7月30日、GURUに息子が生まれた。名前はKeith Casim。「俺が今まで生きてきた中で最もリアルな経験だった。人生とはまさにこのことだと思ったよ。自分が新しい命を作り出したんだ。息子が生まれてからは、更に頑張って働いてやろうって気になってるのさ」。そう熱く語るGURUにはもうひとつ、出産の同様の喜びがある。自分が母体となって産み出した一枚のアルバ『Jazzmatazz : Streetsoul』の完成だ。今回はアルバムの内容はもちろんのこと、実は俳優業にも着手しているGURUの姿を披露しようと思う。 |
● 今回で三作目となるジャズマタズですが、本来『Jazzmatazz
: Vol.3』となるべきところが、『Jazzmatazz : Streetsoul』となっていますよね? これはどうしてですか? GURU(以下G):前の二作はヒップホップのバックグラウンドに、ヴォーカリスト、ミュージシャンを迎えてどんな音が作れるか試してみる、といった実験的な趣が強かったんだ。だけど、今回の作品はもう実験的な趣はない。だからこのアルバムを『Vol.3』とは呼んでいないんだ。俺は今回の作品をタイムレス(時間を超越した)なものにしたかったんだ。サブタイトルを「Streetsoul」としたのは、ジャズマタズそのものが新しいアティテュード、スタイルになったと思うから、ストリートを代表して、っていうことだな。 ●ジャズマタズの概念を具体的に挙げるとすると? G:ニューオリンズにガンボって料理があるだろ。あれのようなもんさ。ガンボには様々なものが混ざっているけれど、最高に美味いだろ。全てを混ぜ合わせ、美味いものを作る。ジャズマタズもそれと同じことさ。 ●確かにガンボのように様々な国のアーティストが入って、非常に豪華なアルバムになっていますが、制作期間はどの位だったのでしょうか? G:6、7ヶ月ってところだな。あまり長くないだろ。みんなが本当によく働いてくれたから短期間で終わったんだ。それに今回俺は全てのライムをスタジオで書いたんだ。何の準備もなく、全てがその場で自然に出てきたものなんだ。それでも俺は何についてライムしたいかは最初から解っていたから、ライムを書く時には既に曲のタイトルも浮かんでいたし、それに音楽も出来ていたから全てが自然に流れていったよ。俺はこのライティング・スタイルを「フリースタイル・ライティング」って呼んでるのさ(笑)。これが俺の新しいテクニックだ! ●アルバム中で一番印象に残ったのは、エリカ・バドゥとの曲でした。彼女と一緒にやったきっかけは? G:エリカ・バドゥとはここ数年ばったり出くわしていたことが多かったんだ。彼女のマネージャーは俺と同じブルックリンに住んでいたから、彼にエリカと仕事がしたいと言うと、彼は「じゃあ電話してみろよ」と言い、俺は彼女に電話をした。エリカは「ダラスに来て、私のスタジオでレコーディングしてくれる?」と言うので、俺はダラスへ行った。舗装もきちんとされていないような道で、人里離れたところだったよ(笑)。牛、草、それだけって感じのところだった。彼女はそこに大きな家を持っていて、その家がスタジオに改造されているんだ。エリカはとても優しい女性で、本当に気遣いが細やかなんだ。スーパースターなのにとても謙虚で優しい女性だよ。 スタジオの中では御香をたいてキャンドルに火を点して、俺、エリカ、キーボード・プレイヤー、ドラマー、ベース・プレイヤーでレコーディングをした。皆若いミュージシャンで、エリカは彼らを仕切っていた。彼らは俺のために既に3曲用意していた。それに合わせて俺はライムをし、俺達は新しい曲を5曲やったよ。凄くドープだったな。そして俺達は気に入ったアイディアを1枚のCDにまとめ、俺はホテルに戻りそのCDを聴いた。次の日の朝、俺は彼女に電話して「"Plenty" がやりたい。この曲が一番好きだ。ジャジーだし、(ジャズマタズに入る)他の曲とは一味違う」と言うと、エリカも「私もあの曲好きだからオーケーよ」と答え、俺達は仕上げてしまったのさ。 ●あと気になったのはレ・ヌビアンやクレイグ・デイヴィッドといった、米国以外のアーティストも起用している点ですね。 G:いいことに気づいてくれた。俺にとって海外のヒップホップはとても重要なんだ。海外のヒップホップ・シーンはアメリカ人が考えている以上に大きなものってことを俺は昔から解っていたんだ。最近ではアメリカ人達もこの事実に気づき始めたようだが、俺はずっと(強調)昔から日本、フランス、ドイツといった海外のヒップホップと関わりを持ち続けていたんだ。 ●歌詞も意味深なものが多く、特にドネル・ジョーンズとの曲は最近犯罪が多い日本の若造に聞かせたい。 G:ドネルは俺のお気に入りのR&Bアーティストだ。奴はリアルなアーティストだよ。若いが本当に才能がある。彼は「Streetsoul」をリプレゼントしているんだ。この曲ではドラッグ・ディールやギャングと関わることがクールだなんて言ってる奴らがたくさんいるけれど、殆どその道に入っても上手くやって行くことなどできないってことを示したかったんだ。その道に関わったら殺されるか刑務所に行くか、撃たれて一生車椅子生活するのが落ちだ。もしくはお前の友達が撃たれて死ぬかもしれない。俺はそれを伝えようとしているんだ。「グールーはプレイヤー・ヘイターだ」なんて言うヤツらもいるかもしれないが、そんなこと俺は気にしない。これが現実なんだ。 俺には父親がいたから、ドラッグを売ったりする必要はなかったが、それでも俺はドラッグの取引をしたかった。なぜならそれがクールなことだとされていたからだ。ただストリートでの評判を得たいというだけで、俺はヤバいことに手を出していたのさ。自分も若い頃はクールになりたくてそんなことをやっていたから、今回こうしてギャングスターのことをライムした。 ●あなたも子供を授かったし、そうした歌を出していくことは大事だと思います。 G:そうだな、父親の仕事は大変だと思うが、楽しいだろうな。それに来年には自分のレーベルをきちんと始めたいんだ。来年の三月には『イル・キッド・ボールドヘッド・スリック・イン・ザ・クリック』というアルバムをリリースする予定だ。参加アーティストもオールド・スクールからニュー・スクールまで様々で、プレミアを始め、アイス・T、クレッグ・G、ミッキー・D、そして新人のメンドーザ、レディー・トリガ等で、ドープなアルバムになるからチェックしてくれよ。名前はイル・キッド・レコーズで、ロゴはこれだ(腕のタトゥーを見せながら)。 ●随分と可愛いですね。 G:…(笑)。それからイル・キッドは俺の音楽出版の名前でもある。それから俺は俳優業にもトライしようとしてるんだ。『3 a.m.』って映画を撮り終えたばかり。この映画の中に俺はノーティー・バイ・ネーチャーのトレッチと一緒にチョロッと出演してる。来年の夏公開予定だ。とにかく俺はいろいろなことに挑戦しているんだ。 |