1999年12月号

A NEW DAY / LUCIANO
[VP / VPCD1617]

またまた登場! Lucianoのニュー・アルバム『A New Day』。プロデュースはサックス奏者として有名なDean Fraser。バックはFire House、Sly & Robbie等豪華な顔ぶれ。1曲目から鳥肌もので完全にヤラレます。収録曲の殆どが未発表(CDのボーナス・トラックも要チェック)で、聴きごたえ充分。セレクターの皆様はもちろん、そうでない皆様も必聴です。必ずあなたを癒してくれるはずです。[輸入盤](坪木良典)

LOVE SO NICE / JUNIOR KELLY
[VP / VPCD1607]

日本でも人気のラスタDJ、Jr. Kellyの通算3枚目となるニュー・アルバム。彼の人気のきっかけとなったタイトル曲を中心に、未発表曲も数多く収録した内容充実の作品です。アコースティック・ギター1本で歌う11曲目やBrian & Tony Goldとの7曲目等未発表もイイです。そして、あの映画『Rockers』の主人公名ドラマー“Horsemouse”もドラムたたいてます。要チェック!![輸入盤](坪木良典)

HIGHER GROUN / BUSHMAN
[GLEENSLEEVES / GRELCD262]

大きなヒットは無いものの個人的にはかなり大好きなラスタ・シンガー、ブッシュマンの4thアルバム。ジャミーズからたまにリリースされるシングルはかなりクオリティが高いと思うのだが、それ以外のレーベルからのリリースが殆ど無い故にルチアーノやモーガンより認知度が落ちる理由か(オレはブッシュマンの方が良いと思うのだが)? 確かにアクは強くないが泥臭いボーカルが強くルーツを感じさせる。[輸入盤](小池信一)

POWER OF LOVE/ TONY CURTIS
[ARTISTS ONLY! RECORDS / AOR-58]

シングルのリリースも好調なトニー・カーティス。クセが無く、アクも弱いので今一つ勝ち上がり切れてない様に思われがちだが、甘いラヴァーズ以外にも割とコンシャスな事を唄ったりと、器用かつ典型的なダンスホール・シンガー。本作は、このレーベルならではの透明感のある音が如何にもUKの王道ラヴァーズといった感じ。ファッション・レーベル等が好きだった人なら、本当要チェックの一枚です。[輸入盤](鎌田和美)

BEHOLD/ PETER CULTURE
[GADD59 / RRPG001]

昨年末に発売されたピーター・カルチャーのベスト・アルバム。84年にアリワから「Fussing & Fighting」でデビュー。当時、ロンドンでも最も若い16才のレゲシンガーの誕生だった。このアルバムはアリワ以降の86年〜90年頃のUK録音のシングル等を集めたもので、中でも聞き物はダブ・プレート・チューン。当時はリリースされなかったレアなチューンも収録。サウンドも昔なつかしの初期打ち込みスタイル。[輸入盤](長井政一)

NATURAL/ MIKE ANTONY
[GUSSIE P / GPCD010]

若手のソウルフルなコンシャス・レゲエ・シンガーである。ハードなルーツ・チューンからソウルフルなラヴァーズまで芸達者である。歌も上手いし、選曲もバランスがとれていて聞きやすい。フル・アルバムではなかなかの出来具合だ。特に「Praise His Name」「Love Me Some Her」は個人的にも気に入っている素晴らしいチューン。バックはマフィア&フラクシーが担当。リズム・サウンドもカッコイイ。[輸入盤](長井政一)

RIDDIM DRIVEN FEATURING TURN IT UP/ V.A.[VP / VPCD2147]

マイアミ発ラヴァーズ専門レーベルからのブラン・ニュー・アルバムは "Rougher Yet" のリディム1ウェイ。92年にもこのレーベルからカシーフ・リンドが「First Cut Is The Deepest」を同じリディムで唄ってヒットしたので憶えている方も多いでしょう。今回はそのカシーフはボブ・マーリーの「Duppy Conquer」を唄ってます。唄の乗りがいい分、1ウェイの面白さが伝わってくるお薦めの一枚。[輸入盤](鎌田和美)

RIDDIM DRIVEN FEATURING BED ROOM & THUNDER / V.A.[VP / VPCD2145]

上の作品と同シリーズのこちらは2ウェイ・アルバム。一つ目は2 Hardレーベルの "Thunder" リディム。ストリングとギターの絡みが今までに無いスタイル。ワンパターンに聞こえがちな最近のジョグリン・リディムに一撃というところか。もう一つはエロチックな名前の "Bed Room" リディム。名前通り艶めかしいネオンの様なギラギラした電子音がブンブン唸るヤバいオケ。ヤバさ加減では後者の勝ちか?[輸入盤](鎌田和美)

RIDDIM DRIVEN FEATURING EXTASY/ V.A.[VP / VPCD2146]

