今コーナー第2弾は、リー・ペリーの登場。その特異なキャラクターに注目されがちだが、実はブラック・アーク期を中心に数々の素晴らしい仕事を残した天才的な職人だ。レゲエ・ファンのみならず、全音楽ファン必読。 Text by Takeshi Fujikawa |
スクラッチ、リトル、アップセッター…数々の異名を持つリー・ペリーは、36年ジャマイカ生まれ。50年代末からコクソン・ドッドの下で働き始め、60年代初頭からはプロデュースを開始する一方、自らヴォーカリストとしても活動した。以来、アイランド契約前のウェイラーズの素晴らしい作品を手がけるなど、40年を超えて現在でも一線で活動し続けている。 |
[Fay Music Inc / FMLP304] Lee Scratch Perry [Island Jamaica / CRNCD 6-524 379-2] Lee Scratch Perry [Heartbeat / CD HB77] Prince Jazzbo [Black Wax / WAXLP1] The Congos [Blood & Fire / BAFLP009] |
76年からはペリーの作品がアイランドを通じてもリリースされた。アイランドからは、自身の『スーパー・エイプ』、マックス・ロメオ『ウォー・イン・ア・バビロン』、ジュニア・マーヴィン『ポリス&ティーヴス』、ジャー・ライオン『コロンビア・コリー』、ジョージ・フェイス『トゥ・ビー・ア・ラヴァー』等の作品が発表され、これらは今でもレゲエ史に残る名盤として光を失っていない。ペリーのベスト・ワークがアイランドからリリースされているといっても過言ではないほどの作品群だ。これらは全て必聴だが、何を置いても入手すべき作品としてこれらのアルバムからの曲も多く含むアイランドが97年にまとめたCD三枚組の(2)と、同時期のダブ集として、米ハートビートからの(3)を勧めておく。 この時期、ペリーの歌物『ロースト・フィッシュ、コリー・ウィード&コーン・ブレッド』や、ジャズ的な要素も導入された『スーパー・エイプ』の続編『リターン・オブ・スーパー・エイプ』といったアイランドからはリリースされなかったものの聴かなければならない作品がたくさんある。(4)(5)もこれらと同様にアイランドからはリリースされなかったものの重要な作品。(4)は、79年にクロック・タワーから『アイタル・コーナー』としてリリースされることになる作品だが、ここでは76年のオリジナル盤を挙げて置く。「ウォー・イン・ア・バビロン」と同リズム等でのプリンス・ジャズボのDJが光る好盤。ヘプトーンズ、ギャザラーズ等とコーラスものも多く手がけたペリーだが、(5)はアイランドから出なかったこと自体が不可解なルーツ・コーラスの傑作。ここでは、別ヴァージョンも多く収録されたブラッド&ファイアからの再発盤を挙げたい。浮き上がるハイハット、象の鳴き声のようなSE、宙を歩いているような感じにさえさせる感覚、唯一無二の音色…、ブラック・アークのベスト・ワークがここにある。 ブラック・アークはポピュラー音楽史上に残る数多くの傑作を残しながら、79年に破壊されてしまう。ペリー自身が手を下したという説もあるが、アイランドからの金銭援助があったにもかかわらずペリーの浪費により再建は叶わなかった。ブラック・アークは80年代を待たずして伝説となってしまったのだ。ブラック・アーク亡き後もペリーは、数多くの作品を放ち、いくつかの注目すべき作品も発表しているが、あの時代の才気漲るペリーを超える作品には未だにお目にかかれない。 |