2000年1月号
 


John Holt

Greetings friends,

今月はまず大々的な宣伝を打ち、10月を通してロンドンの Roundhouseにて開催されていたReggae Xplosionのレポートから。99年の終り頃より、Sheffieldを皮切りにミニ・UKツアーをスタートしたこの移動写真展示会は、今後ヨーロッパを廻って最終的にはその場所をジャマイカのMontego Bayへと落ち着かせるとの事。

 さて感想はと言うと、はっきり言ってガッカリ。写真という媒体を通して、忠実にレゲエの歴史のドキュメンタリーが表現されているのものばかりと思いきや、実際には支離滅裂で非常にアンバランスなプレゼンテーションであった。写真家のAdrian Bootsの宣伝としてはいいんじゃない、といった感じ。しかし Bob Marleyの写真を世に広めた事で知名度は抜群の彼に今更そんなもの必要無いでしょう? 4つのレコード・レーベル( Island、On-U Sound、 Blood & Fire、Greensleeves)が出したミュージック・セレクションの為のブースも、この展示会の内容から見ると何の関連性も無く、全く意味の無いものとなってしまった。

 どうせこんな意見を言ったところでメインの主催者はBoots氏の古くからの友人で、否定されるに決まっているが、これは Boots氏の為の展示会であった事は誰の目から見ても明らかである。もっと色々なフォトグラファーの作品が展示されると聞かされていたのに、彼等曰く「皆に連絡がつかなかった」との事。ハイハイ、そーですかってカンジ? 

 レゲエの発展に貢献した大勢のプロデューサー達やアーティスト達(とくに初期の方)の写真は全くなし。有名アルバムのジャケットをキングサイズに複写した作品は確かに見た目はいいが、それだけである。単純に言って写真が少な過ぎたし、しかも多くが既に見た事のある作品ばかり。宣伝ばかりが先走りせず、ハッタリをかまさず本当の意向を伝えていたら、この展示会も少しは意味のあるものになっていたのではないか? この種のものは、常にこのような結果になってしまうのが残念である。とにかく、最終目的地のジャマイカに辿り着くまでに、完全なる進歩が見られるよう、期待したい。

BrixtonのRecreation Centreにて行われたThe Ethiopian (UKでは31年ぶりに行われた)のギグは、Leonard "Ethiopian" Dillonの何十年経っても相変わらず豊かなテナー・ヴォイスで、昔懐かしさとルーツが満載の何とも素晴らしい夜だった。「Engine 54」、「The Whip」、「Selah」、「Gonna Take Over Now」、「Cool Out Amigo」、「Owner fe De Yard」、「Train To Skaville」等々、言わずと知れたチューンが次から次へと演奏され、会場は熱狂に沸いた。開演時間は遅れたが、それでも早い時間はVincent Nappに始まり、いつ観ても抜かりの無いLittle Roy、続けてMichael Prophet等が登場、会場を盛り上げた。そして予定されていなかったWillie Williamsの嬉しい飛び入り参加もあり、大勢の観客を魅了した。本当、行って良かった。

また、ゲストにFreddie McGregorを招き、Royal Philharmonic Orchestraと共演したJohn Holtのギグもとても良くオーガナイズされていて、右記同様、「行って良かった」、といえる夜となった。ほんの数回のリハーサルだけで、ホーン・セクション付きのフルバンドとオーケストラを一つのステージに一体どうまとめるのか、おそらく音楽的にも、論理的にも悪夢であったに違い無い。

 しかしそんな不安は開演と共に吹き飛ばされた。タキシードできめたFreddieとWe The People Bandがエネルギッシュで実に的を得たオープニングをこなし、後半の幕が開くとクルー全員が粋なオーケストラに負けじと言わんばかりに、まるでその瞬間に命を賭けているかのような凄まじいパフォーマンスを披露。一段とそのヴェテランさに磨きがかかったJohnは全ての曲で観客を魅了した。実際、この素晴らしくプロフェッショナルなステージから一瞬たりとも目を離す事は不可能であった。冗談抜きにこれは国際的なレベルのショウであったと言える。幾ら予算がかかってるのか想像も出来ない豪華絢爛な照明がステージ上を照らす中、彼等はひとりひとりが自分の持ち味を生かし、一生忘れないであろう思い出深い夜をつくりあげた。

 3晩公演したこのショウを目撃したNineyやBunny Lee、TV有名人やスターの数々を含むUKのレゲエ産業関係者、そしてもちろん一般の観客、その半分以上は私と同じ意見であろう。世界に向けて再度公演するに値するくらいの大成功を納めたといって良い。プロモーターのLinda Johnson-Smith、Clarrie Mendy、Tony Owens、指揮者のClement Ismal、Johnの曲に新たなるオーケストラ用のアレンジを施したGladstone Reidに拍手と感謝!

21世紀まであと少しの現在、Alton Ellisの姉、 Hortense Ellis、Morwellsのリーダーでもあった Blacka Morwell、元Paragonの Tyrone "Don" Evansと、1週間のうちに3人ものレゲエ界のヴェテラン達がこの世を去ったという悲報を耳にする事となってしまった。残された遺族や友人の悲しみは計り知れないであろう。冥福を御祈り致します。


Prince Malachi

この間、私の写真がエクスターミネーターから出るPrince Malachiの新しいアルバムに載るかも、という事を書いたのを覚えているであろうか? 天気の悪い日々が何週間も続いた後、珍しく晴れた日にやっとの事で彼の住むLutonにてこのルーツマンと接触、そして撮影完了。Malachiは現在、自宅の子供部屋の2段ベッドの横に無理矢理作成したホーム・スタジオで新作に取りかかっている最中。ちょっとその作品を聞かせてもらったが、ビックリするくらい出来のいいモノであった。設備が万全であっても彼の作品とは比べ物にならない程お粗末なものしか作成出来ないスタジオやプロデューサーが沢山存在する今日この頃、今後も彼には是非とも頑張ってもらいたい。

  それではまた次号。Take care…            [訳/有賀由紀子]