1999年12月号

SIMPLY BEING ME / SANCHEZ [VP / VPCD1598]

No.1正統派シンガー、Sanchezの素晴らしいニュー・アルバム。今作もカヴァー曲をオールディーズ・リズムで歌い上げるという彼らしい曲が多いけど、"Staga-lag"(Jammy's産)使用の「Jah Calling」の様な男らしい曲も収録されていて内容は充実。注目は英国紳士、ギルバート・オサリヴァンの72年の名曲「Naturally」のカヴァー。この哀愁漂う曲がSanchezの優しい歌声に合わない訳が無い。必聴です。[輸入盤](坪木良典)

DA VIBE / WAYNE WONDER
[ARTISTS ONLY! / MAD HOUSE / AOR-43]

日本でも大人気のダンスホール・シンガー、久々のアルバム。プロデュースはDave & TonyのKelly兄弟。今のダンスホール・サウンドのトレンドはこの2人からって感じだけど、国内だけでなく今じゃNYからも注目されてるだけに、音の方は保証付き。"Ki-Ki" に "Book Shelf" そして "Joy Ride" や "Showtime" 等のヤバイRiddimに彼の声が乗れば、そりゃ悪いハズが無い。もちろん未発表曲も入っています。[輸入盤](鎌田和美)

BOBO ASHANTI / SIZZLA[GREENSLEEVES / GREL259]

先月紹介したVP盤の『Words Of Truth』と同時期にリリースされたGreensleevesからの新譜(ジャケットがカッコいい)。勿論VP盤と同様に本家Xterminator制作ですが、1曲を除き内容は全く異なってます(7"未発表も多数収録)。最近は以前に較べ怒り気味の熱いDJスタイルが多く、ちょっと敬遠してましたが、生音リズムでゆったりとDJしている曲を聴いて、彼のカッコよさを再確認しました。[輸入盤](坪木良典)

LET BE THE ONE / DENNIS BROWN[VP / VPCD1601]

ジャマイカの国民的シンガーにまで登りつめたデニスは昨年、残念ながら永眠してしまったが、彼が産み落とした名曲の数々は永遠に聞き継がれるだろう。本作はデニスの最後のレコーディング作品らしいので、かなり厳しい状況での録音だったろうが、もの悲しさは微塵も感じられない。全体を包み込む優しいトラックにやや擦れたデニスの声が乗るラヴァーズ・ロック。最期にいい仕事をしてくれました。[輸入盤](大場俊明)

CAN'T STOP LOVING YOU / DONNA MARIE
[JET STAR / CHARM / CRLP3026]

最近目立ったリリースがないUKラヴァーズだけど、7"をコンスタントにリリースしてじわじわ認知度を上げてる彼女が出してくれました。「Just One Look」等に代表される大ネタ使いのカヴァー曲から、フォリナーの「I Wanna Know」まで、もう如何にもって感じのロマンティック・メロディー満載。ドラムとベースはタフ、上モノのドライでカラッとした音の質感が今のUKラヴァーズを象徴する様な一枚。[輸入盤](鎌田和美)

BASHAKA / THE SKATALITES
[MARSTON RECORDING / MRCCD1029]

僅か一年という短い活動期間にも関わらず、ジャマイカン・ミュージックは当然として、世界中の音楽シーンに多大なる影響を与えたオーセンティック・スカ・バンド、スカタライツが結成35周年を記念してニュー・アルバムをリリース。J.ミットゥ、D.ドラモンド、T.マクック、R.アルフォンソはいないけど、彼らの遺志を受け継ぎ力強い演奏を聴かせてくれる。ゲスト・シンガーとしてケン・ブースが一曲参加。[輸入盤](小池信一)

CAN BETTER REALLY COME / MARTIN CAMPBELL & HI-TECK ROOTS DYNAMICS
[CHANNEL ONE UK / TBXCD-012]

1994年〜99年迄にマーティン・キャンベルがチェンネル・ワンUKで録音した数々の曲のストックの中からセレクトしたベスト盤。お馴染「Tokyo Dub」「Berullin Dub」「New York Dub」「Westkingston Dub」等のダブねたのフル・ヴォーカル・テイク。リディムは全てオリジナルで、チープな打込みがまたカッコいい。ベースラインもグイグイとくる重圧で鈍重なシンセベース。ぜひともサウンド・システムで。[輸入盤](長井政一)

3 THE ROOTS WAY / RANKING JOE, TRINITY, U BROWN [JAH WARRIOR / JWCD-018]

UKのJah Warriorからの新作。今回はかつて70年代後期から80年代初期にジャマイカで活躍していたオールドDJの面々を迎え入れ、それをJah Warriorスタイルにアレンジした作品。以前アリワでリリースされたU-Royのアルバムの雰囲気の仕上りと言えば分かりやすいか。参加した三者それぞれ全て久々の録音だ。リズム・トラックもカッコいいし、大御所達もまだまだ健在といったところ。要チェック![輸入盤](長井政一)

