世界最強のサウンドを決定する『ワールド・クラッシュ2000』が、今年は10月6日、ニューヨークで6サウンドを集めて開催された。昨年の覇者、日本代表のマイティ・クラウンの2連覇達成とあいなったのか? 現場から実況中継。

 「決戦前夜」―。翌日のクラッシュに参加するメンツが集合したラジオ番組に出演直後のサイモンに連絡。開口一番の「やばいよ。もうクラッシュは始まっているよ。今年はマジで凄いことになるよ」という言葉に、こちらの緊張感も否応なく高まってくる。

 『ワールド・クラッシュ2000』。今年の世界最強サウンド・システム決定戦の舞台はニューヨーク/クイーンズのクラブ・アマズウラ。参加したのは、キラマンジャロ、ベイス・オデッセイ、トニー・マタロンの強者達とニュージャージーのリトル・ロック、ヨーロッパを代表してドイツのパウパウ、そして昨年のチャンプであるマイティ・クラウン。マイティはサイモンとサミーの2人で参加。また、当初予定のリッキー・トゥルーパーは姿を見せず。

 司会のDJロイの合図で12時過ぎにクラッシュはスタート。まずは15分を2ラウンド。リトル・ロック→マタロン→オデッセイ→ジャロ→パウパウ→マイティの順でプレイ。早くから長蛇の列ができ、超満員となった会場ながら、異常なくらい冷静に事の成り行きを見守る客を相手にどのシステムも流れを作れない中、マイティはジャマイカ国歌の日本語付きダブ(!!)と、表裏がジャマイカと日の丸となった国旗を振り回すパフォーマンスでスタートから客を掴み、シャバ&ブジュのコンビ・ダブ等で会場を一気にマッシュ・アップ!! 開始前から起きていたブーイングを見事に跳ね返し、1ラウンド終了時点でガッチリとリードを奪う。

 続く2ラウンドは結果として、パウパウとリトル・ロックが力不足を露呈するラウンドとなり、客席からも「この2つを落とせ」という声が上がるが、″1つだけ″というルールでパウパウが脱落。そして2つのシステムが脱落する3ラウンド(15分)では、オデッセイとジャロが爆発。その流れに押されたかたちとなったマイティが終了したところで判定へ。リトル・ロックの脱落とオデッセイとジャロの勝ち抜けは早々と決まるも、マタロンとマイティの判定はなかなか付かず、結局、DJロイが3度も客席に判定を求めた結果、残念ながらマイティはここで脱落。

 この後は残った3システムで、4ラウンド(5分)↓10曲のチューン・フィ・チューン対決へ。一進一退の中、最後にガーネット・シルク、ニッティ・グリッティといったお馴染みのダブを連発したジャロが5時間近くにも及ぶ戦いを制しチャンプの座に。″トゥルーパーの物真似″と揶揄され続けたフレディが終始後ろから見守っていたパパ・ジャロのもとにトロフィーを運ぶ姿が印象的だった。

 結果的に『ワールド・クラッシュ2000』はジャロ、オデッセイ、マタロン、マイティの四つ巴の戦いだった。いずれもが会場をマッシュ・アップし、いずれもが激しいブーイングを浴びた。しかし、これまでも幾度も激戦を交え、手の内を知り尽くした者同士である4組は、1曲ごとのシビアでハイ・レヴェルな戦いを見事に演出し、改めてサウンド・クラッシュというエンターテイメントの醍醐味を堪能させてくれた。

 残念ながら敗れはしたマイティだが、彼等のオリジナリティは随所で発揮され、昨年度のチャンプが決してフロックではなかったことを見せつけると同時に、劣勢とプレッシャーの中でのその勇ましい戦いぶりは、彼等に一段と高い評価をもたらす結果となった。

 全てが終わった後、僕が感じた敗因に結びついた様々な不利な状況を彼等に伝えたが、サイモンは「言い訳にはならない」と切り捨て、「勉強になったよ。来年もやるしかないでしょ」と力強く語り、サミーは「今日のことはもう忘れたよ。でもこの悔しさは、これから一年間ずっと忘れないんだよね」とシニカルに笑い、早くも頭を来年に向けて切り替えていた。


Killamanjaro