宿)でやりたいって言ってあったから。音いいしね、あそこは。そしたら、もう20年になるんじゃないの?って後で言われて。20年経ってもなんにもできてないからお祝いにはなんないけど、お祭りにはなるかなと。20年っていうのはマジかなり恥ずかしい。

でもどうしてデタミなわけ?
EC:俺が単に遅れてきたファンの一人だっていうことだけ。世界中にいいアーティストはたくさんいる。その中でもアイツらはもっともっと認められていい。例え音楽で食えなくてもね。俺達は空気の振動を売ってるわけで、銀色の盤そのものを売ってるんじゃないわけ。10人の音楽好きがいたら10人の趣味が違ってて当り前。でもデタミはその10人の中でも、もっと好きな人が増えて当然なバンドだと俺は思ってるわけよ。空気の振動がなんともイイのよ。今の日本の音楽状況の中でメチャクチャに貴重なやつら。だからこれはハデなイベントなんだよ、俺としては(笑)。お客さんの人数とかCDの売り上げ枚数だけじゃない別のモノサシがあるってことだな。

でもせっかく20年ということだから、オーバーヒートの歴史について語りたいでしょう?
EC:イテ! イタイとこ突くなっつーの。俺は今日、頭イテーし、右膝も左膝も右のくるぶしも。

それってあの自業自得のスケートごっこでしょ。
EC:あー、だから俺はデタミのファンなんだよ。20年前にNYでバスキアの絵やパンク・コンサートに行ってる頃に『Rockers』っていうジャマイカを舞台にした映画に出会って配給し始めて、ジャマイカと多少のコネクションができて、NYのワッキーズの音源や本場キングストンものの濃いオーガスタス・パブロとかのアルバムを出したりしてきたけど、レゲエだけが最高じゃない。またおんなじ話だけど、世界中に好きな音楽が沢山あって、ブルースもいいし、ロックもいいし、メキシコのもいいぞ。この前のトリッキーも良かったなァ。昔の『クリフ・リチャード・イン・スペイン』っていうクリフがシャドーズをバックに、アコースティックにスペイン語で歌うアルバムなんか、他人に聞かせたくないくらいイイぞ。

ケチな話ですねえ。
EC:イイよ、ケチで。デタミはみんなにもっと聞いてもらいたいんだから。

レーベルの始まりは?
EC:『Riddim』でコミックを連載してくれてるゲーリー・パンターというアメリカの画家でれっきとしたアーティストがいるんだけど、この人の『プレイ・フォー・スマーフ』というアルバムが最初のリリース。本人は″サイケディリック・カントリー・ミュージック″とか言ってたな。そしたら次からメジャーのポニーキャニオンが配給してくれて、サロン・ミュージックっていう才能あるデュオのマネージメントとアルバムを発売。英フォノグラムからのデヴューだったけどね。それからMute Beatのマネージメントやアルバムに携わるようになって、アメリカ・ツアーにも行ったっけな。

最初のレゲエ・コンサートは?
EC:85年の日比谷野音でのマイティ・ダイアモンズかな? この前の「ソウル・レベル2001」でプシンが「リリカル・フィーリング」を歌ったんだけど、16年前の野音ではマイティ・ダイアモンズが、この同じ″フル・アップ″というトラックで「パス・ザ・クーチー」を歌って、ホーン・セクションが(Mute Beatの)こだま(和文)君と増井(朗人)君だったわけ。こういうリディムがず〜っと生き続けているのもレゲエの魅力だなぁ。

レゲエにこだわってることについてもう少し語ってよ。
EC:なげーぞ。その話は(笑)。

だから簡単にだって。
EC:まずは音楽として頭下がりますってことで、思いつくまま上げていくと、キング・タビーがクリエイトした "DUB" というリミックス音楽革命。Mute Beatの音源を持ってリミックスしてもらいにタビーのとこへ行ったけど、生タビーは迫力あったな。U-Royが始めた″DJ″というラップにつながるトースティング。ジャマイカン音楽の基ともいえる "SKA" という裏打ちリズム。″スレンテン″というモンスター・リディム。職人スライ&ロビー。スティーリー&クリーヴィのダンスホール・トラック。デジタルBのシャバ・ランクスやガーネット・シルクなどのプロデュース。スタジオ・ワンのコクソン・ドッド、トレジャー・アイルのデューク・リード、バニー・リー、ミス・ポテンジャー、レスリー・コング、スクラッチ・ペリー、ジョー・ギブス、フーキム兄弟、死んだジョンジョ……おう、きりがねーぞ、パラゴンズ、メロディアンズ、アルトン・エリス、ケン・ブース、スカタライツ、ターマイツ、ケーブルスもグラディ・アンダーソンのピアノもいいねぇ、そうなるとジャッキー・ミットゥか。イエローマン、ブラック・ウフル、グレゴリー・アイザックスときてガッシー・クラークの80年代末期にジャマイカ以外でのヒット連発とくれば、ジャーメイン(ペントハウス)のオードリー・ホールのアルバムも良かったぞ。あ〜だめだニンジャマンの天才フロウ、ピンチャーズもオリジナルだな。どーするんだ、止まんねーぞ。UB40もマッド・プロフェッサーもいいねぇ。誰かデカイの忘れてね〜か? 硬質な声が大好きでサインもらったけど無くしたのがピーター・トッシュ、それにバニー・ウェイラー、とくればボブ・マーリィだ。何と言っても影の立役者、クリス・ブラックウェルが偉大だな。ジャマイカン・ミュージックはとにかく他の音楽にも強い影響を与えてる。しかもタフでラフでクリエイティブで…。

わ、わかった、わかった。では20周年の20人のゲスト&フレンズってのは誰よ。
EC:元Mute Beatの人たちとか、デタミの友達で例えばエゴ・ラッピンとかが楽器持ってきたり、皿もってきたり、ケーキ持ってきたりしてくれないかな。

いつも思ってんだけど、甘いんじゃねーの?