1999年12月号

DJ KENT / Borderless Communication (ARK)

毎月第一土曜に青山のClub Hachi-bで行われているパーティ "ARK"(DJは、DJ Kent、Akira、Tsutchie、Imai、Latinraskaz)プレゼンツのミックス・テープ第一弾。“幅広い選曲”が売りのパーティで、しかもKent(勿論Force Of Nature)のミックスだけに、ヒップホップからハウス、テクノ等、様々な音源が“筋を通しつつプレイされる”ダイゴ味が十分伝わる最高の内容となっている。音のクリアーさもイイ感じの60分。オススメ!

FUNKMASTER FLEX / 60Minutes Of Funk.
Volume IV. The Mix Tape
(Sony)

問答無用の“World Famous Hip Hop DJ”“Most Wanted DJ”ファンクマスター・フレックスの“オフィシャル”ミックス・アルバム第4弾!ドクター・ドレのイントロからDMXの話題の新曲、故ビギーのトラック、M.O.P.「Ante Up」のバスタ・ライムスらを加えたニュー・ヴァージョン、カポーン・アンド・ノリエガの未発表曲に、クルックリン・クランのトラックス・チューン、そしてリュダ・クリスやネリーといった流行りのサウス〜ミッド・ウェストのアーティストからR&Bまで、「これぞ王道」な内容。

MEMPHIS BLEEK / The Understanding (Def Jam)

“ロッカフェラ”よりジェイZに続き、若頭メンフィスの2ndが発射。内容はDJクルー名義で出た例のショウ・ケース『Back Stage…』にも収録された“My Mind Right”のリミックスの他、ジェイZの前々作収録曲の「ロスト・ヴァース」が入った話題曲「Is That Your Chick」に、カール・トーマスと初めて絡む「Every Day」等、これでもか!という位“シングルカット向き”な好曲の目白押し! やはり“ロッカ・フェラ”一族のサービス精神はハンパじゃない。若手トラック・メイカーの起用が目立つのも、らしい感じ。

MARLEY MARL / Hip Hop Dictionary(ハンドカッツ)

ピート・ロックの最新曲をリリースし注目を集めた“ハンド・カッツ”より、今度は何と御大マーリィ・マールが所有するロスト・トラック集がリリースされた。フィーチュアリング・アーティストは、LL・クール・J、ローズ・オブ・ジ・アンダーグラウンド(Muroの手によるニュー・リミックスは12インチでもリリース!)、そして何とコモン(勿論、初共演)。どれも何故陽の目を見なかったのか不思議な位のクオリティでサンプリング・トラック・メイカーの先駆者の意地が漂っている。アルバム・タイトルをリンクする内容の本人による書き下ろし、“ヒップホップ辞典”も必見!

NOBODY / Soul Mates(日本クラウン)

ベイエリア・シーンで暗躍する若手プロデューサー=ノーバディの初のリーダー作。その佇まいはサウンド・クリエイターというよりも極めてミュージシャン的と言っていいかも知れない。そんな彼が「最初からコマーシャル・リリースするつもりはなかった」と語るほど、ある意味プライベートな、「ただやりたい音楽だけを追及する」という姿勢は、その透明感溢れるサウンドに見える。エイシー・アローン(新作もいい!)、メデューサらMCが入ったトラックもあり、ウェストアンダー・ファンならずとも浸れる一枚に。日本盤はGZ-Jayのリミックスも。

V.A. / LYRICIST LOUNGE 2(Rawkus)

先行カットされた「Ms. Fat Booty 2」から今や遅しと待たれた“名門フリースタイル道場”リリシスト・ラウンジが贈るショウケース第二集がようやくリリースされた。故ビギーの熱いライヴから始まる今作では、モス・デフ、モンチとネイト・ドッグ、クウェリとデッド・プレズといった変化球的コンビネーションや、メイシー・グレイのギャング・スター・リミックス等、大物も多く、華もあるが、故ビッグLの曲やパンチ以下5人のサイファーで送る曲やQティップのライヴがシメに入ってるあたりも流石。歴史を感じます。

