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![]() 葬式の前夜に、故人が生前住んでいた家、または縁のある場所(故人が友人らと集った場所など)に親族や友人、隣人などが集まり故人を偲びながら、一晩中飲んで歌って踊り明かす、それがナイナイ。アフリカの風習の名残だそうだ。本来は、死亡後毎晩9回この儀式を繰り返し、9晩明けた次の日に葬儀をするからこの名があるが、死亡後9日目の夜にこの儀式を行うことも多い。 先日夫の叔母が亡くなり、行った田舎のナイナイが本来の伝統的な式だった。 モーナー(本来は哀悼者の意)と呼ばれる「葬式のプロ」とも言うべき数人の男女のグループが、はるばる隣村から来て場を仕切っていた。竹とヤシの葉で作った、ドリンクや食べ物用の小屋までこしらえてあり、横で村の大工がお棺を作成中で、何人かがその手伝いをしていた。聞けば、村民総出で墓穴を掘ったりご馳走を準備したり、遺族の手伝いをしているという。家の中心には大きなテーブルが置かれ、花瓶に生けた大ぶりの花の横には砂糖と塩、ライムが皿に盛られてあった。これは、死んだ人が起き上がらないように、という意味があるらしい。 叔母のナイナイは3晩続いた。 ラム酒はナイナイの準主役的な存在で、庭に撒いてお清めにも使う。そして氷は御法度。氷は、葬儀屋で遺体を保管するときに使うドライアイスを思い起こすせいだろうか、どんなドリンクにも氷は使われない。ティー、コーヒー、チョコレート・ティー(別名ココティー)など温かいドリンクもよく飲まれ、コーヒーにラム酒を入れて飲むのが人気だ。サウンド・システムが呼ばれることも多いが、女性モーナーを中心に、故人が好んだ賛美歌を繰り返し歌い、ドラムと竹笛など楽器を使ったり、モーナーがMC的な役割まで演じていた。 "Yu Caan Go Inna Bigga Room, Bigga Dead And Gone And Him No Left No Will"(ナイナイで歌われる唄) 死亡してから葬式までの期間が長いのは、葬式費用の工面という問題があるからだろうか。何せジャマイカには香典という習慣がない。葬儀のとき教会で、式の最後に会葬者からお金を集めるのだが、これは教会への寄付金であり、遺族の手にはわたらない。そのくせナイナイでも葬儀の後でも会葬者は皆食べ放題飲み放題。 日本でもよく葬式は故人の人柄が出ると言われるが、ジャマイカこそそれが当てはまる。 ジャマイカでは少数派であるカソリック教会での葬儀はしめやかに、参列者の服装も黒で、日本のキリスト教会での葬儀とほぼ変わりはない。ジャマイカで多数派のプロテスタント教会のお葬式では、参列者は黒と白、紫を中心に装い、故人の人となりによってはまるで結婚式のように会葬者がそれぞれのお洒落を披露する。 故人が派手好みで、DJやゲットーの親分など有名人の葬式の場合、レオの館系のダンスホールばりばりファッションで仮装行列のよう。鮮やかな色の服、シースルーなど何でもあり。 遺体に着せる洋服は、故人が生前好んだ洋服だったり、街のテイラーが下着まで作って着せたりする。故人が既婚者の場合、未亡人は葬儀にテイラーの仕立てたお揃いの下着を着る。昔は、未亡人は再婚するまで赤い下着をつけていたという。これは、死者の魂が愛する人に舞い戻ってしまうことを防ぐ為だそうな。 ジャマイカは土葬が圧倒的に多く、火葬は身寄りがないなどよほどの事情がある場合のみ。生まれた場所で永遠の眠りにつくのが基本だから、カントリーサイドでは先祖代々のファミリー墓地が裏山にあり、土葬で埋葬される。都市部の場合も、あればファミリー墓地、田舎がない場合は公共墓地に埋葬する。埋葬の際、故人の好きだった物が入れられるが、ビールやガンジャが圧倒的に多いね。ガンサルートもあったりする。牧師のお祈りの横でパンパーン。 ジャマイカ人は本当に立ち直りが早い。喪に服す意味でずっと黒を着るなんてもってのほか。 Him Left Two Hog Fi Di Whole A Wi, Wi Bigger Bradda Tek Weh From We. |