1999年12月号

VISIONARY / EVERTON BLENDER
[HEARTBEAT / 11661-7754-2]

「ゲットー・ピープル・ソング」の大ヒットで知られるコンシャス・シンガー、エヴァートン・ブレンダーの最新作。制作は彼自身のレーベル、 Blend Dem。このところ大きなヒット曲は無いものの、コンスタントにシングルを発表し、コンシャス系の中堅どころとして安定感のある活動を続けている。今回のアルバムもこれといった大きなサウンドの変化は無いが、力強いメッセージが全編に貫かれた好アルバム。[輸入盤](小池信一)

FEEL THE POWER / COCOA TEA
[VP / VPCD-1626]

説明不要のベテランの久々のリリース。優しい声とメロディは相変わらずで、ファンの方なら当然買いでしょう。R&Bヒット曲のリメイク、スパニッシュ・テイストのギターが印象的な曲、哀愁のメロディから、カラッと晴れた青空に似合う名曲「Sweet Life」までヴァラエティに富んだ内容。レゲエの温かみを大事にしながら今の音を取り入れてくのが上手いXtermi-natorプロデュースならではの作品。[輸入盤](鎌田和美)

GOTCHA! / ERNEST RANGLIN
[TELARC/CD-83533]

アフタービートにジャズ・フレイバーを上手くまぶしたアダルト・オリエンテッドなインスト・アルバム。ゆったりしたリディムに被さるギターとピアノの音色がひたすら心地良い「Soulful Moments」「Thinking Of You」の2曲は白髪になってもずーっと聴いていたい。あのマイティ・ダイアモンズ/ミュージカル・ユースの名曲「Pass The Kouchie」も見事なサマー・ブリーズ・チューンに変身。[輸入盤](武田洋)

PERILOUS TIMES 1974-1999 / MAX ROMEO[CHARMAX / NO NUMBER]

マックス・ロメオはとにかく息の長いシンガーである。本人は今現在なりを潜めているが、ラスタ・ビジネスとして過去に出した曲の数々をベスト・セレクションしてバシバシリリースし始めた。本作は74年のリー・ペリー時代から99年の曲までをベストセレクションしたもの。内容は全てルーツ・レゲエだが、ブラック・アークのアップセッターズものからデジタル・ルーツまでの幅広い選曲。全12曲収録。[輸入盤](長井政一)

COLLISION / MAX ROMEO
[CHARMAX / NO NUMBER]

94年にジャー・シャカ・レーベルよりリリースされていた『Fari Captain Of My Ship』からのベストにダブ・ヴァージョンを付け足したセレクション。それを自身のレーベルから再び新アルバムとしてリリース。録音は全てジャマイカのファイアー・ハウス・クルーで、プロデュースは当然ジャー・シャカ。内容としては全曲打ち込みのヘヴィーなルーツ・レゲエである。サウンドを含め、とにかく格好いい。[輸入盤](長井政一)

DUB MASSACRE / TWINKLE BROTHERS
[TWINKLE/NG 741]

このジャケット、そしてマッド・プロフェッサーとジャー・シャカがダブ・ミックスした87年のアルバムってだけで“買い”決定。硬派なトゥインクル・ブラザースの楽曲から、更に余分な音を削り落とした体脂肪率0%の仕上がり。中でも彼らの代表作のひとつ「Jahovia」のダブは研ぎ澄まされた刃物のように危ない。イギリスのソリッド感とジャマイカのイナタさが同居した第一級のダブ・アルバム。[輸入盤](武田洋)

AUTHORIZED VERSION / JOHNNY CLARKE[VIRGIN / CDFL22]

76年にフロント・ラインからリリースされたバニー・リー音源の名作が待望のリイシュー。レヴォリューショナリーズをバックに入魂のヴォーカルを聴かせるヘヴィー・ルーツな一枚。ディリンジャー、ビッグ・ジョーらDJ達の元ネタ多数。「レガライズ・イット」「クレイジー・ボールドヘッド」「シマー・ダウン」などの名曲カヴァーも収録されており、一本調子なモノが多い彼のアルバムの中ではかなり良い出来と言える。[輸入盤](小池信一)

DREAD LOCKS DREAD / BIG YOUTH
[VIRGIN / CDFL23]

オリジナルは75年頃、UKのKlikからリリースされ、その後、フロント・ラインから再発されたビッグ・ユースの名盤。ミキシングはエロール・トンプソン、バックはスライとロイド・パークスのスキン・フレッシュ&ボーンズが担当。“コンカリング・ライオン”Trkや“マーカス・ガーヴェイ”Trk等の重厚なヴァージョンに、ヘヴィーでストロングなビッグ・ユースのトースティングが絡む強力アルバム。[輸入盤](小池信一)

ライオン・ハート/スタブ・4・リーズン・アンド・ザ・スタイルス
[イレブンサーティエイト / 1138-0014]