MR FUNNY / PRINCE JAZZBO
[PRESSURE SOUNDS / PSCD30]

Puressure Soundsの30番目は、U-Roy等と同じ第一DJ世代のプリンス・ジャズボの登場。第一世代DJの中では、いまいち忘れられがちな彼ではあるが、愛らしいキャラクターが滲み出たスタイルでオールドDJファンには定評がある。本作は彼が70年代前半〜半ばにかけてCount 123、Brisco、Mr. Funny、Ujamaレーベルで発表したシングル曲をダブも含めまとめたもの。最高のオケに個性的なDJ…悪いわけがない。[輸入盤](大場俊明)

JACK RUBBIE PRESENTS THE BLACK FOUNDATION / V.A. [HEARTBEAT / 11661-7622-2]

レゲエ・ムービーの代表作『ロッカーズ』にも実名で出演し、バーニング・スピア『マーカス・ガーヴェイ』やジャスティン・ハインズ『ジゼベル』を手掛けた事でも知られる名プロデューサー、ジャック・ルビーのレア音源集。ロビーとホースマウスのリズム・セクションが中心となるブラック・ディサイプルを擁し、キナ臭くて重心の低いトラック、メーキングが彼のサウンドの特徴。ルーツ・ファンは必聴。[輸入盤](小池信一)

JACK RUBBIE PRESENTS THE BLACK FOUNDATION IN DUB / V.A. [HEARTBEAT / 11661-7623-2]

レゲエを聴き始めたばかりの頃、「ダブなんてどこがイイのだろう?」と思っていた自分にダブのヤバさを教えてくれたのが『マーカス・ガーヴェイ・ダブ』だった。今にして思えばもっと良いダブ・アルバムは沢山あるのに何故このアルバムだったのか? その『マーカス…』も収録されているジャック・ルビー音源のダブ集(前述の作品のダブ)がこれ。ハデさは無いがツボを心得たミックスがグッとくる。[輸入盤](小池信一)

ハウ・トゥ・ウォーク・イン・ザ・スカイ/リョウ・ザ・スカイウォーカー[ワーナー / WPC6-10097]

「Soul Rebel 2000」で、その圧倒的存在感を見せつけたリョウのメジャー進出第一弾アルバム。又聞きだが「メジャーのやり方でやる」と彼が言っていた通り、ここに収められた音はジャマイカン・マナー一本やりではない。しかしそこは流石リョウ、どんなオケだろうと、彼の声もメッセージも一切揺るぐことはない。まるで緊張感を遊び心に代えて楽しんでいる様だ。本作はJ-ポップ・シーンへの挑戦状となるはずだ。(大場俊明)

スタイル & MC ショウケース/V.A.
[ばくさん / BCN-002]

Ryo The Skywalker、NG Head、Papa Bonを中心に高品質な作品を出し続けている関西発のカジノ891レーベルのショウケースCD。最早クラブでは定番チューンとなっているNG & Ryoの「Style & MC」とRyoの「Casino」のリディムを核にした2ウェイ&オマケ付き。サウンドはスライ・ダンバー、ダニー・アックスマン等のジャマイカ勢に加え、大阪の505-オキノもツボを得た作品を提供。クォリティ高し。(大場俊明)

ファースト・シーム・フォ・サウンド・コンノイセアーズ~クローゼット・カルチヴェイター/V.A.
[ベース・クウェイク / スティング / NO NUMBER]

東海地方を中心に精力的に活動していたサウンド・クルー、ベース・クウェイク(現在活動拠点を関東に移すため、サウンド・システム&ダブ・プレートを強化中)によるミックスCD。全体を4部構成として、各テーマ毎にダンスホール・レゲエを中心に時折R&B、ヒップホップのお馴染のチューンをまじえながらスムーズに展開。使用曲数は何と85曲! 値段も1,500円とミックス・テープ並とお買い得。(大場俊明)

ラヴァーズ・ロック/シャーデー
[エピック / ESCA-8243]

オリジナル・アルバムとしては5枚目、何と8年振りの新作である。憂いと渇きを具有した、全くもってオリジナルなシャーデーの歌声は、シンプルで静謐な音世界を伴って、曲ごとに強い印象を残していく。中でも、今回のシングル「By Your Side」には、時にメンフィス・ソウルを聴いた後のような寂寥感が。デビュー以来変わらぬバック陣によるサウンドが、タイトル通りレゲエへとシフトしている点も興味深い。(石澤伸行)

イン・マイ・シューズ/シャイラ・プロスピア
[エイベックス / CTCR-13136]

UKの優秀なるプロデューサー・チーム、フル・クルーがレーベルを設立。彼女は、そこんちの第1弾アーティストだ。ソウルフルな温もりを持ちながら、メリハリもしっかりと効かせた音作りは、彼女の発色の良い歌声と最高の相性を見せる。時代の空気を存分に吸いつつも、やりたいことがキチンとやれているあたりが、非常に好感度高し。ツボ得まくり、駄作ナシな出来は「重心低めなセレーシャ」って感じ!?(石澤伸行)

