1999年12月号

...HARDER THAN BEFORE / MIKEY SPICE
[VP / VPCD1604]

ジャマイカン・ラヴァーズのドンが帰ってきた! 出所後、初のフル・アルバム。プロデュースはJoe FraiserのJason & Lloydで、ドラムやキーボードは自身でも弾いちゃってる意欲作。正統派ソウル・ヴォーカルで大人の男の色気を漂わせる王道ラヴァーズ・チューンから、ルーツのり、ガンジャ・チューン等々、幅の広い音楽性で、単なるラヴァーズ・アルバムとは括れない1枚。既に大物という言葉が似合う程の風格を感じます。[輸入盤](鎌田和美)

BEST OF BEENIE MAN~COLLECTOR'S EDITION / BEENIE MAN[VP / VPCD1605]

メジャー盤も好評な中、絶妙なタイミングでのベスト盤。しかも“インターナショナル”と“ローカル”という2つのコンセプトに分けた二枚組だが、聞いた事のない曲なんて1曲もないって位、完璧な内容。大袈裟ではなく、はっきり言ってここ数年のジャマイカ音楽史がここにある。改めてこの音楽におけるBeenie Manの存在の大きさを感じさせられるグレートなベスト盤!! アナログとCDでは収録曲にかなりの差あり。(前田和彦)

THE DEFINITIVE COLLECTION / GARNET SILK
[ATLANTIC / 83422-2]

94年12月に謎めいた死を遂げたガーネット・シルク。その死の直前ぐらいにメジャーからアルバム・リリースの噂があったのを憶えているだろうか。このアルバムこそが、その幻のデビュー盤なのだ。死後にリリースされたシングルや既発曲の録り直し等もあるが、ほとんどが未発表曲。このアルバムが当時発売されていたら、世界の音楽シーンにおけるレゲエの位置づけが現在とは確実に変っていただろう。(小池信一)

URBAN DUB / URBAN DUB[DUB HEAD / DBHD-020]

UKはダブ・ヘッド・レーベルからのニュー・アルバム。レーベル通算20枚目となる本作は、UKの5人組のダブ・ユニット、アーバン・ダブのファースト・アルバム。UK独特のルーツ&ダブの影響を十二分に受けたニュー・エイジ・ダブ・ユニットである。ダブ要素も然ることながら、軽快なビートものの曲が多く、レゲエ・ファン以外にもアンビエント・ダブ好きのリスナーにもいける作品だ。[輸入盤](長井政一)

DUB ITALIZER / VIBRONICS[UNIVERSAL EGG / WWCD-032]

UKダブの新星、Vibronicsが一年ぶりに放つニュー・アルバム。前作同様、相変わらずの全編ダブ三昧テイストのチューンが占める。メインはあくまでもヴォーカル・チューンだが、最初からダブ処理が施されているので、アルバム全体にダビーな質感が流れている。曲調も100%マイナー調の暗くて重圧感のあるものばかり。現代版のダブを説明するなら、まず彼等の音を聴かせればいい。[輸入盤](長井政一)

CONSCIOUSNESS / MICHAEL PROPHET
[YABBY U / 320402]

79年『Serious Reasoning』のタイトルでアイランドからリリースされたヤビー・ユー・プロデュースの名盤が待望の初CD化(アナログ盤は半年位前にリイシューされた)。ヤビー・ユー制作による重低音が強調されたヘヴィーなトラックに、際立った特徴は無いが前向きな姿勢を感じさせるマイケル・プロフェットのヴォーカルが絶妙。赤茶けたトタン屋根や埃っぽい空気を連想させるゲットー・ルーツの名品。[輸入盤](小池信一)

THE SOUND OF FUTURE - ADONAI / V.A.
[VP / VP2134]

レゲエ・ミュージックと切っても切れない関係にあるサウンド・システム。そのサウンド・システムにスポットを当てVPが新たに始めたシリーズがこの "Selector's Choice"。栄えある第一弾はニューヨーク出身のアドナイが担当。 "Bad Weather"、"Orgasm"、"Joker"等、5リディムを使用したノン・ストップ・ミックスCD(ダブ・プレート有)。ちなみに同レーベルのベスト盤のオマケCDのミックスも彼等が担当。[輸入盤](前田和彦)

DOWN BY THE RIVER / V.A.[VP / VPCD2137]

モーガン・ヘリティジの大ヒット曲「Down By The River」でお馴染のあのリズム・トラック(オリジナルは、名ロック・ステディ・コーラス・グループ、ケイブルスの大名曲「What Kind Of World」)の1ウェイ・アルバム。収録曲は全て歌モノで、ベテラン・アーティストから女性ヴォーカル、そしてシングル未発表曲も収録されているので、飽きる事なく楽しめる内容になっています。歌モノファンは要チェック。[輸入盤](坪木良典)

GUNZ IN DA GHETTO / V.A.[VP / VPCD2131]