中部地区、関西地区で活動する岐阜のハードコア・パンク・バンド、Stab 4 Reasonのサイド・プロジェクトとして99年に活動を開始したこのバンド。S4R自体、元々レゲエの影響もあったようだが、このプロジェクトではその面を拡大し、完全なるルーツ・レゲエを披露。当然、ロック・バンド然としたヴォーカル・スタイルは捨てきれていないが、こうしたロッカーズ・スタイルの演奏とは相性はいいようだ。(大場俊明)

ブルー・フレイム・ダブVOL.2/V.A.
[SFレコーディングス / SFR-002]

昨年、「Riddim Award」にも選出された関西のダブ・シーンを紹介したシリーズ第二弾。前作は無名ながら関西勢のパワーに打ちのめされたが、本作もまた新たなアーティストを迎えつつもどれもクオリティが高い。特にシーンを牽引するSoul Fireの軽やかさ、デタミのIcchie率いるBush Of Ghostsのクールネス、Otolaのクロスオーヴァー感覚はゾクっとさせられた。他もダブ・シーンの明るい未来を感じさせるチューンばかり。(大場俊明)

ルーツ・ミュージック3〜ザ・ジャワイアン・エクスペリエンス/V.A.
[ミュージック・キャンプ / GJ-3008]

一時期日本でも頻繁に紹介されていたジャワイアン・ミュージック。その後、あまり紹介されていなかったが、ハワイでは日本の動きなんて当然の様に関係なくずっと鳴り響いていたそうだ。本作はハワイのクワイエット・ストームがハワイ、JA(B.ハモンド「They Gonna Talk」等)、USA、UK、そして日本(ドライ&ヘビー)の良質な音源をコンパイルしたもの。リラックス・ムード満点で、いい意味で良質なBGM集。(大場俊明)

シストレン・プレゼンツ・ダンシング・クィーン・リディム・ウィズ・デジタルB/V.A.
[TDKコア / GST-CD007]

『Sweet Lovers Talking Vol.1』、シスター・カヤのソロ、そして本作と今年の夏のシストレンはリリース・ラッシュだ。ルーキーD、アンソニー・クルーズ、フロント・ページと言ったシスター・カヤ以外はジャマイカ勢が参加した本作は、タイトルからも分る通り、誰もが知ってる王道カヴァー曲集。過去にもこうした企画物は多々あったので斬新さはないが、ここまで王道の選曲ばかりだと逆にジャマイカ的なのかも。(大場俊明)

アリーヤ/アリーヤ
[東芝EMI/VJCP-68264]

5年ぶりの3作目。ティンバランド、キー・ビーツらトンがり系クリエイター陣と彼女のクール・ビューティーなヴォーカルの絡みがいよいよもって完成の域に達した感のある作品だ。特に22歳という年齢からは考えにくいほどのニュアンス豊かな歌唱法の実現は、盟友スタティックの功績が大かと。J・ダブやブッダら新進気鋭勢の仕事も冴えわたる。この気高いまでの革新性に追随できる者など存在するのだろうか?(石澤伸行)

ジャギド・リトル・スリル/ジャギド・エッジ[ソニー/SRCS-2467]

前作の大ヒットを引き継ぐかのように、ジャーメイン・デュプリやヌーンタイムらアトランタ勢との濃ゆい結び付きで臨む3作目。力強さを増したリードに加え、バック・コーラスもますます盤石なものとなり、アップにスロウにその勢いは誰にも止められないといった感じだ。男性ヴォーカル・グループの頂点が見えてきた彼らの自信は、ネリーやリュダクリス、そしてトリーナら強者/クセ者の起用にも表われている。(石澤伸行)

ファースト・ボーン・セカンド/ビラル
[ユニバーサル/UICS-1013]

フィラデルフィア出身の大型新人。確実に<ディアンジェロ以降>を感じさせる男であり、ソウルクエリアンズやマイク・シティ作品での穏やかなソウルネスは彼の魅力のひとつだろう。しかし、Dr.ドレが提供する抑制の効いた重たい世界観と彼のしなやかなヴォーカルの結合は、本作の中でも最高にスリリングだ。豪腕ファンカー然りとした表情の裏にある豊かな音楽性にも惹かれる。モス・デフとコモンも集結。(石澤伸行)

ディス・エイント・ア・ゲーム/レイ・J
[イーストウェスト/AMCY-7254]

4年ぶりの2nd作。溌剌としたファンク感覚が印象的だった前作に比べ、ロドニーやネプチューンズらにより提供された今回の音世界は、一転して「陰り」や「狂気」といった言葉を想起させる。そしてそれを増幅させるかのような彼のヴォーカルは作品全体をダークな深みへと誘うが、時に見せるガラッぱちな振る舞いでハジけるかと思えば、同時に鋭くイマをも切り取ってみせる。ディヴァンテ・スウィングも参加。(石澤伸行)

ベイスド・オン・ア・トゥルー・ストーリー/リル・モー[イーストウェスト/AMCY-7246]