キーコ/キーコ [東芝EMI / TOCT-24420]

北海道のインディ・シーンから飛び出した女性シンガーのデビュー・アルバム。もともとの畑から考えれば、チョーズン・リーらが提供する濃い目なレゲエ・チューンとの相性の良さは、推して知るべし。今作で驚かされたのは、トンがったドラムン・ベースやヒップホップ・チューンでの、彼女のフレッシュな表情だ。そして何より、ダンクラ的質感たっぷりな「Spiral Squall」のエヴァーグリーン度といったら!(石澤伸行)

ヘイ ワールド!/DJハセベ[ワーナー / WPC6-10112]

多忙を極める彼の、実はデビュー・フル・アルバム。スピーチ、オマー、ビーニ・マン、モス・デフ、ラーゼル、ロニー・ジョーダンにレ・ニュビアン…本作に参加したゲスト陣を見るにつけ、彼の目線の先に何があるのかを考えずにはいられまい。そう、シヴァやゼウスといった金字塔を打ち建てた彼が次に目指すのは、ズバリ世界だ! マミー・Dやジブラとの弾丸チューンも、無論凄いことになってます。(石澤伸行)

ヴァンガード/フィンリー・クェイ
[エピック / ESCA8203]

かわいい顔とは裏腹に、酒とケンカとガンジャが絶える事がないらしいリアル・ロックンローラー、フィンリーのセカンドがやっと登場。勿論、そんな私生活も曲のエッセンスとして滲み出ているが、彼の場合、そのバランス感覚が絶妙で、オープニングからラスト迄そのドライヴ感を絶やす事がない。表立っては発言しないが、じっくり聴けばレゲエへの愛情もかなり濃いのが分かる。天才肌のヤンチャ坊主が産んだ傑作。(大場俊明)

スペース・ドールズ/オーディオ・アクティヴ
[ドリーム・マシーン / HDCA10048]

オーディオ・アクティヴの久々且つ待望の新作。作品を重ねる毎に押しの強いダブ・ロックへ進化していった彼らだが、本作では先行シングルのボス・ザ・MCをフィーチュアした「スクリュードライマー」で感じられたゆったりとした精神世界へ。ただその裏に張り巡らされた緊張感は相変わらずハイテンションで圧倒的でさえある。方向性を変えた事によって、純度、濃度とも過去最高品質の完成度の高い作品になった。(大場俊明)

ミッドナイト・ファンク/デーモン
[エピック / ESCA8218]

ダフト・パンクやモーターベース、更にはアイ・キューブらによって開かれてきたフレンチ・ハウス・シーンのニューカマーのファースト・アルバム。ハウスを始めエレクトロやヒップホップやラウンジの要素を貪欲に消化した音楽性は前述したような先輩のトラック・メーカーよりやや洗練されてはいるものの、いい意味で脳天気なテンションは健在でフレンチならではの独創性が感じられる意欲的な仕上がり。(高橋晋一郎)

テンポビジョン/エディエンヌ・ドゥ・クレシー
[V2 / V2CI-87]

代名詞となった“フィルター・ハウス”でフレンチ・ハウスの一時代を築いたユニット、モーターベースの片割れとしてフィリップ・ズダールと共に活動していた彼が満を持してファースト・ソロ・アルバムを完成させた。さすがにシーンの重鎮が作り出すサウンドは濃厚で芸歴の長さがそのままクオリティーの高さへと比例、多用な音楽性も一つのベクトルでセンス良くコンパクトにまとめられている。(高橋晋一郎)

フォーエヴァーネヴァーモア/ムーディーマン
[トイズファクトリー / TFCK-87811]

セオ・パリッシュと並んでデトロイトの最重要クリエイター、ムーディーマンことケニー・ディクソンJr.のサード・アルバム。音色、バランス、構成、どれをとってもオリジナルな彼の世界が炸裂。ディスコ・サンプルやフィルターといった手法も彼の場合は色褪せるということを知らない。ブラック・ミュージック特有のソウルフルなセンスとスピリチュアルなヴァイヴがしっかりと詰まった傑作アルバム。(高橋晋一郎)

Organ b. SUITE〜ア・タツオ・スナガ・ライヴ・ミックス/V.A.[カッティングエッジ / CTCR-14164]

DJはもちろんのこと、ここ数年はSunaga't Experience名義での制作活動を積極的に行い渋谷オルガンバーのディレクションも自在にこなすマルチな才能の持ち主、須永辰緒のミックスCDが遂にオフィシャル・リリース。一度聴いたら忘れられないスームスなミックスとツボを突いたギミック満載のDJプレイが永久保存されるという訳で正にファン待望の一枚。更に来年はソロ・アルバムの予定も。お楽しみはこれから。(高橋晋一郎)