キエるマキュウ / トリックアート(第三ノ忍者)

皆さんご存知ブッダ・ブランドのCQとDJマキ・ザ・マジックからなるMCデュオが初アルバムをリリース!「ナンジャイ」「バットウカス」「斬り」「ナゼナラ」といった既にクラシック化した曲や、宇多丸をフィーチュアした「土曜日の実験室」、PHフロンとの「All Night Long」、ゴアテックスの「Fight Back」といった新曲群のイルさ加減も、もう相当なもの。淡々とキメまくるCQに変化球主体で“前代未聞”のフレーズを連発するマキ、そして一つ一つ何故か心の琴線にふれるトラック、と全てがオリジナルな金字塔。“あなたの知らない世界”がここに…。

RENEGADE SCHOLARS / Japanese Hip Hop Flava! 3(P-Vine)

ジャパニーズ・ヒップホップの登竜門的レーベルでもあるPヴァインより昨年春から今年秋までにリリースされた各アルバムより、ワン・アーティストにつき1曲をピックアップしたコンピレーション。フュージョン・コアから、刀頭、マイカデリック、ワード・スウィンガーズらの代表曲/裏名曲に、新たに制作したGZ-Jay作のインタールード、DJシャーク、アキラ、サンコンらのターンテーブル、ミックス・トラックを含め“通しで楽しめる一枚”になってると、思います。聴いて下さい(監修は筆者だったりする)。

S.P.C. / Skill Plus Creativity (Lamana)

DJセイジが地元札幌でFMのヒップホップ・プログラムを持ち(テープでしか聴いた事がないが素晴らしい構成/内容!)シーンに貢献しているのはつとに有名だが、彼が率いる総勢8名からなるクルーが遂に8曲入りのミニ・アルバムをドロップ。セイジが手掛けるトラックのヴァーサタイルぶりも驚きに価するが、「B-Boy Park」のMCバトル出場経験者=カズマニアックらのフロウも色トリドリでイイ意味でその現場の熱、楽しさは伝わってくる。多くの人の“北のイメージを変えるであろう”好盤。

V.A. / Only For The Mindstrong (Blue Herb Recordings)

ブルーハーブの諸作の他、イノヴェイティヴの極みを行ったインスト・コンピ「Drum, Program, Anaglam E.P.」等をこれまでにリリースしてきた“ブルーハーブ・レコーディングス”の集大成的ショウ・ケース盤。文字通りの“時代を変えた一曲”の「時代は変わるPt.1」に始まり、先に触れた「Drum〜」や同じくインスト作品の「Annui Dub」からのセレクションの数々はこの曲順で聴くとまた違った味わいがある。とにかくディープで、生命力という言葉の何たるかを音で語る必聴盤。ヘッドフォン・リスニングにも文句ナシにハマる。
FUSION CORE / 暴走機関車(エルドラド)

2000年中はエルドラド・ショウケース等のライヴ活動でフルに動いていた感のある暴走機関車ことIQテンとMr.ポウの2MC=フュージョン・コア、“エルドラド”からは初となるニュー・シット。トラックはDJケンチャンが担当し、マッドな音がうず巻く、正にフュージョン・コア向きの一曲に。2MCの突っ走り方もイキオイ最高でライヴでの反響が高いのも頷ける。ポジティヴ・メッセージが哀愁漂うトラックに突き刺さる、正にAA面向きの「Wake Up 2001」も彼ららしくていい。

KEN SPORT / Line Up & Target(Cisco)

ニップス「Island」のビート提供者で、数々のネタものミックス・テープ(今並んでるクラシック「Ultra 7」も必聴!)でも知られるNY在住のケン・スポーツがJトレッズをフィーチュアした「That's What I'm Made Of」に続いて放つ、現地MCフィーチュア物の最新作。ダディ・スウィフト、シュガー・フリーのシブいやりとりが“サンプリングの申し子/息子”ケン・スポーツの正にハードボイルドなトラックに乗り、更にDJマーロンBのツボを刺激しまくるコスリが…。このクオリティの高さは本当ハンパじゃない“濃い音”を求める向きならば満足する事請け合い。