1999年12月号

DAMN RIGHT / MR.VEGAS
[GREENSLEEVES ]

Mr.ヴェガスのセカンド・アルバム。前作の『Heads High』がレゲエ・ファン以外からも大人気だった事もあってかどうか、R&Bやヒップホップを聴く人達へも強くアピールした様なノリの音が目立った感じ。「She's A Ho」「Go Up」等の超大ヒット以外には現時点ではシングルではリリースされていない曲も多いが、色んな意味でヴァラエティに富んだポップ度の高い作品。ジャケットもお洒落。[輸入盤](鎌田和美)

ALPHA AND OMEGA / DUB PHILOSOPHY
[BSI RECORDS / BSI 023-2]

ファースト・アルバム以来、毎年1、2枚アルバムをコンスタントにリリースし続けている彼等の活動は、既に10年位続いているだろうか? ダブの雰囲気は勿論のこと、リズム・パターンもアルファ&オメガ独特のニュー・ルーツ・サウンドを感じさせてくれる。あまりにも洗練された彼等のダブ・サウンドは、本作でも変わることなく健在。ディサイプルズがアルバム中、数曲をプロデュースしているのも特徴。[輸入盤](長井政一)

DUB FIRE BLAZING / BUSH CHEMIST
[DUB HEAD / DBHD 23 CD]

ロンドンではお馴染みのブッシュ・ケミストの新作。彼はコンシャス・サウンドのオーナーであり、プログラマーのダギー・ワードロップと共にエンジニアも務める。ジャー・ウォーリアーやレゲエ・オン・トップ等でレコーディングされる物には大抵彼が関与しているのでご存知だろう。ダブヘッドからの本作も打ち込みによるいつものマイナーコードをメインとしたルーツ・トラックをダブワイズしたものだ。[輸入盤](長井政一)

REGGAE ANTHOLOGY - ANYTHING TEST DEAD / NINJA MAN
[VP / VP1591]

VP社が贈るダンスホール・クラシックス傑作選集のニンジャマン編。しかも彼が86〜92年の最もヤバかったと思われる時期の作品集(CD、LP共に2枚組)。久々に聴く曲が多いけど、いま聴いても圧倒的なバッドなヴァイブスが言葉の弾丸と相まってガンガン伝わってくる。これだけの大作なのに、あっという間の勢いで聴いてしまうはずだ。こういう人が大スターというジャマイカ=レゲエはやっぱり凄い。[輸入盤](鎌田和美)

REGGAE ANTHOLOGY - LOOK HOW ME SEXY / YELLOWMAN
[VP / VP1590]

スムースな唄いまわしとウィットに富んだリリックで80年代の前半に絶大なる人気を誇っていたDJイエローマンのベスト・アルバム。「なんで今更?」という気がしないでもないが、20年が経過した現在、全く色褪せを感じさせずにラストまで聴き通させてしまうパワーはサスガ。改めて才能とセンスの高さを思い知らされた。代表曲は全て収録されたこのアルバム、最近の音しか聴かない方にも是非聴いてもらいたい。[輸入盤](小池信一)

BEST OF / ROLANDO ALPHONSO
[STUDIO ONE / CD-1127]

サックス奏者ローランド・アルフォンソの70年代初期のアルバムがCD化。木漏れ日みたいに暖かい「To Sir With Love」、ゆったりとしたフルートでメロディを奏でる「Jazz Steady」、ヒッチコック・イン・キューバって感じの「Mood-arama」など聴き所たくさんの珠玉なリラックス・ロックステディ集。今回初めて収録された曲も多く、ドン・ドラモンドやリコ・ロドリゲスをフィーチャーしたものもあり。[輸入盤](武田洋)

WANT SOME FREEDOM / AFRICAN BROTHERS
[EASY STAR / ES-1009]

シュガーがソロとなってスタジオ・ワンに行く前にトニ−・タフ、デリック・ハワードらと結成していたヴォーカル・トリオ、アフリカン・ブラザースの初CD化作品。ルーツ・クラシック「Torturing」「Party Night」他、アビシニアンズばりのファルセット・ハーモニーがたまらない「Righteous Kingdom」などの哀愁チューンもチェック。ロイド・パークス、ファミリーマンらの躍動感たっぷりベースも最高。[輸入盤](武田洋)

KING TUBBY'S PRODUCTIONS IN THE DIGITAL ERA 1985-89 "FIREHOUSE REVOLUTION" / V.A.
[PRESSURE SOUNDS / PSCD34]

キング・タビーと言えば、とかく70年代の作品ばかりにスポットが当ってばかりで、80年代の仕事は意外と無視されているが、これは素晴らしい。本作は80年代のファイヤー・ハウス・レーベルの傑作集。意外と入手が難しいタビー版“スレンテン”や“テンポ”等々、ダンスホール野郎達のマスト音源が満載。ダンスホールとダブを切り離して考えるエセ・ダブ・マニアこそ、本作を聴いて楽しんで貰いたい。[輸入盤](鎌田和美)

