Skatalites久々のアルバムがこの2000年に出た。全15曲、力の入ったしっかりとした仕上りの作品が並ぶ。アートワークを除けば、ファンには十分満足出来る内容だろう。
メンバーはCDのクレジットを参照して頂きたいが、新メンバーも加入しての "New" Skatalitesらしいフレッシュな面々が多い(初期のメンバーから見ればね。殆どがここ数年のライヴを共にしている人達)。
ドラムのLloyd Knibb、ベースのLloyd Brevett、この2人によるリズムは変わらぬSkatalites印のオリジナル・スタイル。やっぱりこれが肝であります。カッコイイです。アルト&フルートのLester
Sterling、テナーはCedric (IM) Brooks。時に荒々しく時にウエスト・コースト・ジャズを思い出させる様なスマートなプレイを聴かせる。今更、Roland
Alphonso、Tommy McCook、Don Drumond等、故人達の不在を嘆くのは野暮ってもの。心をグッと揺さぶるあのフィーリングは変わりないので御心配なく。又、シンガーにはShamese
Rudolphを起用。ファンには堪らないはず。出番は少ないながらも昔と変わらぬ甘酸っぱいヴォーカルは光っている。
という訳で、主要メンバーは各々に奮闘しているし、楽曲の粒も揃っているのでファン以外のスカ・ファンにもお薦めだ。ピリピリとした緊迫感を求める向きには、一寸ばかりゆる過ぎるのだが…。その分、老練とも言うべき余裕の演奏が新しいカラーになっている。CDのみ発売だが、多くの人に聞いて欲しいアルバムには変わりない。あ、Ken
Bootheも1曲、ゲストで歌ってます。
さて、こんな嬉しいアルバムが出たのと期を同じくして、Skatalitesのトリビュート・アルバムが出るっていうじゃないですか。しかも、オール日本人アーティストで。それが『Ska
Stock』だ。各々のアイディアを生かした名曲のカヴァーとオリジナルで構成された聴き応え充分の全13曲。前述のSkatalitesのアルバムからも一番美味しい所が2曲収録されている。この後の対談を読むとより一層興味を引かれる事受け合いの内容なので、じっくり楽しんで下さい。
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●スカタライツの思い出って?
川上つよし(以下K):最初に来たのって何年だっけ?
渡辺浩司(以下W):89年。汐留のPIT。
K:あの時はドキドキしたなぁ。ジャッキー・ミットゥがいたんだ。あの時ってドラムとベースが違いましたよね。
W:ベースがソウル・ブラザーズだよ。ブライアン・アトキンソン。ドラムがウィンストン・グレナン。この時はジャッキー・ミットゥが仕切ってたんだよね。
●ウィンストン・グレナンがついこの間、亡くなったみたいですね。
W&K:エー…。
W:初来日した時ってずっとついてたのね。歓迎会からいっしょにいて。リハのスタジオにも2日間行ってさ。実はその時の方がライヴよりかっこ良かった(笑)。
K:ローランド・アルフォンソは来てたよね。
W:うん。でもトミー・マクックは来てない。あとギターはリン・テイトで、トランペットがデヴィッド・マッデン。グラディもいたんだよね。
K:あの時の事ってよく覚えてて、ドラム・セットが凄いってのと、ジャッキー・ミットゥが靴を投げたの(笑)。
W:彼らが衛星放送のインタビュー受けた時、「誰がスカを作ったんですか?」って質問で、メンバー同士でケンカになっちゃって(笑)。
K:そんな質問しちゃだめじゃん。
W:ローランド・アルフォンソは「神様が作った」って言ってるし(笑)。「コクソン・ドッドだ」って言う人もいるし(笑)。プリンス・バスターは怒って飛び出しちゃうし(笑)。それを何とかまとめたのがロード・タナモで(笑)。
K:2回目が日比谷野外音楽堂でやった「スカ・エクスプロージョン」の2回目だよね。
W:その時からトミー・マクックが仕切ってツアーをやるようになったんだよね。
K:その後、野音で何度かやって、観る度にテンポが速くなってくんだよね(笑)。だんだん昔を思い出して来たのかなぁ(笑)。
W:でも、ここ何年かでスカタライツって新譜出してるけど、60年代の時とは違うものって考えちゃうなぁ。スカタライツはスカタライツなんだけど…。
●この『スカ・ストック』についてお聞きしたいんですけど、副題で「トリビュート・トゥ・スカタライツ」となってますね。今、これを出すという意味は?