レゲエを感じさせる生音のリズム "Gunz In The Ghetto" の1ウェイ・アルバム(内2曲は違います)。バック演奏はM.HeritageとD. Fraser等。聞き物はタイトル曲で、M.HeritageにBounty Killerが絡むという夢の様な一曲。他の収録曲も、親父は勿論、LMS、人気のJr.Kellyの他、馴染みのないラスタ系アーティスト等、幅広い人選になっています。ジャケットのデザインも地味ながらイイ味出してます。[輸入盤](坪木良典)

リターン・オブ・ザ・スーパー・エイプ/リー・ペリー
[トゥ・チルドレン・ワールド / BLCY-1010]

英国アイランドからの歴史的名盤『Super Ape』リリースから約2年後の1978年、その続編としてジャマイカ国内向けにリリースされた『Return Of Super Ape』が、何と国内盤で登場。しかも紙ジャケ、LPサイズのポスター付という嬉しい再発だ。アイランド盤の全編を包んだ怪しさ、摩訶不思議さをより一層強烈にしたこの音世界は、リー・ペリーの長い音楽活動に於て頂点を極めた作品と言えるだろう。(大場俊明)

ダンスホール・ロッカーズ・ミックス・バイ・DJ KEN-BO
[KSR / KCCD-042]

ヒップホップDJとしてはトップ・ランカーに位置するDJ Ken-Boによるダンスホール・レゲエのノンストップ・ミックスCD。ヒップホップ・パーティでもいち早くダンスホールをかけまくっていた彼だけに、VP音源限定という枠の中でも選曲の良さと流れの良さは保証付き(定番に加え、最新ヒット曲多し)。レゲエのセレクターとは微妙に違う繋ぎもパーティ・ロッカーならでは。全32曲、約60分収録。(大場俊明)

ナイス&イージー・ロック・ステディ/V.A.
[エイベックス / AVCD11873]

スカパラのベーシスト、川上つよし氏監修によるスカ〜レゲエのオムニバスが一挙に3タイトルもリリース! このアルバムはスカがレゲエに移行するまでの中間期にあたるロック・ステディに焦点をあてたもの。「クイーン・マジェスティ」「オン・ザ・ビーチ」等の代表的なナンバーはもちろん、CDのみならずアナログでもなかなか聴く事の出来ないレア・ナンバーをタップリ収録した通好みなセレクションが魅力。(小池信一)

ディドゥント・シー・ミー・カミング/キース・スウェット[イーストウェスト / AMCY-7164]

7枚目の新作。今静かに燃えるシカゴ勢の筆頭、スティーヴ・ハフの仕事ぶりが光るものの、それでもやはりキースのエロ声が醸し出す“主役感”には、平伏すしかなさそうだ。デイヴ・ホリスターやメン・オブ・ヴィジョンらとの歌合戦やT・ボズ、バスタ、ラー・ディガらとのフレッシュな掛け合いの中にあってなお、その落とし所には、レッキとした“キースの世界”が。勝ち続けてきた男の余裕の作品って感じ。(石澤伸行)

エクスポーズド/シャンテ・ムーア
[ユニバーサル / UICC-1008]

1年振りの4作目。大人の香りを歌に込めることで佳作を連発してきたシャンテだが、ここでの充実度はちょっと尋常じゃない! デュプリとヌーンタイム勢がタッグを組んで提供する華やかなアップ、ジャム&ルイス、レイニー・スチュアートら旧知の仲による可憐なスロウは、そのどれもが彼女の魅力を最大限に引き出して余りある出来だ。男にイイ夢を見させてくれるフェロモンも、いよいよ測定不可能の域に...。(石澤伸行)

シカゴ’85...ザ・ムービー/デイヴ・ホリスター
[ユニバーサル / UICW-1003]

ブラックストリート脱退後のソロ2作目。世紀末のR&Bシーンに吹いたシカゴの風は、確かな歌唱力を持つ彼のような存在にとって、この上ないフォローの風だった。熱くたぎるゴスペルライクなヴォーカルは、スティーヴ・ハフやマイク・シティらの哀愁トラックに乗り、好き勝手に暴れまわる。特にK-Ciとのデュエットでの喉ワザの応酬は、ちょっと目を背けたくなるような迫力だ。これぞ“歌が示すストリート感覚”!(石澤伸行)

ラフェイス・プラチナム・コレクション/V.A.
[BMG / BVCA-21080]

そのスタイリッシュなビートとメロウな旋律で、90年代R&Bを大いに彩ったラフェイス・レーベル。これは同レーベルから生み出された幾多のヒット曲の中でも比較的最近のものを集めたコンピだ。TLC、ホイットニー、トニ・ブラクストン、アッシャー、ピンク、ドネル・ジョーンズにアウトキャスト…。そのどれもが時代の音の雛形であって、なおも進化し続けている。収録曲そのままが近代R&Bの歴史だ。(石澤伸行)

