Greetings friends,
●今月はまず先月号でも触れた、Ariwa
studioでのLee 'Scratch' Perry 写真撮影話から。Perryが出演したEssential Festival
の前夜、最後の最後でMad Professorを通じてこの撮影をする事になったのだが、これがとんだ悪夢であった。私は過去に2回程Perry
の撮影をやった事があり(その際は彼と1対1であった)、合計15分くらいしか彼と居なかったにも関わらず、とても良い仕事が出来たのであった。が、それから5年が過ぎた現在、事は昔通りには進まなかったのである。
まず現場には他にも3つのフィルム・クルー、私のようなカメラマン、そして幾人かのジャーナリスト達が今か今かと「伝説的な天才」と会う順番待ちをしており、スタジオに到着してから延々2時間後、ようやく自分の番がまわってきた。
部屋に通された私は、気軽に前回の撮影で会った時の事などをおりまぜて Perryに挨拶、すると突然側にいた彼のスイス人の奥さんとMad
Professorから「シーッ!静かに!!」と遮られ、それから「彼の気分を害するような事を言ったりやったりしないでくれ」、との注意を受けてしまった。どうやら己のエゴが以前よりもかなり膨れ上がってしまったとしか思えない彼がお気に召さない事は全て避けろとの事。Upsetters
をUpset させちゃダメ、といったところか。
とにかくそれからヴァイブは落ちまくりであった。私がヒゲをはやして帽子を被っていたからか、もしかするとPerry は私の事をドレッドと勘違いし、彼と彼のパワーに危害を加える存在と思ったのかもしれない。彼は極端なまでにドレッドに対して神経質で、相当嫌っているそうである。これらは全て彼の奥さんから聞かされた事であるが、彼女は自分の夫のこの奇妙な習性を恥じるどころか、むしろ得意気に話すのであった。
Perry が何かにとりつかれているかの如く、こういう事にこだわる原因の一つとして彼の偏執症があげられるが、奥さんの話を聞いていると到底それだけでは済まされそうにない。彼女が現場に居合わせた他の人間にも指示していた通り、おじぎをして一歩下がって敬礼すれば彼に受け入れられ、私のように普通に彼を一人の人間として見て接してしまうと、それはもう致命的なのである。まあ数ショットは撮れたし、それが第一目的だったからどうでもいいんだけど…。

Lee Perry
●小さいながらもサクセスフルなレーベル、Discotex
のTex Johnson がパンク・ミュージックのスペシャリスト、Frankie Boy と共同制作でKing Tubby,
Lee Perry, Augustus Pablo, Bunny Lee 等の未発表ダブ作品をリリースする作業に取りかかっている。Bunny
Lee の手元にあったオリジナル・マスターテープより、全ての音源が移されたとの事、よって音質の良さは保証付きであろう。近日中に最初の2作品がリリースされるそうなので追って報告しよう。
●Blood
& Fire からは「最高!」と太鼓判を押せる新作がリリースされた。Slyford Walker とWelton
Irie による『Lambsbread Inter-national』は、70年代にミュージシャン兼シンガーのGlen Brown
がプロデュースした良質のルーツ・トラックをフィーチャー、かなり贅沢である。Slyford Walker のネタはもともとは80年代後半に『Lambsbread』としてUKのGreensleeves、USのShanachie
より編集・リリースされたもので、これは当時彼が一度きりの(しかも長続きしなかった)4枚のアルバム契約を交わした際のうちの1枚。
ちなみに Blood & Fire は作品のアナログ盤制作から手を引き、代わってアナログ専門のインディペンデント・レーベル、Something
Vinyl がその仕事を引き継ぐ事となったそう。とにかく『Lambsbread International』は絶対オススメ!
●もう10年以上もロンドンとその近郊に在住しており、「80s
Recut of Louisa Marks」や「Six Sixth Street」のヒットで名が知れている移民ジャマイカ人、Jack
Wilson のニュー・アルバムがそろそろリリースされる。育児のため長期に渡り活動を休止していた彼の復帰第一弾は『Fruits
Of The Nazarites』。彼は現在の音楽全般の傾向、そして特に自分の音楽に何年ぶりかに満足しているそうだ。
多数のレゲエ・アーティストのバンド・サポートをこなし、今や世界中がその実力を認めているツアー・バンド、The Nazarites
がもう2年以上もJackのバック・バンドを務めており、彼等との親しい関係と彼等の音楽的才能がJackに自信と勇気を与えているようである。このアルバムが手に入り次第、感想を述べよう。
●Aswad
についてのバッド・ニュース。彼等のアルバム、『Roots Revival』をイマイチ、と感じたならば話は早い。とても信頼のおける音楽機関からの情報によると、彼等の最近のステージ・ショウはヒドイそうである。仮に彼等のショウが巷で言われる程悪くはなかったとしても、この間観に行くはずだったロンドンでのギグに行けなくなってラッキーだった、と言わざるを得ない。
何しろDrummie はステージをきちんとまとめる事が全く出来なかったそうで、観客数は少なかったものの、この彼等の失態を世間に広めるには充分な数であったし、相当なイメージ・ダウンにつながってしまった。
●私が以前勤めていたEchoes誌であるが、現在のくたびれきった構成を何とかして変化を加えない限り、そろそろ本当にヤバイと言える状況に追い込まれている。今年の初旬に隔週発売の雑誌フォーマットになってからというもの、とにかく売上は落ちまくる一方で、7月頃には2週間ごとの発売が中止された。今後は月1回のみの発売になりそう。
大勢の読者を失ったため、毎週新譜のプロモを持ちこんで来ていたレゲエ・ショップも、長年付き合ってきたEchoesにそろそろ見切りをつける動きが伺える。何とも淋しい話であるが、今のままではしょうがないと言うしかないであろう。
Till next time, take care.............
[訳/有賀由紀子]
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