Interview by Kohji Yawata (24X7 Recrods)
 天晴!!『オリコン』堂々第1位!! ご存知「Lifetime Respect」である。この偉業達成直後ということで、インタヴュー当日も各誌の取材が殺到。夕暮れ時、さぞかしお疲れかと思いきや、全く。とにかくハイテンションで喋りまくる三木道三、これまた天晴!!!

●遂に1位(オリコンウィークリー7/1付)なんですけど、どうですか?
三木道三(以下M):まぁ、徐々に上がっていったんですけど、自分の身体とか変わる訳やないし、実感はそうなかったんですよ。ただ、周りが興奮していたから、それ見て楽しんでいたというか、まぁ周りよりは冷静に見ていたかな。

●自分から見て、何でこんなに受けたと?
M:まずは歌詞。よく「あれは女にはたまらないでしょう」と言われるけど、当初から予想していたのは、むしろ″女より男が燃える″という事で、それはその通りだった。それは、この曲が別に男女の恋愛感情だけを歌っている訳じゃないじゃなく、「恋愛感情であろうと何であろうと、みんな生きている上で、魂の大きな震えだったり、間違いない充実感だったりを欲している」という事も伝えていて、それに共感、共鳴して貰ったと思ってます。

●単なる恋愛感情だけではなく、人と人とがリスペクトし合う気持ち、まぁ、レゲエらしいマインドが含まれてますよね?
M:そうです、まさしくそうです。だからレゲエだから出来たとも思ってます。「リスペクト」という言葉もご存知の通り、ジャマイカの日常で頻繁に使われる言葉で、そのお陰で「リスペクト」という言葉の意味を深く考えるようになって、それにこれまで30年位考えてきた事をリンクさせて表現できた、と。歌詞に関しては満足です。

●「盛り上がっている日本のレゲエ・シーン」を象徴する曲となりましたが、現在のシーンの状況をどう見てます?
M:まず、そう言って頂けるのは光栄です。あとシーンについては、概ね良いんじゃないかと思ってます。僕はレゲエは決して一部のマニアだけのものではないと確信してました。ただ(僕等は)これまでメディア等でのレゲエの取り上げ方にしっくりこなくて、意識的にも無意識的にもそこから距離を置く形で、ここ10年位かけて自分達の居場所を作ってきましたよね。

 で、その中でクオリティーの部分ではどこに出しても恥ずかしくないものを自分達だけで作り上げられるようになった事が非常に良かったと。そして、今からは(レゲエを)広める体勢になっても、自分達の居場所が崩れる事はないんじゃないかと。


●さて、タイミングよくアルバムです。
M:絶妙(なタイミング)ですよね(笑)! 制作は体制作り、僕が哲学する時間を入れると3年位、結構時間掛かりましたね。

●制作はジャマイカで?
M:ホーム・グロウン、京都のストリングス奏者の方にも手助け頂きましたが、ほぼジャマイカで。スティーリー&クリーヴィ、スライ・ダンバー、ディーン・フレイザーがキーマンという感じで。選んだ理由? まぁ、物理的に僕等が行く時に居るという事もあって(笑)。プロデューサーとしては山本さん(大和レコーディングス)で、曲の原案をかなり絞り込んで、彼等にはミュージシャンとして参加して貰いました。

 向こう(ジャマイカ)には向こうのヴァイブスがあって、そこで聴くと良いんだけど、こっちに帰って聴くと「違うなぁ」というのもあって、多々差し替えたりもしました。ある程度の理想を持ってやっているので、″全部お任せ″には出来なかったですねぇ。


●どの曲も非常に具体的なメッセージ、誰もが共通の絵を浮かべる程ハッキリとした言葉で伝えてますね。
M:そうです。僕が聴きたいのはそういうもので、僕の聴きたいものを作ってます。それと(そこには)僕の感じたDJというものの楽しみの真髄を反映させてあります。

●では、アルバム全体のテーマは?
M:宗教・民族性・国民性・男女差・個人差、色々ある中で、みんなが同じ美意識・価値観を持つことは無理。でもなるべくみんなが丸く収まる精神は無いものかと多分子供の時からずっと考えていた。それで「人間としての″正解″=リスペクトの精神」という一つの仮説に辿り着いた。それはアルバムを作るのに反映されてます。

 そして「ライフタイム」。「生き物として全ての者が持っている普遍のテーマ=生涯、そして命」、それをハッキリ始めから終わりまで意識した時にこいつの輪郭はもっとハッキリしてくる、そんな事を考えながらアルバムを作りました。

 和んだ空気ではあったが、本人が「自分でもちゃんと考えてることを言葉で説明できるようになったのは最近のこと」と言うように、その発言一つ一つは非常にシャープ。それはアルバムを通じても感じるイメージで、言葉がグサリ、グサリと聴き手を揺さぶってくる力に溢れている。

「Lifetime...」は勿論、ムーミンとの「月光」、446との「太陽」、「斬る!ジャパニーズ」、「肌の色」、「明日の風」等の馴染んだ人気楽曲に、ブライアン&トニー・ゴールドとの強力な「Big Up」等の新曲も加えられ、その華やかな展開に踊らされるが、やはり熱くさせてくれるのはシング・ジェイとも呼べるメロディアスなフローに乗った三木道三のえぐってくるその言葉、DJ。その志と意気込み、持っているもの全てが見事に結実した大充実作となっている。

 「今後も地に足つけてやるだけ」と語る通り、秋からは「支持してくれた方にリスペクトを還す」ための全都道府県全てを周るツアーも計画中。「よく『変わらないで』とか言われるけど、変わらないし、『その前にお前が変わるな』ちゅう話ですよ」と笑い飛ばすその突き抜けた笑顔と、ジャケット同様のまっすぐな視線には大きな自信が溢れていた。