『Don't Haffi Dread』で全レゲエ・ファンを唸らせたモーガン・ヘリテイジの、誰もが望んだニュー・アルバムが完成。更に強力なヴァイブスを放つ新作の魅力を探る。

 モーガン・ヘリテイジ待望のニュー・アルバム『More Teachings …』が素晴らしい。よりスケール感を増したヴォーカル/コーラスと抜群のアレンジ・センスに支えられたサウンド…それらは全て今のモーガン・ヘリテイジの存在感の大きさを代弁しているかのようだ。

 ダンスホール、ルーツの両方面から評価され、ライヴ・パフォーマンスの凄さも各地で実証済みの彼等5人がこれまでに築いてきたもの、それはレゲエ・ミュージックを通して″自分たちのウソ、偽りのない気持ち/ソウル″を伝える、ということだった。

 「ドレッド・ヘアにしなくてもラスタファリアンになれる(つまり一番大切なのはジャーに対する思い)」と「Don't Haffi Dread」でも歌っていた彼等だが、そうしたメッセージの一つ一つを我々が決して押し付けがましくなく受け止められるのも、それを″歌うことの必然″を持つ音楽の包容力を同時に感じる事が出来るからなのだろう。「レゲエ・アンバサダー(レゲエ大使)」を名乗ったグループといえばサード・ワールドがつとに有名だが、今その役割に一番相応しいのが他でもないこのモーガン・ヘリテイジなのだ。

 確かにサード・ワールドはまだまだ現役だし、インナー・サークルもそうだろう。しかし、一般層を視野に入れて″一番聴かれるべきグループ″はやはり彼等。何故ならば、彼等にはこうしてこちらの過度な期待を常に上回る作品を作り続けている訳だし、そのレベルはジャマイカ、又は彼等のホームであるNYだけに留まらず、他ジャンルに対して″レゲエ・ミュージックの可能性、底力″をアピール出来る程なのだから。そのポテンシャルの高さは、当然このアルバム『More Teaching…』にも目一杯詰まっているというワケだ。

 モーガン・ヘリテイジ…つまり″モーガン家の遺産″と名乗る彼等が、「I'll Do Anything For You」等のヒットで知られるレゲエ・シンガー=デンロイ・モーガンの子供たちからなる″兄弟グループ″である事はよくご存知だろう(98年の父のアルバム『Salvation』にも兄弟たちはこぞって参加)。

NYはブルックリンで育った(一時はマサチューセッツに居た事も)兄弟は全部で26人にもなり、モーガン・ヘリテイジを形成する5人(長男=グランプスはキーボードとVo、次男=ピーターはリードVo、長女=ユナはキーボードとVo、三男=ルークスはギター、四男=Mr.モージョはパーカッション…という構成。因みに今作のジャケ写では向かって左から、ルークス、ピーター、ユナ、グランプス、モジョの順となる)は、90年頃からバンドとして活動していた。

当初彼等は8人組のフル・バンドでR&Bやレゲエを演奏しており、日本でのみ陽の目を見た幻のファースト・アルバム『グローイング・アップ』('91、注:探して聴く程の価値のない凡作)及び、MCAからのインターナショナル・デビュー作『Miracle』(94) 迄はその面子で録音していた。が、よりルーツに根差した活動へとシフトし、ジャマイカを頻繁に往来するようになってからは、現在のような編成となり『プロテクト・アス・ジャー』(97)『Don't Haffi Dread』(99)『Live In Europe 2000』(00) 等の″傑作″を残している。本作も基本的には、これまでの足取りを踏まえた″道を踏み外さない″ものとなっている。

 ダイナミックかつ心地良いバンド・サウンドは「Ready Or Not」「Jah Seed」「More Teaching…」弟のラザ(LMS)をフィーチャーした「Kebra And The Feta」、「Seen The Sun」等の楽曲で(「Know Your Past」ではサード・ワールドのキャット・クーアもギターで登場)、又NYっ子らしいヒップホップ的フィルターを効かせたビートは「Same Old Song」で、逆にアコースティック・セッションは「Questions」で、ゴスペル・フィーリング漂う曲は「Children Of Tomorrow」でR&B調の女性Voとのデュエット曲は「Always On My Mind」で、ケテ・ドラムが鳴り響くラスタ讃歌は「H.I.M. Come」で、黄金のリメイク・トラック物では大ヒットした「Down By The River」、「What We Need Is Love」、「Helping Hand」で、と正に彼等の全てがあらゆる角度からストレートに、しかも嫌味なく出たものになっている(4人のリードVoも聴き比べて頂きたい)。

 つまりは捨て曲/水増し曲が全く無い傑作だということだ。レゲエをよく知らない友人に聴かせるのもアリ、でしょう。勿論。