![]() 1975年、当時14才だった女の子、ルイザ・マークスが歌ったR&Bカバー「コート・ユー・イン・ア・ライ」(バックは本誌10月号で紹介済みのデニス・ボヴェール率いるマトゥンビ)のヒットから始まったラヴァーズ・ロック。この曲のヒット以降、主に12インチ・シングルで多くのラヴァーズ・チューンが生み出されることになったのです。 この頃のラヴァーズ・ロックを殊更魅惑的にしているのは、ルイザ・マークスを初めジャネット・ケイなど初々しく魅力的な女性歌手や、男性女性を問わず多くのコーラス・グループの台頭。アルトン・エリスを筆頭にロック・ステディ期のベテラン歌手の充実。マトゥンビやクール・ノーツ、アズワドに繋がるミュージシャン達がイギリスならではのタフでタイトでいながらもソウルの影響をうまく取り入れた洗練されたバック・トラックを作りあげていたこと。12インチ・シングルのロング・ヴァージョンの特徴を生かした後半ダブに繋がるショウケース・スタイルやDJをフィーチャーしたヤード・スタイルの面白さ。B面に単なるダブ・ヴァージョンを入れるのではなく、ヴォーカルの代わりにサックスやピアノをメインに据えたラヴァーズ・インストとでも呼びたくなるようなヴァージョンを収録したシングルも多いこと。親しみやすく充分に練られたカヴァー曲が多いなどがあります。なによりメロディや音の粒の麗しさが魅力では、あるのですが…。 ダブがその後のダンス・ミュージックに多大な影響を与えたのと同様に、ラヴァーズ・ロックの影響はソウルIIソウルやビーツ・インターナショナルなどに感じることができます。UKクラブ・ミュージックのルーツとして聴き直してみるのも面白いかもしれません。ただしこれらのシングルは主にメジャーとの配給契約がないローカル・レーベルから出ていたこと、ファッションやアリワなど一部を除き多くのレーベルが今では活動していないことなどにより、今日聴ける機会がほとんどない状態でしたが、今回まさに待望と言えるCDが出ることになりました。 ![]() |