1999年12月号

JUVENILE / JR.KELLY
[PENITENTIARY / JET STAR / PENJSLP01]

昨年の「Love So Nice」のヒットが記憶に新しいこの人、早くもニュー・アルバムが登場。Sizzla等に代表される様な歌とDJのかけ合せスタイルで、リリックスはコンシャスなネタ。濃口でありながらイナタさを感じさせないポップな音。タイトル曲はSizzlaも唄っていた曲。他にも名リディムを使用した曲やアコースティックな音使いの曲等、聴き所満載。早くも2001年ベスト・アルバム候補の登場です。[輸入盤](鎌田和美)

ZION GATE / LMS [XTERMINATOR / VP / VPCD1608]

レゲエ一家、モーガン・ファミリーの注目グループ、LMSのセカンド・アルバム。Xterminator音源の本作は、彼等のメッセージ性とコーラスのバランス感、更に70年代のレゲエを彷彿させる独特の重厚な楽曲がうまく絡み合った完成度の高いアルバムに仕上った。特にサウンドの要とも言えるSteven Stanleyのミキシングがとても気持ち良い。当然、ルーツ・ファンも要チェック!! 今後の活躍が楽しみだ。[輸入盤](坪木良典)

COBRA / COBRA [ARTISTS ONLY! / AOR-46]

Shabba、Ninjaが全盛期だった頃から現在まで第一線で活躍している凄いDJ、Cobra。アメリカでの展開も早かった為か、本作でもC.L.SmoothやQueen Pen等のHip Hop勢、そしてCalum RichardsonといったR&B勢アーティストも参加。ハードコアなダンスホールDJのスタイルにアメリカならではのショウ・ビズ界の華やかさがブレンドされた本作、今後のレゲエDJ界の未来を期待させる傑作アルバムだ。[輸入盤](鎌田和美)

BACK WITH A VENGEANCE / CUTTY RANKS
[ARTISTS ONLY! RECORDS / AOR-45]

完全復活のニュー・アルバム。昔のクールなスタイルと比べると、多少力みの入った語り口調に変わったが、その存在感は変わらない。プロデュースはJammysが担当。ヒット・リディムの "Tixx" 等のハードコアなダンスホール・チューンも当然入っているが、全体的にはヒップホップ色の方が濃い。ただそのバランス感は最高で、ラガ・ヒップホップの最先端の姿がここに集約されているといった感じ。[輸入盤](鎌田和美)

MIRACE / YOGIE [FIWI / FIWICD193]

93年、12歳でデビューして以来、様々なレーベルで中ヒットを飛ばしている(アンソニーBとの「That Was Then」が思い出深い)ヴォーカリスト、ヨギーのニュー・アルバム。クセのない甘い声なので、ひっかかりは少ないが、バルビーやファッタ等が全面的に協力した丁寧なサウンドに相まって、良質な作品に仕上がっている。ヴォーカリストが少ない今のレゲエ・シーンに於て、今後更に期待が高まる。[輸入盤](大場俊明)

ANOTHER FIVE MESS / THE ALL NITERS
[SOUND SYSTEM / 00CD019]

全くチェックしてなかったオーストラリアのスカ・シーンだが、レゲエ同様、スカも結構熱いようだ。このオールナイターズの結成は1980年。もう20年以上も地元を中心に活動する老舗2トーン系のバンドだ。実際、UB40やマッドネスの前座等にも出てるし、来日公演もしていたようだ。ジャケはちょっとダサいが、演奏にはキレも勢いもあるし、熟練した技が端々に垣間見れて安心して聴ける。[輸入盤](大場俊明)

ARISE / HUGH MUNDEL[MUMROCK / MMLP002]

1977年、オーガスタス・パブロの下からデビューして以来、通算6作目となる最後のアルバム。リリースは今から17年前。レゲエ・マニアには喜ばしい再発盤だ。『Africa Must Be Free By 1983』などの初期作と比べると随分とポップな仕上がりだが、ロッカーズ時代からヒュー・マンデルをチェックしている人には見逃せない一枚である。エンジニア等でデニス・ボーヴェルが参加している。[輸入盤](長井政一)

AT THE CONTROL / BIG JOE [JACK POT / BSICD65]

ディリンジャー、トリニティと共に大好きな70's DJの一人であるビッグ・ジョーの77年のアルバムが再発。彼のアルバムは『キープ・ロッキン&スインギン』と『アフリカン・プリンセス』の2枚だけだと思っていたが、それとダブらないこのアルバムはめっけもの。バニー・リー音源ならではのダブに地を這う様な彼のトゥースティング、文句なしのゲットー・ルーツ・サウンドがここに有る。[輸入盤](小池信一)