このデビュー作の前には、既にヒップホップ/R&Bを問わない幾多の名客演を重ねてきているクイーンズ出身の女性アーティストである。ラップもコンポーズも難無くこなす彼女だが、ここでは主にスロウ曲を並べることで、意外にもふくよかなヴォーカルの妙をプレゼンしてきた。ココ似の声質はどんな曲にも映えるが、白眉はカール・トーマスとのデュエット曲か。ここでの情感のこもった絡みには涙を禁じ得ない。(石澤伸行)

ラヴ・セッション/シルク
[イーストウェスト/AMCY-7257]

2年ぶりの4作目。前作同様、2000ワッツとタッグを組み1曲を除く全てをバラードで通した各曲は、重厚なヴォーカルの魅力を余すことなく伝える。5人の鉄壁のハーモニーは一枚岩となって、せわしくシンコペするビートと大仰なピアノの和音連弾とぶつかり、そして煽り合うようにして壮絶な歌絵巻を描いていく。リンクやアントワネットらファミリーが脇を固め、テイマー・ブラクストンが華を添える大充実作。(石澤伸行)

637:オールウェイズ・アンド・フォーエヴァー/クリスタル・ケイ[エピック/ESCB-2257]

再始動後の好調な活動をふまえてのセカンド。前作のキュートなガールズ・ポップ然りとした作りに比べ、今様R&B的なプロダクションへのシフトが認められるものの、彼女の卓越したヴォーカルは相も変わらず眩しく光る。T.Kuraや田島貴男らによるアップ、そして藤原ヒロシと大沢伸一がタッグを組んでのスピリチュアルなスロウ等、イイ曲とイイ音たちに後押しされてクリケイ・ワールドはますます拡がりをみせる。(石澤伸行)

ウフルー・パート1/スラム・モード
[カッティングエッジ / CTCR-14179]

ジョー・クラウゼル率いるスピリチュアル・ライフ・ミュージックからドロップされたマイケル・コールとエンジェル・ロドリゲスのユニット、スラム・モードのアルバム。独創性が高く、非常に洗練された作風はあらゆる音楽を消化しつつも根底には必ずソウルを存在させた完全にジャンルレスな一枚。SEやインタルードを取り込んで構成されたその世界は、まさしくミュージック・ジャーニーと呼ぶにふさわしい完成度をみせている。(高橋晋一郎)

イル・シエロ/ボッサ・ピアニキータ
[ナゴミックス / FFCA-2001]

ピアニカ前田をバンマスとして坂田学、宮田誠、田中義人と通好みのメンバーで結成されたバンドのファースト。バンド名通りボサ・ノヴァをベースにしながらも、ピアニカの人なつっこい音色が様々なビートに乗って一筋縄ではいかない不思議な音空間を演出。音響やラウンジ、ロックやジャズまでも軽快にセンス良くとり混ぜ、演奏しているミュージシャンの遊び心やユーモア、実験性までもがたっぷりと伝わってくる秀作。(高橋晋一郎)

フリー・アズ・ザ・モーニング・サン/ミスター・ヘルマーノ
[ファイル / FRCD-112]

ロンドンのレコード・ショップ、ミスター・ボンゴが主宰するレーベル、ディスオリエントから放たれたミスター・ヘルマーノのセカンド。カルロス・サンタナによる「Free As The Morning Sun」のカヴァーで幕を開けるこのアルバムはジャズやブラジル、ソウルといった音楽のテイストを洗練された形でブレンド。ベン・ミッチェルとクリス・フィッツジェラルドのバランス感覚の良さが発揮されたリスニング・ユースな一枚。(高橋晋一郎)

オーシャン・サーファー・クール・ダド・ビルディング・ショップ・サーフボーズ/パートン木村
[ホット・チャ・レコーズ / IDCH-1003]

99年夏、あまりにも唐突に『ローカルズ』(プロデュースはヤン富田)を発表し、ごく一部で夏の話題をかっさらった謎の男、パードン木村が久々に帰ってきた。さて本作。ヤン富田の手を借りずとも、やはりパードンはパードンであった事を証明するに充分な濃くも軽やか痛快盤だ。実際、緻密な計算があったかなかったかはさっぱり分らないが、ここに真空パックされた音は、マジで爽やか。(大場俊明)

ボサ・トレ・ジャズII/V.A.
[トイズファクトリー / TFCK-87824]

フランスのイエロー・プロダクションズからリリースされた第一弾が世界的に好評だったプロジェトの第二弾。ブラジル・テイストなクラブ・ミュージックが氾濫するなかでも独自のベクトルを持った作品を収録し、差別化につながるあたりはレーベルのA&Rでプロデューサー、DJをもこなすDJ Yellowの手腕によるものだろう。同レーベルからは、トム&ジョイスのトーマスのユニット、リンボ・エクスペリエンスの楽曲を収録。(高橋晋一郎)