NINEY THE OBSERVER - MICROPHONE ATTACK 1974-1978 / V.A.
[BLOOD AND FIRE / BAFCD037]

70年代に活躍した名プロデューサー、ウィンストン“ナイニー”ホーネスのレーベルからリリースされていたDJモノのシュグルをコンパイル。ナイニー自身の名曲「ブラッド&ファイア」やデニス・ブラウンの「カサンドラ」等のヴァージョンに、ビッグ・ユース、I・ロイ、ディリンジャーらがトーク・オーヴァーした超強力な一枚。ゲットーのニオイをプンプンさせた挑戦的なトースティングはマジでヤバい![輸入盤](小池信一)

ピストルオペラ・サウンドトラック/こだま和文
[スピードスター / VICL-60786]

今月末に封切られる鈴木清順監督の久々の新作『ピストルオペラ』のサントラ盤。以前から噂は聞いていたが、全曲こだま和文の演奏によるものだ。マイルスの様に映像を観ながら即興で創った訳ではないそうだが、このスリリングかつストイックな演奏は、やはりこだま和文でなければ生まれなかったものばかり。特にテーマ曲である「野良猫のテーマ」(Meets Ego-Wrappin')の出来が素晴らしい。早く映画も観たい。(大場俊明)

スリー・ザ・ハードウェイ/マイティ・ジャム・ロック
[マイティ・ジャム・ロック / KSR / KCCD-049]

今現在、日本に於て間違いなく最強のハードコア・レゲエDJ三羽烏、ジャンボ・マーチ、タカフィン、ボクサー・キッドを擁するMJRによる最新の作品集がCDで登場だ。ミックス・テープでも充分そのクオリティの高さや、誰にも真似の出来ない突飛なアイデアは確認出来たが、こうして一般にも入手できるフォーマットで世に問える作品を出せた事を素直に喜びたい。代表曲ずらりなので中味は保証付き。(大場俊明)

フェイス・2・フェイス/ベイビーフェイス
[BMG / BVCA-21085]

アリスタを移籍、心機一転にあたっての固い決意が投影された新作だ。ネプチューンズやスヌープらとの共演に加え、ファルセット唱法の多用等、随所に「挑み」が感じられるが、注目すべきは自己改造に取り組む彼の姿勢それ自体なのかも。取り込まれるイマの空気は多岐に渡り、それはマイク・シティやティム&ボブらとの共演で鮮やかに浮き彫りとなるが、それを特に力むこともなしにこなしてしまう彼に再度感服。(石澤伸行)

ナウ/マックスウェル
[ソニー / SRCS-2338]

3年ぶり、幾度かのおあずけを喰った挙句の3作目である。スチュワート・マシューマンやワー・ワー・ワトスン等、音で脇を固める布陣に変更はなく、バネの効いたファンクやアオいバラードが並ぶレパートリーもいつも通り。でも今回の彼は顔付きが違う。パフォーマンス時の彼がうつ向くことはなく、時折くつろいだ表情でハジけてすらみせるのだ。軋むような緊張感の解けた世界にはぐっと身近になった彼がいる。(石澤伸行)

スーパーヒーロー/ブライアン・マクナイト
[ユニバーサル / UICT-1010]

2年ぶりの4作目。彼のヴァーサタイルな創作意欲は、大仰な映画音楽のスコア風からAOR的な志向まで相当な振れ幅をみせ、バトルキャットやネイト・ドッグらとの黒いタッグも、彼にとっての新たな展開となっている。中盤に鎮座した穏やかなメロディー群、そしてそこに乗るシルキーな歌声は、相も変わらず聴く者すべてを恍惚とさせてくれるはず。国民的アーティストとしての自信が、王道感を醸し出す作品だ。(石澤伸行)

ソー・ブルー/ブルー・カントレル
[BMG / BVCA-21098]

怪物レーベルJが送り出す、超実力派シンガーである。その整ったルックスに反し、アルバムから飛び出すのは安定感と瞬発力、そして憂いと華のすべてを兼ね備えた、天井知らずの歌唱だ。ダラス・オースティン、ジャム&ルイス、トリッキー・スチュワートらによる音仕事は、壮大かつヘヴィーな世界観を提供するが、彼女はそれらをヒリヒリとした緊張感を湛えながら引っ張っていく。そのブルーズ臭たるや強烈!(石澤伸行)

エターナル/アイズレー・ブラザーズ
[ユニバーサル / UICW-1009]

グループの40年に渡る活動を集約した5年ぶりの新作である。アーニーとロナルドが支える看板は、年季が入るどころか黒光りを増し、R.ケリーやジャム&ルイス、ラファエル・サディークといった強者たちを完全に自らの世界に溶け込ませてしまっている。アーニーのギターが咽び泣き、ロナルドが合わせて悶え、そしてアンジェラが艶のある歌声を響かせれば、そこに立ち現れるのはまさに永遠なる喜びだ。もう完璧!(石澤伸行)

