現役ナンバー・ワン・シンガーは誰?と訊かれたら、私は迷わず「ベレス・ハモンド」と答える。ヒット曲が多いからだけではない。どんなタイプの曲にでも彼ほど深い歌心(ソウル)を込められるシンガーはほかにいないから。新譜『Music is Life』のリリースを控えた謙虚なるキングに、マンハッタンのオフィスで話を聞いた。

●ずっとトップでいられる秘訣は何でしょう?
ベレス・ハモンド(以下B):まず、やり続けること、そして自分がやっていることを信じること。

●ザッポウのシンガーとして世に出ましたが、加入した経緯は?
B:ソロとしてアマチュア・ショウに出ていたら、ザッポウのメンバーにスカウトされた。アイランド・レコーズからアルバムを数枚出した後、またソロになったんだよ。

●70年代、80年代、90年代と10年毎に振り返ってみて、それぞれどんな時期だったかコメントして下さい。
B:オーケー。70年代は人々が私をバラッディアとして認知し始めた時期だ。当時、ジャマイカでバラードを歌うシンガーは珍しかったからアメリカのR&Bシンガーだと勘違いした人も結構いたんだよ。80年代は趣向を変えて、自分のルーツ、レゲエに帰ることにした。80年代半ばにはヒット曲にも恵まれて、いい時代だったよね。90年代も引き続きヒットを出せたし、これからもこの調子で行きたいね。

●尊敬しているのシンガーは?
B:オーティス・レディングとサム・クック。この二人にはすごく影響を受けている。ジャマイカ人だったらアルトン・エリスだね。とても尊敬しているんだ。彼の歌にはソウルがあるから、彼のように歌えるようになりたいと思っているよ。

●90年代初期はドノヴァン・ジャーメインのペントハウス・レーベルから多くのヒットを放って、シーンをリードしてましたよね。
B:そうだね。彼とは今でも仕事しているけど、自分のレーベルとスタジオを持っているから、今は自分でコントロールする方が多いかな。ジャーメインやエクスターミネーターのファティスとは仲いいよ。

●その自宅兼スタジオで音楽作りをすべて行っているのですか?
B:その通り。機材が全部揃っているから、3年前に建てて以来、私の音楽の99%はそこで作っているよ。

●今回のアルバムはセルフ・プロデュースの割合が増えていますね。
B:それも自分でスタジオを持っているお陰だね。朝、11時頃から曲を作り始めて夜中3時頃までスタジオで過ごしている。環境が整っているから人を招いてやるのが楽なんだ。

●フロワーガンを招いた「I Love Jah」は自分から声をかけて?
B:彼はふらっと現れて″一緒にやろうぜ″って言ってきたんだ。その場で曲作りを始めたのがあの曲だ。彼の声はチャンピオンだ。パム・ホールも長年の友人で、素晴らしい声の持ち主なのに過小評価されているから、ぜひ一緒にやりたかったんだ。

●アール″チナ″スミスやディーン・フレーザー、スライ&ロビーなどとのセッションもそんな感じなのですか?
B:もちろん。毎日のようにミュージシャン達がスタジオに顔を出して、自然とセッションが始まる。シンガーとミュージシャンが揃ったら、音楽を作る以外することはないからね。

●ワイクリフ・ジョンとも知り合いですか?
B:そう。彼も長いこと知っていて、優れたミュージシャンだね。

●声を保つために何か特別なケアはしてますか?
B:いや、別にしてないなぁ。ジャマイカ人は小さい頃から教会に行くのが普通で、声が良かったら自然とクワイアで歌うようになる。私もそうやって歌い始めたんだ。親に言われた通りに3つの教会で掛け持ちしてたんだ。今では感謝してるよ。

●現在、あなたがNo.1・シンガーだと思っている人は多いと思います。自分ではどう思っていますか?
B:うーん、分からないよ(笑)。私の音楽に対するアプローチは独特で、競争心はないんだ。素直に光栄だと思うけど、それで自分が作る音楽が変わったりはしない。私の頭には次にどんな曲を作ろうかということしかない。色々なことを気にしない性質なんだ。例えば、ほかのアーティストがスラックネスかコンシャスかというのも気にしてないね。みんなと仲いいし。私にとっては音楽が最優先、自分がやっていることを楽しんでいるだけだよ。