こちらも同じシリーズで、ショッキング・ヴァイブス制作によるニュー・リディム "Extasy" の1ウェイ。基本的には2000年に大ヒットしたB-Richレーベルのヒット・リディム "Orgasm" と似た様なパターンをベースにしながらも、激しいギターと妙にアタック音の強いドラムがハードコア。もちろんどれを聴いてもヤバいのだけど、個人的にはT.O.K.の「On The Radio」が何故か涙が出るほどハマった。[輸入盤](鎌田和美)

ROCKERS FROM CHANNEL ONE / V.A.
[TROJAN / CDTRL441]

「アイ・ラヴ・マリワナ」や「ラヴ・イズ・ザ・クエスチョン」他、70年代後半にチャンネル・ワンで録音されたリンヴァルの代表曲を中心として、そのDJとダブ・バージョンまでを一緒に収録したルーツ・コンピ。ダブは「アウトロー・ダブ」や「ネグレア・ラヴ・ダブ」に収録されていたものが多いものの、殆どがCD未発売のDJバージョンは聴きどころ多し。ビッグ・ジョー、ランキン・ドレッドはかなりヤバイ![輸入盤](小池信一)

NICE UP THE DANCE / V.A.
[HEARTBEAT / 11661-7665-2]

春といえばロック・ステディって事で(誰が決めたんだ!)、丁度イイ具合に気の利いたアルバムがリリースされました。このアルバムはスタジオ・ワンの往年の名曲を中心に2曲の未発表曲を収録したロック・ステディ・コンピ。ディスコ・ミックスという副題でもお解りのとおり、全ての曲が7分を超えるショーケース・スタイルになっていて、マニア心をくすぐる心憎いセレクション。良く晴れた休日に野外で聴いてほしい。[輸入盤](小池信一)

ガンスリンガース〜ライヴ・ベスト/東京スカパラダイスオーケストラ
[エイベックス / AVCD-11911]

近年のライヴ、そしてヨーロッパ・ツアーの模様を収めた番組や写真展を見た方なら、その圧倒的疾走感が気持ち良すぎたはずのスカパラのライヴ録音をコンパイルしたベスト盤。一発目から飛ばしまくりで汗が飛び散る姿がありありと想像できるほどリアル。スタジオ盤ももちろんいいが、彼等の場合、ライヴで演奏してこそ曲が活きると思っているので、待望のライヴ盤だ。新曲や未発表カヴァーも収録。(大場俊明)

ケダコ・イズ・ボーン/リトル・テンポ
[AVEX/CTCR-11086]

本誌インタビューでの予告通り、ファン納得の傑作アルバム『ケダコ・サウンズ』のダブ・アルバム登場。つまり主演はリトル・テンポだが、監督はエンジニアの内田直之が務めた作品(ジャケに注目)。今やすっかり時の人となった内田だが、やはりことレゲエを材料とすると触覚の動き方がより鋭くなる様で、音の抜き差し加減、エフェクトのタイミング感は抜群。音が丸裸にされた分、彼等の凶暴さが露になった。(大場俊明)

アコースティック・ソウル/インディア・アリー[ユニバーサル/UICT-1006]

モータウン社長、キダー・マッセンバーグが押す新人女性シンガー。“オーガニックR&B”の流れを汲むアーティストにありがちな、線の細さは一切見当たらず、逆に聴後の手応えには格別なものが。自称“ソウルフルなトレイシー・チャップマン”、大の“スティーヴィー・フリーク”といった立ち位置から放たれる声の魅力は、ブルージィでありながらふくよかな暖かみも併せ持つ。トレンドとの距離感も絶妙だ。(石澤伸行)

マーズ, ヴィーナス/コフィ・ブラウン
[BMG/BVCA-21082]

ネクストの諸作品にも顔を出していた男女デュオのデビュー・アルバム。ふたりが目標としているアシュフォード&シンプスン宜しく、描かれる愛の形は様々でも、既にフロアで絶大なる支持を集めているシングル曲「After Party」同様、総じて好感度の高い楽曲が並ぶ。上記曲を手掛けたオールスターに加え、ケイ・ジーらが提供するトラックはメロウ道まっしぐら。でも、そこに絡むふたりのヴォーカルは熱く濃い。(石澤伸行)

JP/ジェシ・パウエル
[ユニバーサル/UICC-101

2年ぶりの3作目。線の細さをものともせず熱く歌い上げるスタイルは、案外とニッチな強みを持っていたのかも。しかしそんなヒネた思いは、冒頭に続く素晴しい楽曲で吹き飛んだ。ナヨり声は完全に彼の持ち味となっていて、実妹トリナ&タマラのコーラスを伴う時、以前にはなかった迫力でもって迫ってくる。ムダな装飾を省いたプロダクションも奏功した。故ルイル・サイラスも満足するに違いない充実作だ。(石澤伸行)