ラッシュ・アワー2/OST
[ユニバーサル / UICD-9001]

デフ・ジャム勢が総決起した超豪華サントラ。ダークチャイルドが世話するキャンディス・ラヴやドゥルー・ヒル・ファミリーのラヴハーら新進の登場に加え、ミュージック&レッドマン、メイシー・グレイ&スリック・リック、そしてウタダ&フォクシー・ブラウンと賑々しい掛け合いが最高に楽しい。特にモンテル・ジョーダンの豪奢なファンク感覚やジル・スコットの有機体質は白眉だ。ウェッサイものも今が食べ頃!(石澤伸行)

ファンク・オデッセイ/ジャミロクワイ
[エピック / ESCA8400]

通算5枚目となるジャミロクワイの新作。もはやお家芸となったであろうジェイ・ケイ流ファンク&ディスコをスペイシーなムードで大展開。新世紀や自然、現実、未来などさまざまなキーワードにポジティヴな思想を促す彼のメッセージはファーストの頃から何ら変わらず奥行きだけが深くなったと言えるだろう。とにかく一聴すればジェイ・ケイと分かるサウンド・アイコン効果はまだまだ健在。恐らくこれからも。(高橋晋一郎)

スーベニアー/スモール・サークル・オブ・フレンズ[バスク / BSQC-0001]

いつもふと気付くと良質な作品を届けてくれるS.C.O.F.が、暫くのブランクの後、さらりと自身のレーベル、Basqueを立ち上げ5枚目のアルバムをリリース。のっけから飛び出す軽快なリズムとメロディを聴いた瞬間、彼等は次なるステップへ踏み出した事に気付くはずだ。特に持ち前の隠し味は、更にこっそりと絶妙にブレンドされ、何気なく聞こえる音の隙間をのぞけば、ハッとする瞬間が何度も登場するだろう。(大場俊明)

ピクチャー・オブ・デッド・ホース/グリーン・ジニー
[ジャマー / インパートメント / JMIP8002]

ボム・ザ・ベースのメンバーとなったりシンプリー・レッドのツアー・サポートをしたりと世界的に活躍するギタリスト、ケンジ・ジャマー率いるグリーン・ジニーの1stアルバム。UAのプロデュースやツアーのバックを務めたことでも知られるメンバーのユニットだけあってダブの要素を活かしつつもバンドの空気感を失わない独特の雰囲気が全体を包んでいる。無類の音楽好きであることが伝わってくる好盤。(高橋晋一郎)

クラーロ/ブロッサムステイツ
[ビート / BRC48]

ヴィンセント・ギャロまでリリースするなど多彩なディレクションでリスナーを驚かせているワープが次に送り込んでした刺客はフィンランドのラッシー・ニッコウのソロ・プロジェクト。簡単にエレクトロニカと呼ばれてしまうくくりの中にアンビエントや音響、テクノにハウス、さらにはブレイクビーツと耳を飽きさせないエッセンスが充満。第二のリチャード・ディヴァインとしてこれからも要注目必至。(高橋晋一郎)

トシユキ・ゴトウ・プレゼンツ・サンデー・アフタヌーン/V.A.
[フラワー / シスコ / FLRC-004]

80年代後半からDJをスタートさせ、世界各地で人気を誇るDJ、トシユキ・ゴトウ(来年にはアルバムをリリース)による自身のパーティ「Sunday Afternoon」(現在はSunday Jump, Infusion)を作品化。“日曜日の午後”というイメージ=やさしい黄色い光、穏やかな時間の流れ、何とも言えない気怠さ…といった人によって異なる様々な風景を、ジャンルや時代を超越した楽曲で感じさせてくれる構成は見事。(大場俊明)

スピリチュアル・ライフ・ミュージック/V.A.
[カッティングエッジ / CTCR14187〜8 ]

ジョー・クラウゼル率いるスピリチュアル・ライフ・ミュージックが遂に日本正式上陸決定! まずはそのレーベル・ガイドとなるコンピレーションをリリース。ジョーはもとよりテン・シティーにジェフテ・ギオム、ブレイズにカサンドラ・ウィルソンといったアーティストによるクラブ・アンセムをたっぷりと収録。クラブ・ミュージックという枠組みを軽々と越えてしまう程の楽曲性の高さに改めて納得させられる強力な21曲。(高橋晋一郎)

トワイライト・ワールド/V.A.
[ソニー / SRCS 2527]

青山のレコード・ショップ@スパイラルの山崎、鶴谷の両氏が〈黄昏や日没後または日の出前の薄明かり〉といったイメージをテーマに選曲したコンピレーション。シュギー・オーティスからニッティン・ソウニー、ヤン富田からコダマ&ゴウタまでジャンルも録音年代も国もそれぞれの楽曲が丁寧な気づかいでセンス良く並べられ、選曲の妙というものが体感できる。トワイライトのみならずオールタイム・ベストな一枚。(高橋晋一郎)