2000年10月号
 


L to R : Prince Alla, Johnny Clarke, Anthony Johnson

 Greetings Friends,
Brighton Universityの敷地内からロンドンのHackney Marshesへと会場を移して行なわれた今年の「Essential Festival」、主催者側にとってはまたもや文句無しの成功を納めたといえる。一方プレスの人間やアーティスト達にとっては毎年恒例、いつものイヴェントであった。昨年を上回る数のセキュリティーが他バックステージへ自由にアクセスするのを困難にさせたりと、相変らずの厳重体制が目立ち、多くのアーティストから、自分達のプレイしたテント内以外への移動を許可されなかったとの文句の声があがった。はるばるやって来て軟禁状態とはあんまり。一般の観客にとっては、一旦入場してしまえばBrightonの時とほぼ一緒、といった具合。

 何と言っても大勢の人にとっての問題は、8つもの巨大テントにおいてそれぞれのステージが同時進行で繰り広げられる中、自分のお目当てのアーティストを全員観るのは不可能であったという事である。これも毎年の事で、今年も改善される事はなかった。また、何が何でも夜十時に全てを終わらせなくてはいけないといった条件の為、のんびりムードの午後の早い時間帯とは打って変わり、後半は残っている全ての出演者を時間内に詰め込まなくてはという焦りから、かなりバタバタと慌ただしいステージが続く事となった。

 例えば Coco Teaなどはほんの数曲を披露しただけで実にあっけなくステージを終える羽目に。私はというとバックステージのフェンスのあたりでかなりの時間をアーティストや友人等と話して過ごし、ステージ前には写真を撮る為にほんのわずかの間行っただけであった。今年はその昔に存在した「写真撮影は最初の3曲以内に行なう事」といった、私にとっては笑うに笑えないばかげた規制も復活しあきれるばかりであったが、まあそれもこのイヴェント自体が大きくなったという証拠であろう。早い時間にパフォームしたRasItes, Johnny Clarke, Everton Blender, Prince Alla等のステージは楽しみにしていたにもかかわらず、必要とされるパスやリストバンドを調達する為にあーだこーだしている間にとっくに終わってしまっていてかなり残念であったが、彼等とは後にバックステージで話をする事が出来た。

 当日、出演を果たした殆どの有名アーティスト達にとって、 「Essential」は一日のみ立ち寄る、海外ツアーの一部といった感覚であるらしい。Cultureなどは既にヨーロッパを回り、すぐジャマイカに戻ってニュー・アルバムの仕上げに入るとの事だし、Prince Allaはスイス、アフリカ、その他諸々でプレイした(彼も近々、しばらくぶりのアルバムが出る予定)。Sly & Robbieも同様、また彼等はこの日初めて私がまともにステージを観れたアーティスト、「ニュー」 Black Uhuruに力を入れている。

 さて、「ニュー」とは? 率直に言ってしまうと、殆どの人は(ミュージシャンでさえも)冷静かつ闘志に溢れるDuckie Simpsonの良きパートナー達であったMichael RoseとPumaが居た、1980年全盛期頃の彼等そのものを聞いていると思ってしまうくらい、その違いがわからない、といったところ。十年近くも昔に私が撮影をした事がある、当時Castro Brown のNew Name Studio から出てきたばかりであった若者、Andrew B が昔のRose そっくりのリード・ヴォーカルを務め、Carlene Fordという若い女性が Pumaのパートをこなしている。彼等が披露する曲の殆どがRose自身が書いていた時代のものであるし、Duckieが当時と全く変わってなかったりと、結局は何も「ニュー」でなかったりするのである。

 レゲエのメイン・アリーナでは今最もホットな闘争的DJ、Sizzlaがパワフルにまくし立て、熱狂的な盛りあがりを見せていたが、彼の長丁場の攻撃を見守るだけで疲れてしまった。Cultureは私が15分以上観る事が出来た唯一のグループであるが、彼等はこのインターナショナル・ビジネスの現場においていつも通りの抜け目のない演奏を披露し、お金を払う価値があった事を実感させた。

 彼等の凄いところは、Joseph Hillの創作の才能、そして定期的に良質の新しい作品を発表する事により、とにかく飽きさせる事がないという事である。またツアーでも毎回同じ曲が演奏されるとは限らないので「Calling Rastafari」や「Money Girl」のような歌にも、まだまだ新鮮味を感じる事が出来る。厳しいといわれるこの業界で、長年活躍し続けるヴェテランでカリスマ性を持つグループの顔、 Joseph Hillが何をすべきかをきちんと把握しており、彼等はそれを自然体でやってのけるのである。最後にステージを後にしたのはそんな彼等であった。

何らかの問題があったらしいBig YouthのトリプルCDセットと、 Gregory Isaacsのクラシック特集『Mr. Isaacs』に続くBlood & Fireからの新作は、ジャマイカ人によるアメリカン・ソウルとファンクのコンピレーションもの、『Darker Than Blue : Soul In Jamdown』。この種の音源への興味が高まってきている今日この頃、実にタイムリーなリリースである。流行りに乗っただけとの批判も聞こえるが、出来栄えは最高であり、私がこだわるのはその点のみなのである。

そういえば噂によると、「Darker Than Blue」というインターネット・マガジンが、アルバムのタイトルの件で、Blood & Fireを訴える事を考えているそうである。彼等こそ、Lloyd CharmersのアルバムでカヴァーされているCurtis Mayfieldの曲名から名前をとったんじゃなかったのか???
 Till next time, take care...



Black Uhuru
                          [訳/有賀由紀子]