ドント・ホールド・バック/パブリック・アナウンスメント[BMG/BVCP-21175]

メンバー変更を伴っての2作目。シカゴ風情たっぷりのさすらいチューンに若干のR・ケリーの影を見るも、基本的には男気に満ちた歌バカぶりを押し進めた独自路線が展開される。共演者においては、特に有名どころを起用することもなく、イマの流儀をふまえたプロダクションにも、ウワついたところは一切なし。アップでの気張りようは微笑ましい限りだが、後半に並ぶスロウでの雄大な喉使いは流石の一言。(石澤伸行)

オール・フォー・ユー/ジャネット・ジャクソン[東芝EMI/VJCP-68288]

化け物ヒット「Doesn't Really Matter」の新ヴァージョンを含んだニュー・アルバム。ジャム&ルイスとの密月が継続されることで、ポップな意匠はますますパワフルなものとなり、同時にシンガーとしてのジャネットも大きく成長した。ガラージュ、ロックといったイマドキR&Bの定型外サウンドも、完全に自分の世界に取り込んでしまう彼女の逞しいこと! 今後のリミックス展開にも期待が膨らんでしまう。(石澤伸行)

ダウン・トゥ・アース/V.A.
[エピック/ESCA-8296]

クリス・ロックが初主演する映画のサントラ。ルーツ+アメール、モニカ、ジニュワイン、3LW、ラフ・エンズ…これらのアーティストたちの参加が全て新曲による、という豪華さは、その内容の良さでもって二重の驚きとなることだろう。特にモニカに提供されたトラックの冴え渡るプロダクションと、ラフ・エンズの甘くて熱いヴォーカルの妙は、次作への募る思いが抑えられなくなってしまいそうな素晴しい出来!(石澤伸行)

レコード/グループ
[ウェザー / P-ヴァイン / PCD-5623]

いたってシンプルなバンド名と同様にシンプルなタイトル。Headzの佐々木敦が惚れ抜いた6人編成による“グループ”のファースト・アルバム。名は体を表すと言う通りサウンドはいたってシンプルで、表層的には“静”なる音。しかし、じっくり耳を傾ければ、体内を流れ続ける血液と同様、脈々とエモーショナルな“動”なるものが流れ続けているのがヒシヒシと感じるはずだ。本当に素晴らしいグループの登場だ。(大場俊明)

コンフィールド/オウテカ
[ビート・インク / BRC-34]

オウテカ待望のアルバムがリリース。もはやエレクトロニカ系アーティストにとっては登竜門的な作業となった自らのパッチを組み上げることに精通し、確かなセンスに裏打ちされたこのユニットは確実にIDMシーンをリードしてきた。そしてここに来て彼らはまたしても素晴らしい作品を作り上げた。脳を直撃するすさまじい音響工作だけでなく〈音楽〉としてのトータル・バランスが良いところがホントのポイント。(高橋晋一郎)

ダブ・アーチャノイド/ダブ・アーチャノイド・トリム
[ラヴィンサークル / ファイル / LOCD-038]

岩城ケンタロウのプロジェクト、D.A.T.のファースト・アルバム。ダブやジャズをベースにブラジルやテクノ、音響の要素をブレンドしつつ作られる新境地。ラー・バンド「Perfumed Garden」、ジュリア・フォーダム「Happy Ever After」といったカヴァーも全編に貫かれたD.A.T.フレイヴァーに染め上げられている。これから日本からもジャンル・レスなクリエイターが続々と登場するであろうことを予見させる一枚。(高橋晋一郎)

ジ・アームチェアー・トラヴェラー:サウスバウンド/V.A.
[スピードスターインターナショナル / VICL-60718]

〈旅〉をテーマに沢山のアーティストが楽曲を提供。国内からはカーム、バヤカ、チャリ・チャリ、トシユキ・ゴトーといった気鋭のクリエイターや、UAやリトル・クリチャーズの青柳拓次とポート・オブ・ノーツの畠山美由紀のユニットとなるパーマフロスト、海外からはジェフテ・ギオムらが顔を揃えるというかなり贅沢な企画。ジャンルを超えたアーティストの競演盤としても興味深く秀逸な出来。(高橋晋一郎)

シーン〜サウンド・オブ・フレイヴァーVol.2/V.A.
[フレイヴァー / FVCC-80134]

お馴染みのサイレント・ポエツにスピードメーター、躍進中の半野善弘にジャズトロニックの野崎良太、チャイル・ディスク主宰の竹村延和、ラウンジ・テクノのジャントル・ピープルから坂本龍一まで多彩な顔ぶれが〈ヒーリング〉をコンセプトにコンパイルされた一枚。クラブ・カルチャーに造形の深いのアーティストが多いだけに、アンビントの要素も嫌味なく含まれたまるで無重力のような世界を満喫できる。(高橋晋一郎)