ソウル・ソウス〜ジャクソン5・リミックス/V.A.
[ユニバーサル / UPCH-1034]

誰でも知っているモータウンのジャクソン5〜マイケル・ジャクソンの超歴史的名曲の数々を、小西康陽、大沢伸一、小林怪、U.F.O.、Small Circle Of Friends、Monday満ちる、そしてKenny Gonzales(M.A.W)等がそれぞれの個性をおもいっきりぶちまけて料理したリミックス盤。企画自体が暴挙とも言えなくもないが、どの曲も原曲が凄すぎるため、各リミキサーが遊びまくっても全く壊れないとこも凄い。(大場俊明)

サイレンス/金原千恵子
[ロンサムエコー / カッティングエッジ / CTCR-14169]

正真正銘の玄人プロデューサー、井出靖の新レーベル、Lonesome Echoの船出は、女性ヴァイオリニストの金原千恵子で華麗にスタート。ヴァイオリンに関しては門外漢の私だが、DJスピナやロニー・スミス等のゲスト陣の鉄壁さやジョン・レノンの「Love」のカヴァー等の必殺技を抜きにしても、ここで展開される音世界はBGMに成り果てる事なく、確実に誰の心にもひっかき傷をつけてくれる名演ばかりと断言できる。(大場俊明)

3ヘッド/3ヘッド[ビートレコード / BRC-33]

これがデビュー・アルバムとなるイギリスはブリクストンより現れた5人組3ヘッド。ブレイクビーツとダブを下敷きにしたサウンドに官能的なストリングスが絡み合い、女性ヴォーカルとラガ・スタイルのラップが乗るという間違いないバンド方程式。さらにはエイドリアン・シャーウッドがほぼ全てのミキシングを担当したとなれば言うこと無いだろう。ポスト・マッシヴ・アタック、もしくはポーティスヘッドの最右翼か。(高橋晋一郎)

モダージ/モダージ[トイズファクトリー / TFCK-87820]

2ステップと共に2000年のウエスト・ロンドンを席巻したニュー・グルーヴ、ブロークン・ビーツの中心的なパイオニアにあたるモダージことドミニク・ジェイコブソンのファースト・フル・アルバムが遂に完成した。アシッド・ジャズ以降のヒップホップやハウスをはじめとするクラブ・ミュージックとジャズやラテン、ファンクやソウルとの理想的なフュージョン・スタイル。もはや定番となりつつあるロウズ・オブ・モーションから。(高橋晋一郎)

スタンダーズ/トータス[徳間ジャパン / TKCB-72059]

前作『TNT』の興奮が未だ消えないまま、トータスの4枚目のアルバムが発表された。前回のハードディスク・レコーディングからアナログ・テープへと録音手法は変わったものの、全てを包括し、かつ革新的に新しい音楽性はやはり変わらず。音の一つ一つが意味を持ち、その存在を饒舌にアピールしてくる。ポスト・ロックなどという括りでは収まりきらないスケールの広いキャパシティに脱帽です。凄すぎ。(高橋晋一郎)

コーダイアリー/リトル・クリーチャーズ
[フェイス / BFCA-82502]

約3年ぶりとなるリトル・クリーチャーズの新作は、今回の4曲入りミニ・アルバムと同名となるレーベルから。驚いたことにあのゴールディーがロニ・サイズよりも早くドラムンベースのネクスト・ステージへ導いたことで有名なクラシック「Inner City Life」のアコースティックなカヴァーを収録。メンバーそれぞれが作曲を手掛けたという楽曲も、円熟味を増しながらもフレッシュで躍動感たっぷりの素晴らしい仕上がりで納得。(高橋晋一郎)

ナチュラル・ブレイズ/ブレイズ
[ライフライン / LLCD-1001]

クラシックとなった『10 Years Later』から10年、ヨーロッパを中心に世界的なヒットを記録した『Basic Blaze』から3年、ニューヨークから発信されるブレイズの3枚目となるアルバムが届けられた。リズムを中心に複雑に進化するクラブ・ミュージックのマナーを踏まえつつもニュー・ソウル以降のソウル・アティテュードもあますところなく盛り込まれた完璧なガラージュ・サウンドは、今回も圧倒的な存在感を耳に残す傑作。(高橋晋一郎)

ザ・ゴッドファーザー・オブ・ハウス・ミュージック
〜トラックス・クラシックス/フランキー・ナックルズ
[日本クラウン / CRCL-2005]

「Whistle Song」がハウス・ファンのみならずクラブ・アンセムとして今日も人気が絶えないまさしくゴッド・ファーザー・オブ・ハウスなフランキー・ナックルッスズがハウス・ミュージックが台頭しつつあった80年代に名門トラックス・レーベルでコンポーズ、プロデュース、そしてミックスとして関わった楽曲をコンパイルしたベスト盤。今聴けばチープなリズム・ボックスの音色やディスコ・ライクなシンセも当時ならでは。(高橋晋一郎)