今年、結成10周年を迎えたマイティ・クラウンの廻りが慌ただしい。自身のレーベル "Life Style" の本格的始動、雑誌『Strive』の発行、ミックスCDの制作、そして活動の核であるサウンド。どれをとっても妥協を許さず、我がスタイルを貫き通すマイティ・クラウンのキー・パーソン、マスタ・サイモンとサミーTにインタビュー。

 今、こうしてる間にも彼等は何処か(ヨソの国や島を含む)でダンスを盛り上げていることだろう…。カリブ海ツアーの合間をぬって制作された″VP″管理音源のミックスCD『ダンスホール・ルーラー2001』と、″ライフ・スタイル″レーベルの記念すべきアルバム第一弾となる『ライフ・スタイル・レコーズ・コンピレーションVol.1』の各々の発売日にも、彼等は恐らく日本に居ない。そのハード・ワーキンぶりは想像を絶するものがある。

 「これだけ忙しいと体調も崩れるっつーの(苦笑)。アンティガとバルバドスの方に行ってきたばっかなんですけど、寝るのはもっぱら飛行機の中で。ろくなもの食ってないし。で、帰ってきてすぐレコーディング・スタジオに直行。バイブス上げないと作業出来ないしね」(サミー・T)

 マイティ・クラウンのマイティたる由縁は回りから見れば″とてつもないこと″を成し遂げてるのに、そこに決して演歌的な苦労の色を感じさせないこと。それはこの10年の歩みを振り返ってみても、そう。苦労話を苦労話として語らない、笑いを絶やさないいつも前向きな姿勢がそこにある。

 
「自分らが楽しんでやってるから苦労とかは別に。誰もが経験してる事だと思うし。それよりも日本にもシーンと呼べるものがちゃんと確立された事の方が嬉しいよね」(サミー・T)

 「よく10年を振り返ってどうですか?って訊かれるけど、長かったといば長かったし、短かったといえば短かった。でも、自分らにしてみたら、一年一年目標を立てて積み重ねてきただけ、だしね。その中でシーンがいい方向に発展したのは間違いないし。昔、想い描いてた理想の状況が段々現実的なものになってきた。そこで俺達がやるべきことはやり続けること。そしてシーンをよりデカくする、その中でデカくなること」(マスタ・サイモン)

 ″ライフ・スタイル・レコーズ″も、そうした彼らのステップの一つとして、昨年暮れに立ち上げられた。そして、この約半年の間に "Beginning" と "Moment" の2リディムのシングルが続々と投下され、早くも定番のレーベルとなっている。

 「″ライフ・スタイル″は、俺らの回りにこんなヤバい奴等がいるよ、という事を知らしめる為に始めた訳だけど、予想以上にアーティストの皆が凄い力を発揮してくれてる。それをいい形で出せたんじゃないかな。例えばファイア・ボールの『ファイアBのテーマ』とか今までにないパターンの曲に仕上ったし、ジュニア・ディーとヨーヨー・Cのコンビネーションの『雨が降ろうと』とか、ジュン4ショット、ヨーヨー・Cにジャンボ・マーチが加わった『Whe Ya Deal Wid』とか。組み合わせ的に異色だったり。そういう部分でも″ライフ・スタイルならでは″というカラーは出てるよね」(マスタ・サイモン)

 
「リディムを創ってる時、最初に頭に描いちゃうのが、やっぱファイア Bだから。『ファイア Bのテーマ』も『来たあー!』って感じでしょ(笑)。あとグワン・チャイとか凄えハングリーだし、これから上ってくと思う」(サミーT)

 
「最終的には世界進出も考えてる。向こうのアーティストと普通にコラボ出来るレベルに」(マスタ・サイモン)

 
「うん、やっぱりそこまで考えてるね。やっぱり言葉のバリアがあるからパトワじゃないとダメでしょう。そこはクリスとかスティッコとかヨーヨーも喋れるし。まあ、同じことを考えてる人もいるだろうし、先にやられても全然構わない。俺らはペースを崩さず、俺らのスタイルでやってくだけ」(サミー・T)

 そして、話はミックスCDに…。

 「これ迄に″ジャミーズ″″デジタルB″″ボルケーノ″の各々のミックスをやってきた訳だけど、この辺りのレーベルは俺らにとって絶対に外せなかったし、言わば恩返しだね。自分たちが貰ったものを、俺らなりにまとめて返した、って感じ」(マスタ・サイモン)

 「今回の『ダンスホール・ルーラー・2001』は″現場ノリ″って言葉に尽きるよね。ダンスに来てくれた人にも、そうでない人にも俺らの現場はこうだって伝えたかった。だからダブみたいに一発取りのヴァイブスで。実際に一日で録ったしね」(サミー・T)

 
「日本のレゲエが注目されるようになって、それはそれで凄くいい事なんだけど、俺らにとっては両方平行してあるのが当り前。今、どうしてもジャマイカ物が日本のものに比べてウケにくいような風潮があるけど、それはやっぱりジレンマだよね」(マスタ・サイモン)

 「割れてるよね。向こうのダンスホールしか聴かない、ルーツしか聴かない、日本語のしか聴かない、とか。そういう人達をどんどん巻き込んでいきたいね。マイティ・クラウンという名前の下にそれが全部集まったというか。何でも聴かせますよ!という」(サミー・T)

 ミックス一つとっても一朝一夕ではない、つまり10年の重み(苦労、ではない)を感じさせてくれる。マイティ・クラウン、地に足付いた、しかも視点も確かな彼等の行く末は間違いないだろう。そう、今回の超強力2Wも両方味わわないと彼等のやろうとしてる事は全部理解出来ないのだ。