K:今、これだけというか、ちょっとだけスカが盛り上ってるじゃないですか。まぁ周期的なんですけど(笑)。今は特に広い意味でね。
W:うーん、スカっていうよりも日本のスカ・バンドが盛り上ってるって感じかなぁ。
K:それでスカタライツのメンバーがどんどん亡くなっていってしまうんで、トリビュート盤を作ろうって。まだバンドはあるんだけど、トリビュートって「捧げる」って意味だから、彼らに敬意を表してですね。今のスカ・コアの人達にもオリジナルでこういう人がいたんだって知って貰いたいなぁって。バリバリのスカ・バンドばっかりじゃなくて、色んな人達に声を掛けたから、凄い面白い内容になったと思うんだけど。
●バンド選びの基準は?
K:スカタライツにリスペクトの気持ちを持っている人だったら誰でもいいって感じなんだけど。畑違いの人でも凄い好きって人が多かったんだよね。シャカゾンビのツッチーもやって貰ったんだけど、シャカゾンビのオオスミ君って昔凄いスキンズでね。意外な所でスカ好きが多いんだよ。今回は無理だったけど、U.F.O.もやりたいって言ってくれてね。
W:矢部君ってスカかじってたもんね。ジャズ畑の人も聞いてるよね。やっぱりスカ・ブームの周期ってあるから、皆どっかのタイミングで聞いてるんだよね。
K:殆どの人がスカタライツのカヴァーやってるんだけど、オリジナルの人もいますよ。こだま和文さんとヘッドケースかな。こだまさんは打込みのチープな音をそのまま使ってるんだけど、それがかえってスカっぽいっていうのが凄いなぁって。ドライ&ヘビーとリトル・テンポもまたいい雰囲気を出してくれて。
W:一番気に入ったのは市川君(Low IQ 01)だったのね。これはヤラれた。絶対あんなの自分では出来ないから。
K:あとエゴ・ラッピンが良かった。
W:最初聞いたらデタミネーションズがバックやってると思ったけど、違うんだね。
K:そう。3セヴンが参加してて。でもトランペットとキーボードでデタミの市原夫妻が参加してるよ。
●バンド同士で希望曲が重なりしませんでしたか?
K:意外と重ならなかったね。皆マニアックに来るかと思ったら裏の裏かいてきたり(笑)。スーパーXも3曲、候補があったんだよね。
W:そう。選べないからメドレーでやっちゃおうかなって(笑)。
K:スカパラがやった「ショット・イン・ザ・ダーク」は、僕らが人前でやった最初の曲だよ。(新宿の)ジャム・スタジオでやった時(笑)。カヴァーのカヴァーだけど(笑)。
W:その曲、スカ・フレイムスも最初のライヴの1曲目だった(笑)。
●スカタライツにも参加して貰ってますね。これは新作から。
K:そう。2曲重なってます。何か頼もうと思ったら丁度このアルバムを録ってて。日本盤が出る予定もなかったから。

- Skatalites -
●そろそろ謎のバンド、スーパーXの正体を明かして下さい(笑)。
W:リーダーです(笑)。これ、その場の思い付きなんで(笑)。「クラブ・スカ」で毎回バンドを入れてるんだけど、どうしても決まんない時があって。それで誰が何をやるか分んないんだけど、取り合えずフライヤーにスーパーXって書いちゃったの(笑)。それで川上くんに電話して「ちょっとやんない?」って(笑)。確かそれが去年の夏頃。
K:その日の昼間、スカパラが大磯のプールでイベントだったのね。それで夜、30分位合わせただけでライヴやったんだ(笑)。
W:終わり方も全然決めないでね(笑)。それでその状況が面白かったから、今回のレコーディングも一発録り。2テイクしかやってなくて、その最初のテイク。それですぐ宮崎さんがビール買ってきて宴会になっちゃった(笑)。
●宮崎さんは参加してるんですね(笑)。5月の「クラブ・スカ2000」に出演されましたけど、観てない人も多いでしょうから、正式にメンバーを明かして下さいよ。
W:(笑)…ダメです。
K:やたら人数は多いってことで。でもCDを買ってくれればクレジットは載ってるから(笑)。
●今後も活動して行くんですよね。
W:未定です(笑)。
●この『スカ・ストック』に続いて、"Jamaican Good-Good Oldies
Series" として川上さん、山名昇さん、山口佳宏さんが編んだオリジナル・スカの編集盤を6タイトルも出すんですよね。
K:この作品を出して面白いって感じてくれたら、じゃあ、オリジナルはどうなんだって。「古いのってどれから聞いたらいいんですか?」ってよく聞かれるんですよね。それで分かり易くテーマを6つに分類して出すんだけど、選ぶのが難しかったですね(笑)。
W:入門編ってないしね。
K:これって王道も入ってるし、かなりマニアックなものも入ってるからセットで買って下さい(笑)。
W:あっ、思い出した。スカタライツの初来日の時に谷啓が観に来てたんだっけ(笑)。
K:(笑)そうなんだ。『スカ・ストック』で声掛ければ良かった(笑)。
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