KING SOUL REGGAE / V.A. [ARTISTS ONLY / AOR-49]

UK発のレゲエ専門レーベル、スティングレーの音源を収録したオムニバス。スティングレーといえばルーツ&カルチャー色とラヴァーズ色の強いサウンドが特徴のレーベル。シングル・リリースはさほど多い訳ではないが、クオリティの高いトラック・メイキングが魅力。収録アーティストはルチアーノ、グレン・ワシントン、フレディ・マクレガーら唄の上手いアーティストばかりなので安心して聴ける。[輸入盤](小池信一)

BOUNCE / V.A. [VP / PDXL2008-1]

ダンスホール・ファンには説明不要のBaby Cham「Man & Man」の大流行リズム "Bounce" トラックのワンウェイ・アルバム。要注目は7"未発表のT.O.K.「When Again」。以前よりその存在は噂されていたので、本作で聴けるのは嬉しい。更にいつもハイ・テンションのSpragga Benzの未発表曲等、聴きどころは満載。現場のセレクターの皆様も要チェックの1枚。全編弾みまくりのワンウェイ![輸入盤](坪木良典)

CHANNEL1-MAXFIELD AVENUE BREAKDOWN / V.A.
[PRESSURE SOUNDS / PSCD031]

1970年代のジャマイカン・ミュージックを代表するチャンネル・ワンの74〜79年にかけてのヒット・チューンのダブ集。リディムは、"ドリフター"、"アンサー"、"バリスティック・アフェアー" 等の有名どころばかり。演奏はスライ&ロビー中心のレボリューショナリーズ。ダブ・エンジニアはアーネスト・フーキム、バーナバスが担当。ダブは当時のキング・タビーズ・スタジオ発の物に比べるとやや地味目。[輸入盤](長井政一)

STUDIO ONE ROCKER / V.A. [SOUL JAZZ / SJJR LP48]

『100% Dynamite!』シリーズやジャッキー・ミットゥのレア音源集のリリースなどでレゲエ・ファン以外にも評価の高いソウル・ジャズ・レコードの最新作。今回は老舗レーベル、スタジオ・ワンのロック・ステディ期の名曲をコンパイルしたゴキゲンなコンピレーション。定番曲が多数収録されているので、往年のレゲエ・ファンは勿論、これからロック・ステディを聴いてみたいなんて方にもオススメ![輸入盤](小池信一)

バランス/シュガー・ソウル [ワーナー/WPC6-101178]

昨年に全国展開された「うずツアー」の模様を収めたダブルCD。もともとステージでの本領発揮ぶりには定評のある彼女だが、こういったパッケージ化された世界の中にあっても、バッキングとの生感覚溢れるぶつかり合いや、ジブラ、ハセベ、ユウザロック★、ボーイ・ケンらとの熱い絡み合いを充分に堪能させてしまえるのは流石だ。「Dancehall Checker」を始め、一連のヒット曲が全く違う表情を見せている。(石澤伸行)

ジョイ・エンリケス/ジョイ・エンリケス
[BMG/BVCA-27009]

シングル「Tell Me How You Feel」が既にチャートで好アクションを見せている女性シンガー(激マブ)のデビュー・アルバム。ラフェイスからのデビューはどうやら本人が以前から狙っていた結果らしく、ベイビーフェイスやジャーキンズ兄弟らがサポートした内容の方も、アップにスロウに彼女の魅力をドンピシャに伝える楽曲が並ぶ。ラテン系代表としての自覚が感じられる収録曲も、よいアクセントに。(石澤伸行)

フロム・ロンドン・トゥ・インフィニティー/OPAZ
[ビクター/VICP-61268]

レイ・ヘイデン率いる変名プロジェクト、6年ぶりの新作。彼は音作りに徹しているものの、様々な女性シンガーを招いた本作は、歌オリエンテッドな構成だ。マーティン・ジャロウやシェリーら彼縁りの人選に加え、ロレッタ・ヘイウッドやハヴァナといったニュー・カマーも起用。ダブを始めとする米国産R&B以外の要素との極めてUK的なミックスチュア感覚が心地よい。キャロル・トンプソンの参加も目をひく。(石澤伸行)

ソウルド・アウト/V.A. [BMG / BVCP-21180]

R&B系のスロウものを集めたコンピ。アッシャー、SWV、TLC、トータル、ネクスト、そしてモニカといったお馴染みのシンガーたちのメロウ・チューンに加え、ケヴォン・エドモンズやア・ヒュー・グッド・メン、サム・ソルターといった渋めのラインナップで構成。無理なヒネりがない分、こうして語り継がれる理由がはっきり再認識できるだけでなく、新たな魅力にも気付かされること受け合いのお薦め盤だ。(石澤伸行)

