マイクを持って間もなく15年になろうとするベテラン・レゲエDJ、パパ・ユージがザイオン・ハイ・プレイヤーズと作り上げたファースト・ミニ・アルバムが完成。頑固にレゲエ人生を貫き通す彼のレゲエとの出会いや作品について訊いてみた。

●レゲエに目覚めたきっかけは?
パパ・ユージ(以下P):兄貴がバンドやってたもんで、パンクとかニュー・ウェイヴとか中学2年位から聴いてた。クラッシュは大好きだったね。でも、いつも兄貴の影響ばっかりだなって思い始めて、兄貴達の上に行く音楽はないかな、って意識してたらレゲエに出会ったんだ。

●マイクを握ったのはいつ頃?
P:17歳の時かな。実はジュニア・ディの兄貴にも凄い影響受けてて。3人ともサーファー仲間で、俺が中二の時から家族も同然でね。そんでジュニアの兄貴が日比谷野音のマイティ・ダイアモンズのライヴとかアスワドに連れてってくれたのね。物凄いシビれてさあ。そんでジュニアの兄貴が「バンドやろう!」って急に言ってきて、アスワド、スティール・パルス、イエローマン、ジェイコブ・ミラーとかカヴァーして。

●いつからDJスタイルに。
P:いや、最初DJスタイルって(区別が)分んなかったんだよね。唄の一種だと思って、そのまんま意味も分らずカタカナに直してやってた(笑)。だからルーツ・シンガーだったし、DJでもあったんだ。で、85、86年頃だったと思うけど、東京のクラブに連れてって貰った時にランキン・タクシーがやってて、ゴソゴソ何か言ってんだよね(笑)。何だ、ありゃあって(笑)。凄いかっこいいトラックがかかって、それがキング・コングの「トラブル・アゲイン」だったんだ。次の日にすぐに買ってすっかりハマって。

●で、横浜に行ったんですよね。
P:神奈川の大学へ行ってね。たまに下北沢の不思議亭でやらして貰ったり。そしたらいきなり近づいてきた人が居て、「(横浜の)本牧のゼマってクラブなんだけど、まだDJいないんだよ。お前らやんねえか」って誘われてね。行ったらそこにバナナサイズのボングマンが皿廻したり唄ったりしててね。そのうち彼といっしょに毎週というか毎日ラバダブやってたんだよね。

●その後、VIPからシングルを出して、ジャマイカ、NYと渡り歩くことに…。
P:20歳の時に初めてジャマイカヘ行ってすっかりハマちゃって。とにかく「リアリティが無い」って思われるのが嫌でね。自分で納得出来なかったんだよね。それでNYを往ったり来たりしつつ、25〜27歳迄ジャマイカで生活したんだ。NYはアキ&ソルトフィッシュに出会ってね。アキソルはかなり衝撃だったね(笑)。ジャマイカではラスタマンと友達になってね、何回か訪れるうちに心通じて「こいつら一生付き合えるな」って思ったんだ。ゲトーでいっしょに住んでたんだけど、「俺の求めてるのはこれだな」って(笑)。

 高校生の時に映画『ロッカーズ』観て、あのゲトーな感じが凄い俺には合ってるって思ってたからかもしんないけど。とにかく「ここで男としてやってけねえと、どこにも通用しねえな」って思って。人間として当り前の事を凄い教えて貰ったんだ。ジャマイカに長く居たのも、音楽ってより、そっちかもしんないなあ。


●その後、日本に戻ってからの成長は著しいですよね。
P:ホームグロウンのタンコとかとのセッションで鍛えられ、同時にザイオン・ハイ・プレイヤーズってバンドと知り合ってね。アイパン・ドレッドと長野のイベントに唄いに行ったら意気投合しちゃって。この人達といっしょにいれば、ジャマイカの人達といるのといっしょだなって思って。そっからルーツの方へも…。

●このアルバムもザイオン・ハイ・プレイヤーズといっしょですね。
P:ライヴでお客さんの反応がいい曲を選んでね。録音は石川のスタジオなんだけど、ミックスはジャマイカで。とにかくバンド皆でジャマイカを体験したかったんですね。皆で行けば、また意識も変るしね。スタジオもエンジニアも決めずにね。「そんなの決めたら面白くねえ。ぶっつけ本番だ。それが俺達のガイダンスだ」って(笑)。

 やって貰うならスティーヴン・スタンレーって思ってたけど、別に決めてなかったんだ。そしたら彼がやってくれて(笑)。でもやっぱ全然違うもんね。本当、プロ中のプロだと思ったね。因みにレーベルは「ザヤ」なんだけど、俺とバンドの新しいレーベルなんだ。CDとアナログと両方出すよ。


●アルバムのタイトルもパパ・ユージらしいですね。
P:このタイトルは、色んな人達と知り合えて今の俺があるんだけど、その全ての人達に「リスペクト!」って言いたいんですよ。皆がいるからこそレゲエがあるし、自分があるからね。何にでもファウンデーションがあって、その上で今があるからね。そういうリスペクトの意味を込めたかったんだ。

●今までの生きてきた道やステージでの凛々しさが作品にきっちり表れたと思います。
P:今までの中では一番気に入ってますね。今の俺の中のメッセージはやっぱりこん中に入ってる「Try」ですね。今の17、18歳位の若者に聴いて貰いたいですね。あと定年間近の人にもね。社会のシステムって出来上がっちゃってるものがあるじゃないですか。そんな意識は取っ払っちゃえばいいんですよ。ドロップ・アウトしろって言ってんじゃなくて、気の持ちようっていうかね。今ってがんじがらめになっちゃってると思うし、とにかく迷ってる時に俺のメッセージがあればいいかなあって。友達が「お母さんに聴かせたら、お母さん泣いてた」って(笑)。

 でも、レゲエが本当に流行って定着したらヤバイよね。こんないい音楽ねえもん。下手すると全ての音楽の壁がなくなっちゃって、これだけになっちゃっうんじゃねえか(笑)。