ヴォーカリスト01/MCコンラッド [ソニー / AICT161]

LTJブケムのグッド・ルッキンの新シリーズ“Vocalist”、その第一弾はやはりこの人、MCコンラッドである。さすが“マスター・オブ・セレモニー”の異名を持つ彼だけあって、フロントに立ってもその巧みなマイク捌きは伊達じゃなかった。もともとヒップホップにのめり込んでいた彼だが、その独特なフロウはドラムン・ベースの現場で鍛え上げられた独特なもの。もの凄くエモーショナルな作品だ。(大場俊明)

HA!/タルヴィン・シン [ユニバーサル / UICI-1009]

『O.K.』のリリースから3年、タブラ奏者でもありDJ、プロデューサー、コンポーザーと幅広く活動するインド系イギリス人アーティスト、タルヴィン・シンのセカンドが登場。彼の操るタブラが放つ強烈かつエモーショナルなリズムが全編を貫き、インド音楽のトラディショナルな部分を継承しつつもドラムンベース以降のブレイク・ビーツと有機的に混じり合う様は、まさしくタルヴィンならではの芸当。(高橋晋一郎)

レッド・アイズ・トライブ/サイレント・ポエツ
[トイズファクトリー / TFCC-88240]

サイレント・ポエッツの新作はイッセイ・ミヤケのパリ〜東京コレクションで使用された楽曲を中心にしたコンセプト・アルバム。先にリリースされた『To Come…』でストリングス・アレンジメントから演奏、指揮までをも手掛けたエバートン・ネルソンと制作した新曲や、マイティ・バップらのリミックスでも知られる「Someday」のニュー・ヴァージョン等を収録。特にそのストリングの美しさが脱帽ものの一枚。(高橋晋一郎)

サイン/ノブカズ・タケムラ [徳間ジャパン / TKCD-72088]

トータスでお馴染みのシカゴのスリル・ジョッキーから届いた竹村延和のセカンド・アルバム。常に新しい創造性を追求する姿勢はコンピューター内でMAXやMSPといったソフトを用いて、そこでしか作り得ない音響世界と、生楽器を持ったジョン・マッケンタイア等のミュージシャンを起用して作りあげたアナログ・ベースの音楽が絶妙のバランスで配される形で現れた。改めて只ならぬ才能を感じさせる。(高橋晋一郎)

ヴァーサス/ダブ・スクワッド
[スピードスターインターナショナル / VICL-60663]

今から10年近く前に彼らの作品を聴く機会があったが、その時の印象はテクノ寄りのマッド・プロフェッサー的だった。しかし、時代とともに彼らはどんどん進化し、数年前からクラブ・ミュージック・シーンの現場で熱狂的な支持を集め始めている。本作はその長きに渡る活動の集大成となるアルバム。皮膚感覚で流れを作り出したかの様なスムーズな展開が気持ちいい。しかし、彼らはまだまだ進化していくだろう。(大場俊明)

ウエイト-レス/TICA [V2 / V2CH-6009]

クラッシュの「Rock The Casbah」をボサノヴァ調にカヴァーしてデビュー。その後デニス・ウィリアムスの「Free」のカヴァーを挟み、武田カオリと石井マサユキによるユニット、ティカのファースト・アルバムが完成。しっかりとしたサウンド・プロダクションとトレイシー・ソーンあたりを彷彿とされるヴォーカル。勿論安易なR&B路線などに走るものでなく、コピー通りの“ハイブリッドAOR”が正解。(高橋晋一郎)

イラディエイション/バヤカ [フラワー / シスコ / FLRC-001]

待ちに待ったバヤカのファースト・アルバムが届けられた。ジャンルをまるごとフュージョンさせて、バヤカの強烈なオリジナリティを注入して、素晴らしい音楽をして生成させた珠玉の一枚。日本のシーンにとっても間違いなく重要な一枚になるであろうし、多くのクリエイターにとっても色々な意味で変革を持たせるであろうフューチャー・クラシック。類似品には注意が必要。(高橋晋一郎)

カーム・プレゼンツ・コンセプション・フォー・ザ・ストリート・ノイズ/V.A.[KSR / KCCD-039]

今や圧倒的な支持を受ける日本人クリエイター、カームが21世紀に向けた楽曲をテーマにコンパイル。ジャズやブレイク・ビーツ、ハウスとクラブ・ミュージック全般にクロスオーヴァーした感性を持つ彼だけに、イアン・アブライエン、アズ・ワン、ロブ・スフィフト、モーリス・フルトン、そしてフィラ・ブラジリアらに至る迄ジャンルを超えた素晴らしいナンバーが目白押し。BGMとしても最高。(高橋晋一郎)